コールセンターAI自動応答システムの活用事例|各社システムも比較!
目次
近年、コールセンターシステムのAI活用が進んでいます。
その中でよく話題に上がるのが「AIによるコールセンターの無人化は可能か」という議論です。
そこで本記事では、無人化を実現するシステムとして注目される自動応答システムについて、実際の導入事例から実態を調査しました。
また、最後には国内主要ベンダー4社の比較・特徴についても解説します。
AIシステムの導入したいけれど、自社で1からの構築は難しいという企業さまも多いのではないでしょうか?そういった場合は、実績のあるコールセンター支援会社に相談してみましょう!まずはコールセンター 運営に詳しい会社と自社の課題の整理から始めることかができます。
AIシステムについて相談するAI自動応答システムとは
AI自動応答システムとは、音声認識・音声合成・チャットボットを組み合わせたシステムです。
お客様からの問い合わせに対し、人を介さずシステムで回答を完結させることができます。
※場合によっては「チャットボット」や「IVR」を「AI自動応答システム」と表現することもありますが、ここでは「音声による受付、回答ができるシステム」を「AI自動応答システム」として紹介します。
現状で人間と同等の判断力や対応力のあるAIシステムは存在しません。
そのため、完全に人間の代替ができているわけではありませんが、トークフローが簡易なものについては無人対応が実現しています。
システムの要素技術である音声認識や自然言語処理、音声合成で機械学習を用いているため、AIという言葉で案内されております。
システムが問い合わせを回答するまでの流れ
お客様からお問い合わせ頂いた質問をシステムが回答するまでの流れは以下です。
- お客様の音声による問い合わせを「音声認識技術」を使ってテキストデータ化
- テキスト化したデータを「自然言語処理技術」を使って内容理解
- 問い合わせの内容に合わせた回答をテキストで生成
- 生成したテキストによる回答を「音声合成」を使って回答
自動応答システムでは、スマートフォンやAIスピーカーなどで使われている「音声認識技術」を利用します。
コールセンターにおける音声認識技術は発話者の環境(周囲の雑音環境や通信環境)によって認識率が変わりますが、70~95%ぐらいの認識率といわれています。(ちなみに人間が書き起こしをすると90~95%ぐらいの認識率です)
※ノイズ除去や予め問い合わせ内容を絞ることで認識率を高めることができます。
テキスト化したデータは「自然言語処理技術」によって、内容の理解、回答の生成が行われます。
これは、いわゆるテキストベースのチャットボットと同じ処理になります。
チャットボットには、決められたシナリオに応じて回答する「ルールベース型」と、意味を理解して回答を返す「機械学習型」の2つの方法があります。
AI自動応答システムでは「ルールベース型」が一般的となっております。
最後に「音声合成技術」を使い、生成した回答を自然な形で読み上げます。
AI自動応答ができること・できないこと
前述したとおり、現在時点で人間と同等の判断力、対応力のあるAIというものは存在しません。
AIが囲碁や将棋でトップ棋士に勝ったことから「AIは人間を超えている」などという議論がありますが、AIが人間を上回っているのは決められたルールの特定のタスクにおいてのみです。
AIは、計算は得意ですが、意味を理解することが苦手です。
このAIの性質を考えたときに、AI自動応答ができることを考えていきましょう。
コールセンターには大きく分けると2つの会話系統があります。それは、「フリートーク」と「一問一答」です。
フリートークでは、どのような話がくるかを予測することは難しいです。
そのため、相手の会話の意図を理解し、柔軟に判断、対応する必要があります。
一方、一問一答はある程度回答を予測することはできます。
特に質問がシンプルで答えが一つのもの(名前や住所など)であれば、予測の精度は上がります。
先に述べた通り、AIは会話の意味するところは理解できませんが、質問に対して複数ある選択肢の中から正しい回答を導くことはできます。
そのため、現時点では「一問一答」の会話であれば、対応できるというのがAI自動応答の現状といえます。
「音声IVR」と「チャットボット」との違い
AI自動応答システムはよく「IVR」や「チャットボット」と何が違うのかという議論になります。
そこでIVR・チャットボットの違いを記載しました。
項目 | AI自動応答 | IVR | チャットボット |
---|---|---|---|
入力 | 音声 | プッシュボタン | テキスト |
出力 | 音声 | 音声 | テキスト |
やり取りできる情報 | 文字情報/数字情報 | 数字情報のみ | 文字情報/数字情報 |
シナリオ | ルールベース/機械学習 | ルールベース | ルールベース/機械学習 |
シナリオの階層 | 深い | 浅い | 深い |
離脱率 | 低い | 高い | 低い |
コスト | 数十万~数百万 | 数千円~数万円 | 数十万~数百万 |
「AI自動応答」が「IVR」「チャットボット」より優れている点
「AI自動応答」が「IVR」と比較して優れている点は大きく以下の3つです。
- IVRで扱えるのは数字情報のみに対し、AI自動応答では文字情報までやりとりできる
- 音声という自然なUIによるインタラクティブなやりとりになるので、階層が深くても離脱率が低い
- プッシュミス率と音声認識の認識率を比較すると、音声認識による認識率の方が高い
「AI自動応答」が「チャットボット」と比較して優れている点は大きく以下の2つです。
- 普段テキストではなく電話でやり取りすることが多いユーザーも使いやす
- 「ながら作業」で完結できる
現在導入が進んでいる業界/業務内容とは
ここまで、「AI自動応答」の仕組みや、類似製品との比較を見てきました。
これらの特徴を踏まえて現在実際に導入が進んでいる業界/業務内容を具体的に一覧にしました。
業界 | 事業者 | 業務の概要 |
---|---|---|
サービス | テレマーケティング事業(コールセンターBPO) | コールセンター業務 |
情報通信 | ITサービス、携帯電話、通信事業者、ISV | ヘルプデスク、各種問い合わせ対応 |
資源、エネルギー | 電気・ガス | 開栓/閉栓、工事予約など |
金融・法人サービス | 銀行、クレジット、証券、ネット証券、保険、人材 | お客様窓口、案内、資料請求、再発行 |
娯楽・エンタメ・メディア | 旅行、ホテル | 予約・予約確認 |
建設・不動産 | 不動産仲介、マンション管理 | 空き物件確認、故障、メンテナンス |
運輸・物流 | 郵便、物流、宅配 | 配達状況問い合わせ、再配達 |
流通・外食 | 通販(TV、EC)百貨店、家電量販店、外食 | 販売業務、修理受付、お客様窓口 |
公共 | 中央官庁、自治体 | 各種問い合わせ、資料請求 |
自動車 | レンタル、カーシェア | 予約、予約確認、空き状況 |
次に業務別の適用可能な一覧を見ていきましょう。
業務 | 概要 | 分野 |
---|---|---|
受付業務 | TVショッピングの手中呼応など | TVショッピング、通販、エンタメ |
コールバック受付 | 集中呼、待ち呼や営業時間外の自動受付。修理受付やヘルプデスク | 家電量販店、ソフトウェア販売、他多業種 |
定期配送変更 | 定期配送の変更(追加・停止・再開) | 宅配(水、ペットフート、コスメ、サプリ、コンタクトなど) |
資料・書類の請求 | 資料や手続き・申込・振込用紙の請求、控除証明などの再発行受付 | 公共、金融・保険、カード、収納代行 |
再配達受付 | 不在時の再配達予約 | 郵便、物流、通販 |
配送状況問合せ | 購入品の配達状況問合せ | 郵便、物流、通販 |
配達状況確認(ドライバ) | ドライバからの配達状況連絡。 出発、到着、遅延、ルート変更など | 物流 |
カタログ・DM停止 | カタログ、DMや会報誌の停止 | 通販、カード、自動車、旅行、コスメ、宗教など |
督促業務 | 支払期日、支払遅れ、契約期限の案内 | 公共、金融・保険・カード、収納代行 |
会員向け案内 | 契約情報、製品情報やポイント案内。簡単なコールリーズン対応 | 公共、BtoC企業 |
情報案内 | 数が多いが簡単なコールリーズン対応 | 公共、企業全般 |
要件振り分け・転送 | 要件や要望に応じた適切な部署・拠点に転送 | 公共、企業全般 |
キャンペーン対応 | 既存会員へのキャンペーン受付や新規の無料サンプル受付 | 公共、全般 |
シンプルな業務に関しては、幅広い業界で導入が進んでいることがわかります。
AI自動応答による対応内容一例
それでは、次によりイメージを具体的にして頂くため、実際の対応内容の一例を見ていきましょう。
代表電話・時間外受付の場合
ここ最近は、テレワークの導入により、代表電話への連絡をどのようにするかという問題が発生していますが、AI自動応答を使えば、このように一次受付を自動化し、内容をテキストで共有することができます。
面談予約の場合
アポイントの調整についてもカレンダーアプリと連携しておくことで、人を介さずに調整することができます。
保険窓口や人材会社の登録会の予約受付などで利用することができます。
このように、定型業務で問い合わせの内容がシンプルなものについては、自動化が実現しております。
企業によっては業務を分解し、定型業務をすべて自動化してしまい、オペレーターがより高度な業務に集中できるような環境作りを行っているようです。
国内主要ベンダー 4社特徴・比較
ここまで、AI自動応答の現状や特徴などを整理してきました。次にコールセンター向けにAI自動応答を展開している国内主要ベンダー4社を比較してみました。
株式会社 TACT(USEN-NEXT GROUP)【AIコンシェルジュ】
【特徴】
・長年コールセンターを運営してきたノウハウ、コンサルティング力
・生協組合やガス会社の受付など国内トップクラス導入実績
・運用面のサポートが充実、運用後のチューニング費用も不要
株式会社 TACTは、USEN-NEXT GROUPの株式会社 U-NEXTのインハウスセンターが独立分社化したBPO・コンタクトセンター事業を運営する企業です。
コールセンター業界で多数の実績を持つアドバンストメディアの音声認識エンジンと自社開発の自然言語処理エンジンに加え、自社でコンタクトセンターを運用してきたノウハウが特徴です。
導入実績は国内でトップクラスのシェアを誇り、東海コープや明治産業に導入されています。
運用開始後のサポートも充実しており、音声認識精度向上のためのチューニング費用が不要、ユーザー側はエラーに対する修正案の承認のみと現場に負担のかからないAI活用が可能です。
Hmcomm株式会社【Terry】
【特徴】
・産総研開発の技術基盤をベースにした高性能認識エンジン
・大手テレビショッピングや家電量販店などの導入実績
・最短1週間で構築可能な「高速導入パッケージ」を用意
Hmcomm株式会社は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)発のテックベンチャー企業です。
産総研が開発した音声認識技術をベースにしたエンジンを採択しており、すべての機能、技術を自社開発で完結する高い技術力が特徴です。
すでに、TVショッピング大手のディノスセシールや家電量販店大手のヤマダ電機にも導入されております。
直近では、「Terry」を使った委託業務事業や最短1週間で構築可能な「高速導入パッケージ」を用意するなど、事業拡大に力を入れています。
株式会社BEDORE【BEDORE Voice Conversation】
【特徴】
・高い対話完結率を実現可能なシチュエーション特化音声認識エンジンを搭載
・大手新聞社やBPO国内トップ企業などの導入実績
・業種業界、対話内容に合わせた導入メソッドにより、申込みから最短1週間で稼働可能
株式会社BEDOREは、AI技術の国内トップランナーの一つである株式会社PKSHA Technologyの子会社として設立した企業です。
日本経済新聞社やテレマーケティングエージェンシーとして国内トップのトランスコスモス株式会社への導入実績があります。
元々、テキストベースの対話エンジンは、ユーザーの質問を正しく理解できる高い日本語認識能力や、ダッシュボードが評価され、大手企業を中心に多数の導入実績があります。
LINE株式会社【LINE AiCall】
【特徴】
・LINE公式アカウントやLINE Payをはじめとした、LINEのファミリーサービスとの連動が可能
・4つの言語処理エンジンを搭載しており、業界最高水準の会話正答率
・社内業務システムや他社API接続サービスとの連動により、顧客管理、予約完了などが可能
「LINE AiCall」はLINEのAIテクノロジーブランド「LINE CLOVA」が提供している音声応対AIサービスです。
「LINE CLOVA」のAI技術である、「CLOVA Speech(音声認識)」と「CLOVA Voice(音声合成)」および会話制御の仕組みを組み合わせることで、ユーザーの要望に対してAIによるなめらかで人間味あふれる自然な会話での課題解決を実現できます。
飲食店の予約業務や行政の業務など、幅広い用途で導入されています。
通話終了後に確認通知をLINEで送信したり、LINE Payとの連動で決済をシームレスに実施できるなど、
LINEのもつ幅広いサービスとの連動をすることで、ユーザーの利便性向上などを図ることができます。
システムの選定ポイント
各社の特徴を見てきましたが、最後に選定のポイントをまとめたいと思います。
比較項目 | ポイント |
---|---|
音声認識エンジンの性能 | 少量のデータで学習が可能かどうか |
導入実績 | 自社業務に近い導入実績があるか |
シナリオ構成力 | 自社にあったシナリオを作れるか |
導入後の運用支援/フォロー | 導入後の運用支援は手厚いか |
技術力 | 機能開発/他社連携などに対応できるか |
特に注目すべきは導入実績の部分です。
AIにおいてはデータを持っているかどうかがカギとなるため、自社に近い業務の実績がある会社は初期の学習コストや運用コストが下がる傾向があります。
逆にまだ導入が進んでいない業界/業務では、業界内のオピニオンリーダー的な立ち位置になれるチャンスです。
AIはデータ蓄積→データ活用のループを回すことで効果を発揮する技術のため、先行者利益があります。
どのような形で自動化を進められるのかをベンダーとすり合わせていき、まずは始められるところから始めていくことが重要になります。
AIシステムの導入といっても課題は様々なケースがあります。ベンダーフリーで提案を行うウィルオブは、課題の整理からシステム選びまでお客様と一緒に行い、失敗しないシステム導入を行います。お気軽にご相談ください。
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