【コールセンター事例】BCP対策どっちが良い?地方拠点と在宅拠点を比較

目次
元々日本では、地震や台風による大規模災害が発生しやすいことから、コールセンターの安定稼働のためにはBCP対策が必要とされてきました。
さらに昨今では感染症の発生によりオフィス閉鎖などがあり、ますますBCP対策の重要性が増しています。
今回の記事では、コールセンターのBCP対策として昨今注目されている在宅化と、従来の方法である地方拠点の開設を比較していきます。
BCP対策とは何か
BCP対策とは
BCP(Business Continuity Plan)とは、コールセンターの運営が困難になるような災害や感染症など有事の事態が発生した際に、損害を最小限に抑えつつ、業務継続するために必要な対応策を準備しておく「事業継続計画」ことです。
センターの多拠点化、分散化が対応策として講じられるケースが一般的です。
コールセンターにおけるBCPでは以下のことを考慮する必要があります。
- 拠点同士の地理的な距離(人員確保/災害リスクを考慮したロケーション)
- すぐに運用を引き継げるよう運用面(マネジメント、オペレーション)/システム面の構築
- 事業停滞時の損失とBCP対策に講じるコストとのバランス
なぜ今BCP対策が必要なのか
元々、日本は地震、台風、洪水など自然災害のリスクが高い国です。
特に2011年に発生した東日本大震災時には大規模な範囲で被害が発生し、多拠点化、分散化できていないコールセンターはすべて止まってしまい、大きな損害になりました。
また、近年では毎年のように大型台風や洪水などの被害が発生しており、改めてBCP対策が求められており、日本政府としても、企業のBCP策定率を2020年までに大企業はほぼ全て、中堅企業は50%との具体的な目標を掲げています。
加えて、2020年に発生したコロナウィルス感染症の世界的流行に伴い、BCPにおいてもさらなる対策が求められています。
職場で感染症が発生した場合、除菌が完了するまでの間、センターを閉鎖せざるを得ない状況になります。
これまでの自然災害と違い、局所的なものではなく、全国で同時発生しうるリスクのため、従来のBCP対策だけでは不十分になります。
また、そもそもコールセンターは「密閉・密集・密接」のいわゆる「3密」状態に陥りやすく、一つの場所に集まることがリスクになった今、さらなる分散化/他拠点化を進める必要があり、その究極の形である在宅化(テレワーク化)も検討する必要性が増しております。
ここまでは、BCP対策についての説明となぜ今必要なのかをまとめました。
次に、コールセンターのBCP対策として注目される在宅化する方法と、従来の地方拠点にセンターを開設する方法についてコスト面等比較していきたいと思います。
BCP対策:在宅VS地方拠点のコスト比較
在宅化に必要なコスト一覧
下記では、コールセンターの在宅化に必要なコストを一覧にしました。
(弊社の参考になります。必要なコストはセンターによって異なる可能性がございます)
大項目 | 中項目 | 小項目 |
---|---|---|
初期費用 | ||
採用 | 採用広告 | |
採用時面接工数(人件費) | ||
研修 | SV研修 | |
スタッフ研修 | ||
システム | クラウドPBX構築 | |
シンクライアント/VDI環境構築 | ||
セキュリティシステム導入 | ||
コミュニケーションツール(チャット/WEB会議)導入 | ||
在宅管理ツール導入 | ||
その他必要なクラウドシステム(CRM/FAQ等)導入 | ||
インフラ (在宅環境) |
PC | |
通信機器 | ||
ヘッドセット | ||
その他在宅環境のインフラ整備 | ||
運用費用(月額) | 人件費 | 管理者人件費(月給/厚生福利費) |
スタッフ人件費(時給/厚生福利費) | ||
通信費 | 通信費(電話回線・通話料) | |
通信費(在宅環境の通信料金) | ||
システム | PBX利用料/保守費用 | |
シンクライアント/VDI環境の利用料 | ||
セキュリティシステム利用料 | ||
コミュニケーションツール(チャット/WEB会議)使用料 | ||
在宅管理ツール利用料 | ||
その他必要なクラウドシステム(CRM/FAQ等)利用料 |
ポイントをいくつか整理します。
在宅化コストに関するポイント
・システム(特にPBX)がオンプレミスのセンターはクラウドに切り替える必要がある
・全国(特に地方)で採用ができるため、採用費や時給を抑えることができる
・在宅化に伴い、賃料や光熱費等の固定費用は抑えることができる一方、オペレーターが在宅で勤務するためのファシリティ支援が必要になる
特にシステム改修には、場合によっては大きなコストになる可能性があるため、自社のシステムがどのように構築されているかと、クラウドに切り替えると初期費用や運用費用がどれくらいかかるのかをあらかじめ、調べておく必要があります。
地方拠点開設に必要なコスト項目一覧
次に、コールセンターを地方拠点に改札した場合の必要コストを一覧にしました。
(弊社の参考になります。必要なコストはセンターによって異なる可能性がございます)
大項目 | 中項目 | 小項目 |
---|---|---|
初期費用 | ||
採用 | 採用広告 | |
採用時面接工数(人件費) | ||
研修 | SV研修 | |
スタッフ研修 | ||
システム | PBX構築 | |
セキュリティシステム導入 | ||
その他必要なクラウドシステム(CRM/FAQ等)導入 | ||
インフラ (センター) |
PC | |
ネットワーク構築/LAN配線工事 | ||
ルータ・スイッチ・Hub機器・サーバーラック | ||
机・椅子(booth・研修室・会議室) | ||
フロア構築費(パーテーション) | ||
什器備品(ラテラル) | ||
オフィス賃貸料(初期費用) | ||
運用費用(月額) | 人件費 | 管理者人件費(月給/厚生福利費) |
スタッフ人件費(時給/厚生福利費) | ||
社員交通費 | ||
通信費 | WAN回線費 | |
電話通信費 | ||
システム | PBX利用料/保守費用 | |
セキュリティシステム利用料 | ||
その他必要なクラウドシステム(CRM/FAQ等)利用料 | ||
インフラ | ネットワーク保守費 | |
ビル賃貸料 | ||
光熱費 |
地方拠点に関するポイント
- ロケーションによってビル賃料/採用費/人件費が大きく異なる
- コストだけでなく、採用可能なエリアにどれだけ安定して人材がいるかが重要になる
- 感染症対策のため、各ブースにパーテーションをたてる、機器の専有化などが必要
地方拠点ではロケーション選びが最も重要な要素になります。
単純な地代家賃の違いに加え、採用にかかる費用、人件費にも大きく影響があります。また、コストだけでなく、採用可能なエリア(通勤可能なエリア)にどれだけの労働人口がいるかもポイントになります。
また、地域によっては新しい他社センターによって採用が困難になるケースがあるため、スタッフの定着率をあげる対策が継続的に必要になります。
事例(山形VS在宅の比較)
最後に、弊社の事例として、山形センターと在宅拠点について比較します。
大項目 | 地方拠点(山形) | 在宅拠点 |
BCP対策 | 普通 | 高い |
採用難易度 | 難しい~普通 | 易しい |
管理難易度 | 易しい | 難しい |
セキュリティ | 高い | 普通 |
品質/生産性 | 高い | 高い |
拡張性 | 普通 | 高い |
BCP対策
在宅拠点に関しては、自然災害に加え、全国同時多発的な感染症に対しても有効なBCP対策になります。また、オフィスへの一極集中を避けることができるため、在宅勤務に移行することが感染症対策にもなります。
採用難易度
地方拠点は集客可能なエリア(通勤が可能なエリア)の制約があります。また、地代家賃と採用難易度はトレードオフの関係にあり、地代家賃を抑えようとすると集客しにくくなるので注意が必要になります。
在宅拠点は全国での採用が可能なため、集客は比較的集まりやすくなります。時給に関しても、都市部では時給の高騰が続いていますが、地方であれば、都市部に比べて低い金額でも優秀な人材の採用が可能です。
管理難易度
地方拠点は、通常のコールセンター運営と同様のマネジメントが可能です。管理者の採用に多少苦戦する可能性はありますが、U・Iターンでの採用や総合職社員の異動を行えば、調達可能です。
在宅拠点に関しては、物理的に見えない状態でのリモートマネジメントになるため、通常のセンター運営とは少しマネジメント方法が変わります。
特に大きく変わるのは、コミュニケーションの取り方を明確にしなければいけないことです。
対面であれば、阿吽の呼吸で理解できることも、リモートになると明確に言語化や視覚化しないと伝わらないことが増えるため、いつも以上に明確なコミュニケーションが求められます。
また、ツールもチャットでのやりとりが増えるため、チャットスキルがないと業務に支障出る可能性があります。
セキュリティ
地方拠点は、通常のコールセンター運営と同様のセキュリティ要件で構築が可能です。
在宅拠点に関しては、VPN接続などを利用することで、ネットワーク上は通常のコールセンターとほぼ同様のセキュリティレベルを実現することができます。
ただ、スマートフォンで画面を撮影するなどの人為的なインシデント事故は通常センターより対応が難しくなります。スタッフへの研修や誓約書の締結、WEB会議システムで常にPCカメラをオンにするなどの工夫が必要になります。
ちなみに、米国の事例にはなりますが、インシデント事故が通常センターより在宅オペレーターの方が少ないとの報告もあります。
品質/生産性
品質/生産性については、当初在宅勤務のほうが低くなることを予測しておりましたが、大きな変化はございませんでした。ただし、初期の研修や管理工数については通常のセンターより負荷が上がっています。
弊社ではその分出勤率が上がる効果があり、相殺されて大きくKPIには影響がありませんでした。
今後、より在宅化が進んでいき、ノウハウが蓄積されると、通常センターより効率化していく可能性が高いと考えています。
拡張性
拡張性は、対応人数の増減がスピーディーに行えるかを表しております。地方拠点は、オフィスのキャパシティや採用などに影響を受けます。
特に人材確保が容易かどうかがポイントなります。在宅拠点は採用が簡易かつ、システムはすべてクラウドのため、拡張性が高く、特に急な増加に対して対応が可能となっています。
まとめ
今回はコールセンターにおけるBCP対策について、在宅と地方拠点を比較しました。
BCP対策は必要という認識はあるものの、投資対効果などが不透明になると経営陣の理解を得られないなどの課題が出てきます。
まずは、センターが止まった際の被害総額などリスクを可視化し、投資対効果を明確にすることでBCP対策は進みやすくなります。
ウィルオブ・ワークでは、在宅型業務委託サービス、在宅化で必要なシステムの導入支援、在宅対応可能な派遣社員のご紹介など、コールセンターの在宅化を支援しております。コールセンター・コンタクトセンターの在宅化に興味のある企業さまや、センター運営で課題をお持ちの企業さまは、まずはお問い合わせください。
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