派遣社員を直接雇用する方法と注意点|法律・手続き・費用と、独自調査でわかった製造業求職者の特徴を解説

2026/09/30

派遣社員を直接雇用する方法と注意点|法律・手続き・費用と、独自調査でわかった製造業求職者の特徴を解説

長く働いてくれている派遣社員を、自社の社員として迎えたいと考える場面があります。ラインの中心を任せられる人ほど、派遣期間が終わる前に手を打っておきたいものです。工場で派遣社員を受け入れている人事担当者は、覚えがあるのではないでしょうか。一方で、派遣会社との契約に反しないか、手数料がかかるのか、法律上の義務があるのかがわからず、切り出せずにいる方も少なくありません。

派遣社員の直接雇用は、ルールを押さえて派遣会社と調整すれば、トラブルなく進められます。まずは法律上の基本ルールと派遣先の義務を確認し、そのあと直接雇用の4つのパターン、手順、費用と助成金、直接雇用後の労働条件の決め方を順に紹介します。

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派遣社員は直接雇用できる?まず押さえる基本ルール

派遣社員を直接雇用することは、法律で禁じられていません。むしろ労働者派遣法は、派遣社員が派遣先に直接雇用される道を妨げないよう、派遣元に一定の制限を設けています。

派遣元は、雇用関係の終了後に派遣先へ雇用されることを禁じられない

労働者派遣法第33条は、派遣元が派遣社員との間で、正当な理由なく、派遣元との雇用関係が終わった後に派遣先に雇用されることを禁じる契約を結んではならないと定めています。同じ条の第2項では、派遣元が派遣先との間で、派遣社員を雇用することを禁じる契約を結ぶことも禁止しています(労働者派遣法第33条)。

派遣社員と派遣元の雇用関係が終われば、派遣先がその人を雇用することを、派遣元は契約で妨げられません。派遣期間の満了にあわせて直接雇用に切り替えるのは、法律が想定している自然な流れです。

契約期間の途中で切り替える場合は、三者の合意が前提

注意が必要なのは、派遣契約の期間中に切り替えるケースです。派遣社員はその時点でも派遣元と雇用契約を結んでいるため、派遣先が一方的に採用を決めても、派遣元との雇用関係と重なってしまいます。

契約の途中で切り替えたい場合は、派遣元に意向を伝えたうえで、派遣元、派遣先、本人の三者で合意し、派遣契約を終える日と自社に入社する日をそろえます。派遣会社に相談せずに本人と直接話を進めると、派遣契約上の信頼関係を損ね、ほかの派遣社員の受け入れにも影響しかねません。

正社員だけでなく、契約社員・パートとして直接雇用することもできる

直接雇用は、正社員として雇うことに限りません。契約社員やパート・アルバイトとして自社で雇うことも直接雇用です。どの雇用形態で迎えるかは、本人の希望と助成金の活用の有無をあわせて決め。

派遣社員の直接雇用に関わる派遣先の義務と法律

派遣先には、派遣社員の直接雇用に関わる義務と努力義務がいくつかあります。対象になる期間の要件がそれぞれ違うため、条文ごとに整理します。

規定誰の義務か主な対象内容
第40条の4派遣先(努力義務)同一の組織単位の同一業務で1年以上受け入れた特定有期雇用派遣労働者派遣終了後に同じ業務で人を雇い入れる場合、その派遣社員を雇い入れるよう努める
第40条の5第1項派遣先(義務)同一の事業所で1年以上受け入れている派遣社員通常の労働者(正社員)の募集情報を周知する
第40条の5第2項派遣先(義務)同一の組織単位に3年間従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者正社員に限らず、労働者の募集情報を周知する
第30条派遣元同一の組織単位に1年以上従事する見込みがある有期雇用の派遣社員など派遣先への直接雇用の依頼などの雇用安定措置を講じる(3年見込みの場合は義務)

出典:労働者派遣法第30条、第40条の4、第40条の5(e-Gov法令検索)

派遣先の雇用努力義務(第40条の4)

派遣先が、同じ組織単位の同じ業務で、同じ特定有期雇用派遣労働者を1年以上続けて受け入れたとします。その後、引き続きその業務に人を従事させるために労働者を雇い入れようとするときは、その派遣社員が継続して働くことを希望していれば、遅滞なく雇い入れるよう努めなければなりません(労働者派遣法第40条の4)。

これは努力義務で、必ず雇用しなければならないわけではありません。ただ、同じ業務に新たに人を採用するのに、1年以上働いてきた派遣社員を検討の対象から外すことは、この規定の趣旨に反します。

正社員募集の情報提供義務(第40条の5)

同じ事業所で同じ派遣社員を1年以上続けて受け入れている派遣先が、その事業所で正社員を募集するときは、業務内容、賃金、労働時間などの募集情報を、掲示などの方法でその派遣社員に周知しなければなりません(労働者派遣法第40条の5第1項)。

同じ組織単位で3年間働く見込みがある特定有期雇用派遣労働者については、正社員に限らず、契約社員やパートを含む労働者の募集情報を周知する必要があります(同条第2項)。こちらは努力義務ではなく義務です。工場で正社員の求人を出す際は、社外向けの求人と同時に、対象となる派遣社員にも情報が届いているかを確認してください。

派遣元の雇用安定措置と、派遣先への直接雇用の依頼

派遣元には、同じ組織単位で継続して1年以上働く見込みがある有期雇用の派遣社員などに対し、雇用安定措置を講じる努力義務があります。措置は次の4つです(労働者派遣法第30条第1項)。

  1. 派遣先に対し、その派遣社員に労働契約の申込みをするよう求める
  2. 能力や経験に照らして合理的な、新たな派遣先を提供する
  3. 派遣元で、派遣労働者以外の労働者として無期雇用する機会を提供する
  4. 雇用の安定に特に役立つ教育訓練など、その他の措置を講じる

同じ組織単位で3年間働く見込みがある場合は、努力義務ではなく義務になります(同条第2項)。派遣会社から、この派遣社員を直接雇用してもらえないかという依頼が届くことがあるのは、この規定に基づくものです。依頼を受けた派遣先に雇用の義務はありませんが、前述の第40条の4の努力義務とあわせて、誠実に検討することが求められます。

期間制限(3年ルール)と抵触日

派遣社員の直接雇用を検討するきっかけとして多いのが、派遣の期間制限です。期間制限には、事業所単位と個人単位の2種類があります。期間制限に違反することになる最初の日を抵触日と呼びます。

事業所単位の期間制限

派遣先は、同じ事業所で、3年を超えて続けて派遣を受け入れることはできません(労働者派遣法第40条の2第1項・第2項)。3年を超えて受け入れたい場合は、抵触日の1か月前までに、その事業所の過半数労働組合、または過半数代表者の意見を聴いたうえで、3年を限度に延長できます(同条第3項・第4項)。延長したときは、速やかに派遣元へ新しい抵触日を通知します(同条第7項)。

個人単位の期間制限

事業所単位の期間を延長した場合でも、同じ派遣社員を同じ組織単位(課やグループなど)で3年を超えて受け入れることはできません(労働者派遣法第40条の3)。組織単位を変えれば同じ人を引き続き受け入れることはできますが、同じラインで同じ人に働き続けてもらいたい場合は、3年が近づいた時点で、直接雇用か、派遣元での無期雇用への切り替えかを判断する必要があります。

無期雇用派遣・60歳以上などは期間制限の対象外

派遣元に無期雇用されている派遣社員(無期雇用派遣)、60歳以上の派遣社員、終期が決まっている有期プロジェクトの業務、月の就業日数が一定以下の業務、産前産後休業・育児休業・介護休業を取る社員の代替業務は、期間制限の対象外です(労働者派遣法第40条の2第1項各号、同法施行規則)。同じ人に長く働いてもらいたいが、すぐに直接雇用するのは難しい場合は、派遣元に無期雇用された派遣社員を受け入れる方法もあります。

抵触日を迎えるときの4つの選択肢

個人単位の抵触日が近づいた派遣社員について、派遣先が取れる選択肢は次の4つです。

選択肢内容注意点
自社で直接雇用する正社員、契約社員、パートなどとして自社で雇用する派遣会社との調整と、紹介手数料の有無の確認が必要
組織単位を変えて受け入れる別の課やグループの業務で、同じ派遣社員を引き続き受け入れる事業所単位の期間制限は別途守る必要がある。実態として同じ業務を続けさせると違反と判断されるおそれがある
派遣元での無期雇用に切り替えてもらう派遣元がその派遣社員を無期雇用し、無期雇用派遣として受け入れを続ける派遣元と本人の合意が前提。派遣料金が変わる場合がある
受け入れを終了する抵触日の前日で派遣の受け入れを終える派遣元は雇用安定措置を講じる必要があり、派遣先に直接雇用の依頼が来ることがある

出典:労働者派遣法第30条、第40条の2、第40条の3をもとに作成

組織単位を変える方法は、手続きの面では簡単に見えますが、名目だけ組織を変えて同じラインで同じ作業を続けさせれば、個人単位の期間制限を免れていると判断されかねません。同じ人に同じ仕事を任せ続けたいのであれば、直接雇用か無期雇用派遣への切り替えを選ぶほうが確実です。

違法派遣には労働契約申込みみなし制度が適用される(第40条の6)

派遣先が次のような違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先がその派遣社員に対し、同じ労働条件で労働契約の申込みをしたものとみなされます。これを労働契約申込みみなし制度といいます(労働者派遣法第40条の6第1項)。

  • 派遣が禁止されている業務に派遣社員を従事させた場合
  • 許可を受けていない事業者から派遣を受け入れた場合
  • 事業所単位の期間制限に違反して受け入れた場合
  • 個人単位の期間制限に違反して受け入れた場合
  • 法律の適用を免れる目的で、請負などの名目で契約を結び、実態として派遣を受けた場合(いわゆる偽装請負)

派遣社員がこの申込みを承諾すれば、派遣先との労働契約が成立します。派遣先は、違法行為が終わった日から1年間はこの申込みを撤回できません(同条第2項)。違法派遣にあたると知らず、知らなかったことに過失もなかった場合は適用されません。

製造業では、業務請負で受け入れている人員に、自社の社員が直接作業の指示を出しているケースが偽装請負と判断されるおそれがあります。抵触日の管理とあわせて、請負と派遣の区分が契約どおりに運用されているかを確認しておくことが、意図しない直接雇用の成立を防ぐことにつながります。

派遣社員を直接雇用する4つのパターン

直接雇用に至る流れは、受け入れている派遣社員の雇用形態や、採用のきっかけによって4つに分かれます。

有期雇用派遣の派遣社員を直接雇用する

派遣元と期間を定めて雇用契約を結んでいる派遣社員を、派遣期間の満了にあわせて直接雇用するパターンです。最も多いケースで、抵触日の到来や、派遣元からの雇用安定措置としての依頼がきっかけになることがよくあります。

無期雇用派遣(正社員型派遣)の派遣社員を直接雇用する

派遣元に無期雇用されている派遣社員を直接雇用するパターンです。無期雇用派遣は期間制限の対象外のため、派遣のまま長く働いてもらうこともできます。本人は派遣元で無期雇用という安定した立場にあるため、直接雇用に切り替えると待遇や働き方がどう変わるのかを具体的に示さないと、本人から切り替えを断られることもあります。

紹介予定派遣で、見極め期間を経て直接雇用する

紹介予定派遣は、派遣期間の終了後に派遣先が直接雇用することを前提に、派遣会社が職業紹介を行う仕組みです。同じ派遣社員を紹介予定派遣で受け入れられる期間は、6か月までと定められています(厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」)。派遣期間中に、派遣先は仕事ぶりを、派遣社員は職場の雰囲気や仕事内容を確かめたうえで、双方が合意すれば直接雇用に移ります。

最初から直接雇用を前提にしているため、派遣会社とのあいだで手続きや紹介手数料の扱いがあらかじめ決まっており、途中でもめにくい点が特徴です。

派遣社員が自社の正社員求人に自ら応募してきた場合

求人サイトなどを通じて、受け入れている派遣社員が自社の正社員求人に応募してくることがあります。職業選択の自由があるため、応募そのものを拒む理由にはなりません。ほかの応募者と同じ基準で選考し、採用する場合は、派遣元に連絡して派遣契約の終了日と入社日を調整します。派遣元との雇用関係が続いたまま自社と雇用契約を結ぶことはできないため、この調整を省くことはできません。

派遣社員を直接雇用に切り替える手順

有期雇用派遣の派遣社員を正社員として直接雇用する場合を例に、手続きの流れを紹介します。

1. 派遣会社に直接雇用の意向を伝える

最初にするべきことは、本人に声をかけることではなく、派遣会社の担当者に相談することです。派遣契約書に直接雇用に関する条項(職業紹介の扱い、手数料、事前の通知期間など)があるかを確認し、切り替えの時期について意見を聞きます。抵触日が近い場合は、それまでに手続きを終えられるスケジュールを組みます。

2. 本人の意向と、雇用形態・労働条件の案を固める

派遣会社を通じて、本人に直接雇用を希望するかどうかを確認します。あわせて、正社員、契約社員、パートのどれで迎えるか、賃金や勤務時間、配置をどうするかの案をつくります。派遣のときより手取りが下がる、勤務時間の自由度が下がるといった変化がある場合は、この段階で本人に正直に伝えておかないと、入社後の早期離職につながります。

3. 職業紹介契約の有無と紹介手数料を確認する

派遣会社が有料職業紹介の許可を持っている場合、直接雇用にあたって派遣会社と職業紹介契約を結び、紹介手数料を支払う取り決めになっていることがあります。手数料の額や算定方法は派遣会社ごとに異なるため、派遣契約書と、派遣会社が示す手数料の規定を確認します。

4. 選考・内定を出し、労働条件を書面で示す

直接雇用であっても、面接などの選考を行い、内定を出します。内定を出す際は、賃金、労働時間、就業場所、業務内容などの労働条件を書面で明示します。派遣のときの条件を引き継ぐわけではないので、労働条件通知書と雇用契約書は新たに用意する必要があります。

5. 派遣契約の終了日と入社日をそろえ、入社手続きを行う

派遣元との雇用関係が終わる日と、自社への入社日が重ならないよう、派遣会社と日程を確定します。入社日以降は、社会保険と雇用保険の資格取得の手続きを行います。キャリアアップ助成金を使う場合は、直接雇用より前にキャリアアップ計画を提出しておく必要があるため、この日程を決める前に準備を始めてください。

抵触日から逆算したスケジュール例

抵触日を目安に直接雇用する場合は、次のように逆算して準備を進めると、手続きの漏れを防げます。期間はあくまで目安で、派遣会社との契約内容や社内の稟議の流れに合わせて調整してください。

時期の目安派遣先がすること
抵触日の3か月前まで派遣会社に直接雇用の意向を伝え、派遣契約書の条項を確認する。助成金を使う場合は就業規則の規定とキャリアアップ計画の準備を始める
抵触日の2か月前まで本人の意向を確認し、雇用形態と労働条件の案を固める。紹介手数料の見積もりを取り、社内の決裁を得る
抵触日の1か月前まで選考と内定を行い、労働条件通知書を交付する。キャリアアップ計画を労働局に提出する
抵触日の前日まで派遣契約の終了日と入社日を確定し、派遣の受入れ期間内に労働契約を結ぶ
入社日以降社会保険・雇用保険の手続きを行い、6か月分の賃金を支払った後に助成金を申請する

出典:労働者派遣法第40条の2・第40条の3、厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」をもとに作成

直接雇用にかかる費用と使える助成金

直接雇用にかかる費用は、主に派遣会社に支払う紹介手数料です。一方で、条件を満たせば国の助成金を受けられます。

紹介手数料の考え方

紹介予定派遣や、派遣会社と職業紹介契約を結んで直接雇用する場合は、その契約に基づいて紹介手数料を支払います。有料職業紹介事業者の手数料は、事業者が届け出た手数料表などに基づいて決まるため、金額は派遣会社によって変わります。見積もりを取る際は、算定の基準(年収に対する割合か、定額か)、支払いの時期、入社後すぐに退職した場合の返金規定を確認します。

紹介手数料は、新たに求人広告を出して採用する場合の費用と比べて判断します。すでに職場で働いた実績があり、適性がわかっている人を採用できる分、採用の失敗による損失を抑えられることも考慮に入れます。

引き抜き禁止・違約金条項がある場合の扱い

派遣契約書に、派遣社員を直接雇用した場合の違約金や、直接雇用を禁じる条項が入っていることがあります。労働者派遣法第33条は、派遣元が、正当な理由なく、派遣元との雇用関係の終了後に派遣先がその派遣社員を雇用することを禁じる契約を結ぶことを禁止しています。

そのため、雇用関係の終了後の直接雇用を一律に禁じる条項は、この規定に照らして問題になる可能性があります。一方で、職業紹介のサービスを受けた対価として手数料を支払う取り決めは、職業紹介の実態があれば正当なものです。条項の読み方で迷う場合は、派遣会社に趣旨を確認したうえで、必要に応じて弁護士や社会保険労務士に相談してください。

キャリアアップ助成金の対象と主な要件

派遣社員を派遣先で正社員として直接雇用した場合、キャリアアップ助成金の正社員化コースの対象になります。令和8年度の支給額は、派遣社員を正社員として直接雇用する場合、1人あたり次のとおりです(厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」)。

直接雇用前の雇用形態中小企業大企業
有期雇用の派遣社員80万円(40万円×2期)60万円(30万円×2期)
無期雇用の派遣社員40万円(20万円×2期)30万円(15万円×2期)

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」

主な要件は次のとおりです(同パンフレット)。

  • 派遣社員を正規雇用労働者として直接雇用する制度を、就業規則などに定めていること
  • 同じ組織単位で6か月以上続けて、同じ派遣社員を受け入れていたこと
  • 直接雇用した後、6か月以上続けて雇用し、6か月分の賃金を支払っていること(第2期の申請は12か月)
  • 直接雇用の前に、キャリアアップ計画を労働局に提出していること
  • 派遣の受入れ期間が終わる日までに、派遣先に雇用されることを希望する派遣社員と労働契約を結ぶこと

労働契約申込みみなし制度の対象となった人を直接雇用する場合は、支給の対象外です。支給額や要件は年度ごとに見直されるため、申請前に最新のパンフレットと管轄の労働局で確認してください。

直接雇用後の労働条件で決めておくこと

直接雇用は、新しい雇用契約を結ぶことです。派遣のときの条件がそのまま引き継がれるわけではないため、次の項目を事前に決めておきます。

賃金・賞与・退職金

派遣のときの時給を月給に置き換えると、賞与や手当の有無によって年収が上下します。本人が比べやすいよう、派遣時の年収の目安と、直接雇用後の月給、賞与、手当を含めた年収の見込みを並べて示すと納得を得やすくなります。退職金制度がある場合は、勤続年数をいつから数えるかもあわせて決めます。

有給休暇と勤続年数の扱い

派遣元で働いた期間に発生した年次有給休暇や勤続年数は、雇用主が変わるため、法律上当然には自社に引き継がれません。入社後6か月は有給休暇が付与されないことになり、本人にとっては不利に感じられる点です。自社の判断で派遣期間を勤続年数に通算する、入社時に有給休暇を前倒しで付与するといった扱いを決めることはできます。どうするかを就業規則や雇用契約書で明確にしておきます。

試用期間を設けるかどうか

派遣期間中の仕事ぶりを見て採用するため、試用期間を設けない、または短くする企業もあります。試用期間を設ける場合は、期間とその間の労働条件を労働条件通知書に明記します。

雇用契約書・労働条件通知書に明記すること

業務内容と就業場所(変更の範囲を含む)、契約期間、勤務時間と休日、賃金、社会保険の適用など、労働条件を書面で明示します。派遣のときと担当業務や勤務時間が変わる場合は、何がどう変わるのかを具体的に書いておくと、入社後の認識のずれを防げます。

派遣社員を直接雇用するメリット・デメリット

直接雇用は、企業にとって利点が大きい一方で、派遣のままのほうがよいケースもあります。

企業側のメリット

仕事ぶりと適性を見たうえで採用できる

面接だけで採用する場合と違い、実際の勤務態度、作業の正確さ、職場での人間関係を見たうえで採用を判断できます。入社後のミスマッチが起きにくいことが、直接雇用の最大の利点です。

教育コストを抑え、すぐに戦力として任せられる

すでに設備の扱いや作業手順を身につけているため、入社後の教育にかかる時間を短くできます。新たに採用した人を一から育てる場合と比べ、現場の指導担当者の負担も軽くなります。

任せられる業務の範囲が広がる

派遣社員に任せられる業務は、派遣契約で定めた範囲に限られます。直接雇用すれば、工程のリーダーや新人の指導役など、より責任のある役割を任せられます。

企業側のデメリット

人件費・管理コストが増える

社会保険料の事業主負担、賞与、退職金、教育訓練などを自社で負担することになります。勤怠管理や評価も自社で行うため、管理部門の負担も増えます。

繁閑に合わせた人員調整がしにくくなる

派遣であれば、契約の更新時に人数を調整できます。直接雇用した社員は、業務が減ったからといって簡単に雇用を終えることはできません。繁閑差が大きい工程では、年間を通じて必要な人数を直接雇用し、繁忙期の増員は派遣で対応するといった組み合わせが現実的です。

本人の手取りや働き方の自由度が下がる場合がある

派遣の時給が高めに設定されていた場合、月給制に切り替えると手取りが下がることがあります。残業や休日出勤を断りにくくなる、配置転換の可能性が生じるといった変化もあります。本人が直接雇用を望まない場合もあるため、条件を示したうえで本人の意思を尊重します。

【独自調査】正社員への道を見せると、3人に1人の求職者に届く

ここからは、直接雇用を採用の入口として使う視点に切り替えます。ウィルオブ・ワークは2026年9月、製造業のうち工業製品の製造分野(繊維、木材、家具、紙、印刷、化学、鉄鋼、金属製品、機械)で就職活動をした経験がある20〜30代を中心とする330名に、応募を検討できる求人条件などを尋ねました。

正社員登用の可能性があれば派遣・契約でも可は33.3%。正社員以外も受け入れる人は計48.8%

応募を検討できる雇用形態を尋ねたところ、正社員雇用が51.2%で最も多く、次いで正社員登用の可能性があれば派遣・契約でも可が33.3%でした。派遣社員は8.8%、契約社員は0.9%、パート・アルバイトは1.8%、特に雇用形態にこだわらないは3.9%です(株式会社ウィルオブ・ワーク調べ)。正社員以外の雇用形態も受け入れる人は、合わせて48.8%になります。

正社員の求人だけを出している工場は、正社員登用の道があれば派遣や契約から始めてもよいと考える、3人に1人の求職者を取りこぼしている可能性があります。

この層の63.6%がLINEで応募したい、50.9%が平日固定休を避けたい

正社員登用の可能性があれば派遣・契約でも可と答えた110名と、正社員雇用のみを希望する169名を比べると、求人に求めるものがはっきり違いました(株式会社ウィルオブ・ワーク調べ)。

項目正社員登用の可能性があれば派遣・契約でも可(110名)正社員雇用のみ(169名)
LINEで応募・やりとりができる63.6%33.1%
平日固定休を許容できない50.9%29.0%
社員食堂・食事補助がある35.5%24.3%
面接の日程を自分で選べる7.3%25.4%
応募から採用決定までが早い5.5%23.7%

出典:株式会社ウィルオブ・ワーク調べ

正社員登用の可能性があれば派遣・契約でもよいと考える層は、応募の入口が手軽であることと、土日に休める働き方を求めています。その反面、面接日程の自由度や選考のスピードはあまり重視していません。

正社員のみを希望する層は、長く働く前提の情報を見ている

正社員雇用のみを希望する層は、求人を選ぶ条件として業務時間・勤務曜日(49.7%)と仕事内容(37.9%)を重視し、福利厚生では社会保険完備(49.1%)と退職金制度(32.0%)を重視する割合が高くなっていました。

同じ工場の求人でも、どちらの層に届けたいかによって、前面に出すべき情報は変わります。

直接雇用の道を募集段階から見せる3つのポイント

調査結果を踏まえると、正社員登用の道がある派遣や契約の求人では、次の3点を求人の最初に見せると、この層に届きやすくなると考えられます。

正社員登用の実績と条件を具体的に書く

正社員登用ありと書くだけでは、本当に登用されるのかが伝わりません。過去に何人が登用されたか、どのくらいの期間で、どんな条件を満たせば登用の対象になるのかを書きます。紹介予定派遣であれば、派遣期間の長さと、直接雇用後の雇用形態と給与の目安を示します。

土日に休める働き方かどうかを明記する

この層の50.9%が平日固定休を許容できないと答えています。土日休みの勤務であれば、そのことを冒頭に書きます。シフト制の場合は、土日に休める頻度の目安を示します。

LINEなど手軽な応募の入り口を用意する

この層の63.6%がLINEでの応募・やりとりを求めています(株式会社ウィルオブ・ワーク調べ)。履歴書の提出や電話連絡を応募の条件にしている場合は、LINEで応募を受け付け、面談の日程調整までLINEで済ませられる仕組みを検討します。

製造業での直接雇用を見すえた派遣の使い分け

工場で直接雇用を見すえて派遣を使う場合、紹介予定派遣、正社員型派遣、有期派遣からの切り替えの3つが選択肢になります。どれを選ぶかは、採用したいポジションと、見極めにかけられる時間で決まります。

紹介予定派遣が向いているポジション

直接雇用することが最初から決まっていて、適性を確かめてから採用したいポジションに向いています。たとえば、将来の工程リーダー候補や、品質管理、設備保全など、入社後に長く育てていきたいポジションです。派遣期間は最長6か月のため、見極めの期間が限られることは前提にしておきます。

正社員型派遣(無期雇用派遣)が向いているポジション

長く働ける人をすぐに確保したいものの、自社で正社員を採用する体制が整っていない、または採用が思うように進まないポジションに向いています。無期雇用派遣は期間制限の対象外のため、抵触日を気にせずに同じ人に働き続けてもらえます。定着を見届けたうえで、将来的に直接雇用に切り替える道も残せます。

有期派遣からの切り替えが向いているケース

繁忙期の増員などで有期派遣を受け入れていたところ、特に仕事ぶりのよい人が見つかったというケースです。抵触日が近づいたタイミングや、派遣元から雇用安定措置として直接雇用の依頼が届いたタイミングで検討します。

経営層に説明するための比較表

3つの方法を経営層に説明する際は、期間、費用、雇用のリスクを並べると判断しやすくなります。

方法直接雇用までの期間主な費用期間制限向いているケース
紹介予定派遣最長6か月の派遣期間後派遣料金と紹介手数料6か月まで採用前提で適性を見極めたい
正社員型派遣(無期雇用派遣)直接雇用は必須ではない派遣料金(直接雇用時は手数料の確認が必要)対象外すぐに長く働ける人を確保したい
有期派遣からの切り替え派遣期間の満了時など派遣料金と、契約により紹介手数料個人単位で3年受け入れ中の派遣社員を迎えたい

出典:労働者派遣法第40条の2、厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」

いずれの方法でも、条件を満たせばキャリアアップ助成金を活用できる可能性があります。費用の比較には、助成金の見込み額もあわせて載せておくと、実質的な負担がわかりやすくなります。

直接雇用を見すえた人材確保はウィルオブ・ワークへ

ウィルオブ・ワークは、東証プライム上場グループの人材サービス会社です。全国50拠点以上で、2,800社以上との取引実績があります。製造・工場の分野では、人材派遣、正社員派遣、紹介予定派遣、人材紹介、現場請負まで対応しています。受け入れ中の派遣社員の直接雇用の進め方や、紹介予定派遣と正社員派遣の使い分けについても、工場の状況に合わせてご相談いただけます。サービスの詳細はウィルオブ・ワークの製造・工場向け人材サービスをご覧ください。

派遣社員の直接雇用に関するよくある質問

派遣社員の直接雇用について、企業の担当者からよく寄せられる質問にお答えします。

派遣社員を直接雇用するのは違法ですか?

違法ではありません。労働者派遣法第33条は、派遣元が、正当な理由なく、派遣元との雇用関係の終了後に派遣先に雇用されることを禁じる契約を結ぶことを禁止しています。ただし、派遣契約の途中で切り替える場合は、派遣元、派遣先、本人の三者で合意し、派遣契約の終了日と入社日を調整する必要があります。

派遣先に派遣社員を直接雇用する義務はありますか?

直接雇用そのものを義務づける規定はありません。ただし、同じ業務で1年以上受け入れた特定有期雇用派遣労働者について、派遣終了後に同じ業務で人を雇い入れる場合は、その人を雇い入れるよう努める努力義務があります(労働者派遣法第40条の4)。また、違法派遣を受け入れた場合は、労働契約申込みみなし制度により、派遣先が労働契約を申し込んだものとみなされます。

直接雇用するときの紹介手数料は必ずかかりますか?

必ずかかるわけではありません。紹介手数料は、紹介予定派遣や、派遣会社と職業紹介契約を結んで直接雇用する場合に、その契約に基づいて発生します。金額や算定方法は派遣会社ごとに異なるため、派遣契約書と手数料の規定を確認してください。

派遣契約の途中で直接雇用に切り替えられますか?

派遣元、派遣先、本人の三者が合意すれば切り替えられます。派遣社員は契約期間中も派遣元と雇用契約を結んでいるため、まず派遣会社に相談し、派遣契約を終える日と入社日をそろえます。

派遣社員が自社の求人に直接応募してきたら、断るべきですか?

応募そのものを断る理由にはなりません。ほかの応募者と同じ基準で選考し、採用する場合は派遣元に連絡して、派遣元との雇用関係の終了日と入社日を調整します。派遣元との雇用契約が続いたまま、自社と雇用契約を結ぶことはできません。

派遣社員の側から直接雇用を打診されたら、どう対応すればよいですか?

本人の希望を受け止めたうえで、派遣会社の担当者に相談してください。直接雇用するかどうか、どの雇用形態で迎えるかは、職場の人員計画と本人の希望をあわせて判断します。すぐに直接雇用できない場合でも、正社員募集の情報提供義務などの対象になっていないかを確認しておきます。

まとめ

派遣社員の直接雇用は、法律で禁じられていません。派遣元は、雇用関係の終了後に派遣先へ雇用されることを正当な理由なく禁じる契約を結べず(労働者派遣法第33条)、派遣先にも雇用の努力義務や募集情報の周知義務があります。一方で、契約期間の途中での切り替えには三者の合意が必要で、紹介手数料や、違法派遣の場合の労働契約申込みみなし制度にも注意が要ります。

進める順番は、まず派遣契約書と抵触日を確認し、次に派遣会社に相談して本人の意向と労働条件を固め、最後に助成金の準備と入社日の調整を並行して進める流れです。

直接雇用は、受け入れ中の派遣社員を迎えるためだけの手続きではありません。ウィルオブ・ワークの調査では、工業製品の製造分野で就職活動をした20〜30代の33.3%が、正社員登用の可能性があれば派遣・契約でも応募を検討すると答えました(株式会社ウィルオブ・ワーク調べ)。紹介予定派遣や正社員型派遣で正社員への道を募集段階から見せれば、正社員求人だけでは届かなかった層にも応募の入口を開けるでしょう。

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調査概要

記事内で紹介した独自調査の概要は次のとおりです。

  • 調査名:お仕事に関するアンケート
  • 調査期間:2026年9月
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 調査対象:製造業のうち工業製品の製造分野(繊維工業、木材・木製品製造業、家具・装備品製造業、パルプ・紙・紙加工品製造業、印刷・同関連業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、機械製造業)で就職活動の経験がある20〜30代を中心とする男女
  • 有効回答数:330名(男性173名、女性157名)
  • 調査主体:株式会社ウィルオブ・ワーク

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