外国人留学生を雇用する際の注意点とは

2024/04/16

2008年、文部科学省がグローバル戦略の一つとして、「留学生30万人計画」を発表しました。

2020年までに留学生の人数を30万人に増やす計画です。

結果として、2022年5月末の時点で、留学生の人数が23万1,146人となっています。

そのため近年、居酒屋やコンビニで働いている外国人の留学生を見かけるようになりました。

これからさらに留学生の雇用も一般的になっていく見込みです。

この記事では、外国人留学生を雇用するにあたっての注意点や確認事項を解説します。

在留資格や就労制限などの確認をせずに雇用してしまうと、「不法就労」になり罰が科される可能性があります。

そうならないためにも、雇用前に就労可能かの確認や、雇用後に就労時間の制限を守ることができているかが重要になります。

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在留資格「留学」と就労制限の確認

留学生を雇う前に、就労可能かどうかを確認するのは雇用主の責任となります。

万が一、就労不可の人を働かせてしまうと「不法就労助長罪」に問われ、最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性があります。

在留資格が「留学」の場合は、裏に「資格外活動許可」のスタンプが押されているとアルバイトができます。

「留学」という在留資格と、留学生が日本でアルバイトをするために必要な許可を説明します。

在留資格「留学」とは

日本に来る前に、勉強を目的とした来日であることを日本政府に申請し、「留学」という在留資格をもらいます。

目的は勉強なので就労不可の場合がほとんどです。

ただし、学費や生活費を払うためお金を稼がないといけない場合は、「資格外活動許可」を申請し、受理されれば1週間に28時間まで仕事をすることができます。

例外として、風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第2条第1項で言われる「風俗営業」が営まれているお店では働くことができません。

キャバクラ、バー、ゲームセンターなどがそれに当たります。

不法就労をさせると懲役になる可能性も

「資格外活動許可」がない留学生を雇ってしまったら「不法就労助長罪」に問われます。

また、1週間に28時間以上勤務させることも同罪です。

「不法就労助長罪」に問われると最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性があります。

2017年に派遣会社の社長がベトナムの留学生4人を不法就労させたため、2年の懲役と200万の罰金と判決されたこともありますので、十分に注意しましょう。

くわしくはこちらの記事:不法就労の外国人を雇ってしまったら!?外国人雇用のリスクと回避方法

「在留資格」と「資格外活動許可」を確認しましょう

「在留資格」は在留カードを見ればわかります。

在留カードは外国人が常に携帯しないといけない入国管理局が発行した身分証明書です。

留学生の場合、在留カードの表の在留資格欄に「留学」と記載され、就労許可欄には「就労不可」と記載されることが多いです。

ただし、在留カードの裏に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」のスタンプがあれば1週間に28時間以内のアルバイトは可能となります。

パスポートにも「資格外活動許可」の紙も貼ってあるはずなので併せて確認するようにしましょう。

在留カードと勤務時間の管理

在留カードと勤務時間の管理

就労可能の場合は、雇用後も注意しなくてはいけないことがあります。

就労中に在留資格が失効になった場合も不法就労にあたります。

在留カードの期限切れ、時間制限の超過、在留資格の失効の3つは、留学生雇用におけるよくあるトラブルです。

不法就労となるそれぞれの理由と対策方法を紹介します。

くわしくはこちらの記事:在留カードとは「在日外国人の身分証明書」

在留カードの期限を確認

在留カードの期限は3ヶ月から4年3ヶ月まであり、人によって違います。

そのため、在籍している留学生の1人ひとりの在留カード期限の確認が必要です。

在留期限が切れてしまった留学生には、更新した在留カードを提出してもらわないといけません。

更新した在留カードが提出できないまま働かせてしまうと「不法就労助長罪」となります。

在留カードの更新は、申請後1ヶ月ほどで完了することが多いですが、場合によってはさらに時間がかかることもあります。

店舗の人員配置を考慮したうえで、在留期限の2ヶ月前から更新譲許について確認しましょう。

また、更新完了までに在留期限が切れてしまう場合があります。

この場合は、もともとの在留期間が審査終了まで自動的に延長します(最大2ヶ月まで)

その期間も留学生は勤務できますが、雇い側は更新中かどうかを確認しなければなりません。

確認方法は2つあります。

  1. 在留カード裏の右下に「在留資格変更許可申請中」スタンプの有無を確認。
  2. 「申請受付票」の提示。パスポートに貼ってある場合や直接申請者に配る場合がある。

また、学校が代理で在留カードの更新を行う場合があるので、その時は証明書を提示してもらってください。

その証明書に留学生の在留カードコピーと在留カードを預かった目的と学校の印鑑、名前、電話番号があるはずです。

学校に在籍しているかの確認

留学生が日本に滞在するためには、教育機関つまり学校に在籍していないといけません。

言い換えると、教育機関に在籍していないのに日本にいたら不法滞在です。

当然、不法滞在している人を雇ったら不法就労となりますので、働いている留学生が学校に在籍しているかを定期的に確認しないといけません。

必ず学生証を提示してもらいましょう。

 さらに、学校を卒業する時も注意が必要です。

例えば、3月に学校を卒業した後に在留期限のある6月までアルバイトを続けたとします。

この場合、 学校から卒業すると「留学」という在留資格が失効となるので「不法就労」にあたります。

ほかにも、卒業して別の学校へ進学することもあります。

その場合は、次の学校に入学するまでは就労できないため卒業日と入学日を把握しましょう。

「在籍証明書」を提出してもらうことによって、上記のリスクを防ぐことができます。

「1週間に28時間」の制限も注意

留学生は勉強のために日本に来たので、勉強が最優先です。

「資格外活動許可」を取得したとしても、勉強に影響しないことを前提として1週間に28時間以内しか働けません。(長期休暇中は40時間)

そのため、留学生を雇った場合は勤務時間の管理も大切です。

28時間より1分でも多く働かせた場合は「不法就労」になるので注意が必要です。

さらに、留学生がアルバイトを掛け持ちする場合、すべての仕事の合計労働時間が1週間に28時間以内に収まらないといけません。

例えば、ある留学生がすでにA社で週に18時間アルバイトをしていた場合、B社ではその週は最大10時間までしかアルバイトできません。

2つの仕事をあわせて1週間に28時間を超えたら2社とも責任を問われます。

入社前に、すでに仕事しているのかを聞きましょう。

それだけでは不安な場合もあるので、最近ではダブルワークしないことや1週間に28時間の制限を必ず守ることを誓約書にして留学生に書いてもらうケースなども増えています。

外国人雇用状況届出書の提出は義務

外国人雇用状況届出書の提出は義務

外国人の雇用状況に変更があった際はハローワークに「外国人雇用状況の届出」(以下、届出書)を提出しないといけません

入社・退職時に提出がない場合、もしくは届出書に虚偽の情報が書いてあった場合は違法となり、1人につき30万円の罰金が科される可能性があるので注意が必要です。

くわしくはこちらの記事:【記入例付き】外国人雇用状況届出書の書き方・提出方法・期限の徹底解説

入社する際にも退職する際も必要

届出書は、事業所に外国人の雇用状況が変更あった度に提出しないといけません。

そのため、雇用時だけでなく、退職時にも提出しなければなりません。

届出書の様式と記入方法

届出書は3種類の様式あって雇用保険への加入有無によって提出すべき様式が違います。

留学生は「昼間学生」ですので雇用保険へ加入できません。

留学生を雇用する第3号様式の届出書を印刷して記入して提出しましょう。

提出漏れは罰金の対象

外国人を雇用したにもかかわらず提出しなかった場合、最大30万円の罰金が科される可能性があります。

また、届出書に記載されている情報が虚偽と発覚した場合も同様です。

雇用が決まったらすぐ届出書を準備して期限までに提出してください。

万が一提出が遅れそうな場合はなるべく早くハローワークに相談してださい。

外国人でも日本の法律に適用

日本の法律は、滞在している外国人にも適用します。

外国人を雇うと賃金や保険などのコストを削減できると思いがちですが、それは誤解です。

「最低賃金法」や「労働基準法」などの法律は外国人を雇用する際にも守らなければなりません。

課税の義務も同様で、これらについて解説します。

最低賃金など賃金に関する法律

外国人を雇用する際は、研修時を含めて最低賃金法が適用されます。

都道府県により最低賃金が違うので確認しましょう。

また、時間外労働が発生した場合は割増賃金を支払わないといけません。

1日8時間以上勤務した場合は、基礎賃金の1.25倍の給料支払いとなります。

また、夜10時(22時)~朝5時の間に勤務した場合は基礎賃金の1.25倍の深夜手当が発生、休日手当も適用します。

くわしくはこちらの記事:外国人雇用の場合の最低賃金|計算方法や罰則のまとめ

労災保険と所得税

下記の表に各保険に加入する必要かどうか、また所得税の納税義務の有無をまとめました。

労災保険 適応
雇用保険 不適応
社会保険 場合による
所得税 適応
  • 労災保険:すべての労働者に労災保険への加入義務あるので、留学生でも加入が必須。留学生の希望は関係ないので注意ください。
  • 雇用保険:留学生は「昼間学生」に該当するので、雇用保険の加入対象外となります。
  • 社会保険(健康保険、厚生年金保険):正社員の勤務時間と勤務日数によって異なります。社会保険へ加入する条件としては正社員の勤務時間、および勤務日数の4分の3以上出勤することです。

所得税については、留学生も納税の義務があります。

1年以上滞在する見込みがない場合、非居住者とされ、国内源泉徴所得20.42%で徴収されます。

1年以上滞在する見込みする方は、「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて給料を支払う時に源泉徴収を行うので、留学生でも年末調整を行う必要があります。

租税条約ある国の留学生なら免税になるので、免税の枠と条件を確認してください。

ただし、日本語学校の留学生が租税条約の対象外とされる場合がほとんどなのでご注意ください。

くわしくはこちらの記事:外国人の社会保険のまとめ

福利厚生も適用

労働基準法は留学生にも適用するため、一定時間を働くと休憩を付与しなければなりません。1日6時間以上8時間以下の勤務する場合は最低45分、1日8時間以上働く場合は、最低1時間の休憩が必要です。

有給休暇の付与も法律で決まっています。半年以上勤務して出勤率が所定出勤日数の8割を超えた場合、有給休暇がつきます。週の出勤日数によって付与する休暇日数が異なるので確認しましょう。

まとめ

日本に滞在する留学生の数は年々増えています。

そのため、外国人留学生を雇用する機会も増えました。同時に、留学生を「不法就労」させないための注意も必要になっています。

まずは、留学生が就労可能かどうか、学校に在籍しているかの確認が必要となります。

無事に採用になった後は「外国人雇用状況の届出」の提出や、就労時間の管理なども必要となるので忘れずに実施しましょう。

これらがきちんとできていないと、事業主が「不法就労助長罪」となり罰が科される可能性があります。

そのほか、外国人留学生にも労働基準法や課税などは日本の法律が適応されます。

外国人雇用の間口が広がる中で、これらは特に注意が必要です。

「知らなかった」だけでも犯罪になる可能性があるので1つひとつ確認しましょう。

くわしくはこちらの記事:不法就労助長罪とは?知らなかったとしても処罰対象!防ぐ対策を徹底解説

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