溶接職種での外国人雇用技能実習生受入れ~令和3年4月以降の法改正編~

2024/05/16

今回は令和2年7月31日に厚生労働省より、金属アーク溶接等作業で発生する「溶接ヒューム」へのばく露による労働者の健康障害防止措置を規定するために改正された特定化学物質障害予防規則(以下「特化則」)に基づき、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等の告示について解説していきます。

引用:厚生労働省HP

屋内作業場で金属アーク溶接作業を実施

全体換気装置による換気等(特化則第38条の21第1項)

全体換気装置

出典:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」

溶接ヒュームの測定、その結果に基づく呼吸用保護具の使用及びフィットテストの実施等(特化則第38条の21第2項~第8項)

金属アーク説明

出典:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」

溶接ヒュームの濃度の測定等(測定等告示※第1条)

個人ばく露測定により、空気中の溶接ニュームの濃度を測定します。
溶接ヒューム濃度測定

(注)個人ばく露測定は、第1種作業環境測定士、作業環境測定機関などの、当該 測定について十分な知識・経験を有する者により実施。

換気装置の風量の増加その他の措置(特化則第38条の21第3項)

(1)溶接ニュームの脳測定の結果に応じ、換気装置の風量の増加その他必要な措置を講じます。

(次に該当する場合は除きます)
・溶接ヒュームの濃度がマンガンとして0.05mg/㎥を下回る場合
・同一事業場の類似の溶接作業場において、濃度測定の結果に応じて十分に措置内容 を検討し、
当該対象作業場においてその措置をあらかじめ実施している場合
※「その他必要な措置」には、次の措置が含まれます。
・溶接方法や母材、溶接材料等の変更による溶接ヒューム量の低減
・集じん装置による集じん
・移動式送風機による送風の実施

(2)(1)の措置を講じたときは、その効果を確認するため、再度、個人ばく露測定により空気中の溶接ヒュームの濃度を測定します。

(3)個人ばく露測定による溶接ヒュームの濃度の測定等を行ったときは、その都度、必要な事項を記録します(3年保存)。

呼吸用保護具の選択の方法(測定等告示第2条)

溶接ヒュームの濃度の測定の結果得られたマンガン濃度の最大の値(C)を使用し、以下の計算式により「要求防護係数」を算定します。
要求防護係数

「要求防護係数」を上回る「指定防護係数」を有する呼吸用保護具を、以下の一覧表から選択します。

指定防護係数一覧

フィットテストの方法(測定等告示第3条)

JIS T8150(呼吸用保護具の選択、使用および保守管理方法)に定める方法、またはこれと同等の方法により、呼吸用保護具の外側、内側それぞれの測定対象物質の濃度を測定し、以下の計算式により「フィットファクタ」を求めます。

フィットファクタ

※「フィットファクタ」が、以下の「要求フィットファクタ」を上回っているかどうかを確認します。

呼吸用保護具の種類要求フィットファクタ
全面形面体を有するもの500
半面形面体を有するもの100

※フィットテストの記録の方法
確認を受けた者の氏名、確認の日時、装着の良否、上記の確認を外部に委託して行った場合の受託者の名称を記録します。

出典:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」

掃除等の実施

金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、当該作業を行う屋内作業場の床等を、水洗等によって容易に掃除できる構造のものとし、水洗等粉じんの飛散しない方法によって、毎日1回以上掃除しなければなりません。
※「水洗等」には超高性能(HEPA)フィルター付き真空掃除機が含まれますが、粉じんの再飛散に注意する必要があります。

出典:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」

特定化学物質作業主任者の選任(特化則第27条、第28条)

「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから作業主任者を選任し、次の職務を行わせることが必要です。(令和4年3月31日まで経過措置あり)

  • 作業に従事する労働者が対象物に汚染され、吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
  • 全体換気装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置を1か月以内の期間ごとに点検すること
  • 保護具の使用状況を監視すること

出典:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」

特殊健康診断の実施等(特化則第39条~第42条)

溶接ヒュームを取り扱う作業に常時従事する労働者に対して、健康診断を行うことが必要です。

  • 金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者に対し、雇入れまたは当該業務への配置換えの際およびその後6月以内ごとに1回、定期に、規定の事項について健康診断を実施する(1次健診)。
  • 上記健康診断の結果、他覚症状が認められる者等で、医師が必要と認めるものに対し、規定の事項について健康診断を実施する(2次健診)。
  • 健康診断の結果を労働者に通知する。
  • 健康診断の結果(個人票)は、5年間の保存が必要。
  • 特定化学物質健康診断結果報告書(特化則様式第3号)を労働基準監督署長に提出する。
  • 健康診断の結果異常と診断された場合は、医師の意見を勘案し、必要に応じて労働者の健康を保持するために必要な措置を講じる。
溶接ヒュームの検診項目

出典:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」

その他必要な措置

溶接ヒュームを取り扱う作業に関し、次の措置を講じることが必要です。

安全衛生教育(安衛則第35条)

労働者を新たに雇い入れたときや、労働者の作業内容を変更したときは、労働者が従事する業務に関する安全または衛生のため必要な事項について教育を行う。

ぼろ等の処理(特化則第12条の2)

対象物に汚染されたぼろ(ウエス等)、紙くず等を、ふた付きの不浸透性容器に納めておく。

不浸透性の床の設置(特化則第21条)

作業場所の床は、不浸透性のもの(コンクリート、鉄板等)とする。

立入禁止措置(特化則第24条)

関係者以外の立入禁止と、その旨の表示を行う。

運搬貯蔵時の容器等の使用等(特化則第25条)

対象物を運搬、貯蔵する際は、堅固な容器等を使用し、貯蔵場所は一定の場所にし、関係者以外を立入禁止にする。

休憩室の設置(特化則第37条)

対象物を常時、製造・取り扱う作業に労働者を従事させるときは、作業場所以外の場所に休憩室を設ける。

洗浄設備の設置(特化則第38条)

以下の設備を設ける。
→洗眼、洗身またはうがいの設備
→更衣設備
→洗濯のための設備

喫煙または飲食の禁止(特化則第38条の2)

対象物を製造・取り扱う作業場での喫煙・飲食の禁止と、その旨の表示を行う。

有効な呼吸用保護具の備え付け等(特化則第43条、第45条)

必要な呼吸用保護具を作業場に備え付ける。

出典:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」

屋外作業場で金属アーク溶接等作業を実施

屋内作業場における全体換気装置による換気等 (特化則第38条の21第1項)

換気装置

出典:厚生労働省「屋外作業場等において金属アーク溶接等作業」

有効な呼吸用保護具の使用(特化則第38条の21第5項)

金属アーク溶接等作業に労働者を従事させるときは、当該労働者に有効な呼吸用保護具を使用させることが必要です。

出典:厚生労働省「屋外作業場等において金属アーク溶接等作業」

掃除等の実施(特化則第38条の21第9項)

上記屋内作業場で金属アーク溶接作業を実施と同様に実施

特定化学物質作業主任者の選任(特化則第27条、第28条)

上記屋内作業場で金属アーク溶接作業を実施と同様に実施

特定化学物質健康診断の実施等(特化則第39条~第42条)

上記屋内作業場で金属アーク溶接作業を実施と同様に実施

その他必要な措置

上記屋内作業場で金属アーク溶接作業を実施と同様に実施

出典:厚生労働省「屋外作業場等において金属アーク溶接等作業」

まとめ

今回は、新しく令和3年4月より施行された「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」に関して解説していきました。

溶接職種に限らず、外国人技能実習生が安心して実習できる環境の整備は技能実習を活用していくには、大切な基本となります。

溶接職種の外国人技能実習生受け入れに際して不安点や疑問が御座いましたら、お気軽にお問い合わせください。

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