特定技能外国人は転職できる?受け入れ企業が取るべき対応と手続き完全ガイド

2026/06/05

この記事でわかること

  • 特定技能外国人の転職要件
  • 企業が取るべき対応と手続き
  • 転職防止の事前対策

「雇用している特定技能外国人から突然『転職したい』と言われた」そんな経験をされた担当者の方は少なくありません。特定技能制度は技能実習制度と異なり、一定条件を満たせば、労働者が自由に転職できる仕組みになっています。 

この記事では、転職の申し出を受けたときに企業側が行うべき対応フロー、届出義務、引き止めに関するリスク、そして転職防止の事前対策について、まとめて解説します。 


育成就労・技能実習・特定技能 制度ごとの特徴比較

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育成就労・技能実習・特定技能 制度ごとの特徴比較

技能実習・特定技能・育成就労の3つの制度内容を重要な項目ごとに比較し解説いたします。

  • 各制度における対象業種での違い
  • 各制度での在留期限・発生する費用における違い
  • その他各制度での受入時の注意点の比較

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特定技能外国人の転職は「原則自由」

特定技能の転職の自由を認める法的根拠 

特定技能外国人の転職は、出入国管理及び難民認定法(入管法)および特定技能制度の運用方針によって認められています。技能実習制度では原則として転職が禁止されていましたが、特定技能制度はその反省を踏まえ、労働者の権利保護を重視した設計になっています。 

具体的には、特定技能外国人は「特定技能雇用契約」を締結していますが、この契約の解除(離職)は一般の労働者と同じく「任意退職」として認められます。つまり、特定技能外国人が転職を希望した場合、企業は原則としてこれを拒否することができません。 

転職できる範囲は「同一分野内・同一業務区分内」が原則

特定技能外国人の転職にて、最も重要な制約は「同一分野内・同一業務区分内」に限られるという点です。

分野が同じでも、業務区分が異なる場合は改めて該当区分の技能評価試験に合格する必要があります。例えば建設分野の「土木区分」で働いていた方が、同じ建設分野の「ライフライン・設備区分」に転職する場合でも、区分が変わる以上は再試験が必要です。

ただし、技能の共通性が認められる区分間では再受験が免除される場合もあります。例えば「工業製品製造業」分野において、機械金属加工区分と電気電子機器組立て区分の間では、一定の技能検定合格によって両区分での就労が認められるケースがあります。

転職の意思確認をした後は、「同じ分野か」だけでなく「同じ業務区分か、または共通性が認められる区分か」まで必ず確認するようにしてください。区分の詳細は出入国在留管理庁の特定技能総合支援サイトで確認できます。 

特定技能外国人「転職率」「離職理由」の実態

出入国在留管理庁の公表データ(2025年)によると、2021年1月から2024年末までに特定技能1号として入国または初回許可を受けた方のうち、転職経験(受け入れ機関の変更)がある方は全体の22.4%にのぼります。

つまり、特定技能外国人のおよそ4〜5人に1人が転職を経験していることになります。転職回数の内訳は1回が84.6%と大多数を占めていますが、2回以上の転職も全体の15%超にみられます。

また、分野別に見た際に農業(32.9%)、漁業(28.1%)、飲食料品製造業(27.1%)が他分野と比較し転職率が高い傾向にあります。

分野転職者の割合
全分野22.4%
介護20.3%
ビルクリーニング23.7%
工業製品製造19.6%
建設10.8%
造船・船舶工業16.8%
自動車整備15.0%
航空9.0%
宿泊17.9%
農業32.9%
漁業28.1%
飲食料品製造業27.1%
外食業22.2%

※データは令和3年〜令和6年にて資格取得を行なった特定技能外国人が対象
※参照データ:出入国在留管理庁「転籍制限期間の設定について」

また、登録支援機関として、3,000名以上の特定技能外国人の支援を行っている弊社ウィルオブ・ワークにて、特定技能外国人の退職理由を独自に集計・分析しました。この一次データから見えてくる退職理由の実態を紹介します。 

特筆すべきは、転職理由の1位・2位・3位がいずれも「転職(他社への移動)」であり、全退職者の約47%を占める点です。

技能実習時代は転職が原則禁止だったため、こうした数字は特定技能制度特有の傾向といえます。受け入れ企業としては、採用時の条件提示の正確さ、職場環境の整備、処遇の継続的な見直しが定着率向上の鍵となります。 

転職の申し出を受けた企業が取るべき対応フロー 

STEP 1:事実確認と意思確認 

まず、外国人労働者の転職の意思が「本意か否か」を確認します。言語の壁や誤解から転職を希望しているケースもあります。必要であれば通訳を介して丁寧に話し合い、懸念点の解消を試みることは問題ありません。ただし、脅迫・威圧・不利益を示唆するような引き止めは絶対に行ってはなりません

STEP 2:退職日・引き継ぎスケジュールの調整 

転職の意思が固い場合は、労働基準法上のルールに則り退職日を設定します。原則として、労働者は2週間前までに退職の意思を表示すれば退職できます。雇用契約書に別途定めがある場合はそれに従いますが、不当に長い予告期間の設定は無効となる場合があります。 この段階で業務の引き継ぎ事項、貸与物品の返却、社宅・寮の退去スケジュールなども合わせて調整します。 

STEP 3:出入国在留管理庁への届出(14日以内) 

特定技能外国人との雇用契約が終了した場合、受け入れ企業は「特定技能に関する各種届出」の提出義務があります。これは法律で定められた義務であり、届出を怠ると過料の対象となります。 

重要:届出の期限は「契約終了日から14日以内」です。期限を過ぎると行政指導・過料の対象となるだけでなく、今後の特定技能外国人の受け入れ審査に影響が出る可能性があります。 

提出が必要な届出書類(特定技能 退職 届出) 

企業側が提出する必要がある主な届出・必要書類は以下の通りです。 

書類名提出先期限
受入れ困難に係る届出書
(参考様式第3-6号) 
出入国在留管理庁事由発生から14日以内
特定技能外国人の受入れ状況に係る届出書 出入国在留管理庁 翌四半期初月末日まで 
登録支援機関への連絡
(支援計画中の場合) 
委託先の登録支援機関 速やかに 

届出は「e-Govポータル(電子申請)」または「管轄の地方出入国在留管理局・支局への書面提出」で行います。書類の記載方法でご不明な点がある場合は、登録支援機関に相談することをおすすめします。 

STEP 4:登録支援機関への連絡と支援終了手続き 

登録支援機関に支援を委託している場合は、速やかに退職の旨を連絡します。登録支援機関側でも外国人本人への「転職支援」(次の受け入れ企業探しの支援)や在留資格に関する案内を行う義務があるためです。 

また、登録支援機関が出入国在留管理庁への届出を代行している場合も多いため、どちらが届出を行うか事前に確認・連携しておくことが重要です。 

STEP 5:社会保険・住民票などの退職後手続き 

外国人労働者であっても、一般の労働者と同様に以下の手続きが必要です。 

  • 健康保険・厚生年金の資格喪失届(退職日翌日から5日以内に年金事務所へ) 
  • 雇用保険の資格喪失届(離職日翌日から10日以内にハローワークへ) 
  • 社宅・寮を提供していた場合は退去手続き 
  • 会社貸与物(制服・ICカード・スマートフォン等)の返却確認 

転職期間中の在留資格はどうなるか 

転職活動中の在留資格「特定活動(就労活動準備)」 

特定技能外国人が転職を希望する場合、前の職場を退職してから次の就職先が決まるまでの間も日本に在留する必要があります。この期間の在留資格として認められているのが「特定活動」です。 

この在留資格は、特定技能外国人が転職を前提として在留し求職活動を行うことを認めるもので、許可された期間は原則として4か月です。 

転職期間中の企業側の注意点 

企業にとって重要なのは、外国人が「特定活動」に変更した後も、その期間中に他社で不法就労させることがないよう注意することです。「特定活動(求職活動)」の在留資格では原則として就労が認められていないため、採用が内定した段階で在留資格変更許可申請を行う必要があります。 

注意点:転職先企業として「特定活動」中の外国人を採用する場合、在留資格変更許可申請が下りるまでは就労させることができません。申請中は「申請中」のスタンプ(資格外活動許可が記載された在留カード等)の有無を必ず確認してください。 

在留資格変更の流れ(転職後) 

転職が内定した後、新しい受け入れ企業(または外国人本人)が行う必要がある手続きは以下の通りです。 

  • 在留資格変更許可申請書の作成・提出(出入国在留管理庁) 
  • 新しい特定技能雇用契約書の添付 
  • 新受け入れ企業の受け入れ状況に関する書類の添付 
  • 許可後、新しい在留カードを受領・就労開始 

在留資格変更許可申請の審査には通常1〜3か月程度かかります。採用決定から就労開始までのスケジュールを余裕を持って計画することが必要です。 

注意:在留資格変更許可申請が下りるまでの期間(目安1〜3か月)は、たとえ転職先が決まっていても就労を開始することができません。この間、特定技能外国人には原則として収入が発生しないため、生活費の問題から申請を急いで書類に不備が出るケースや、やむを得ず申請前に就労してしまい不法就労となるケースも実務上では発生しています。

受け入れ企業(送り出す側)としてできる対応として、以下を検討してください。

  • 退職日と在留資格変更許可の見込み時期を逆算し、許可後すぐ就労できるよう退職日を調整する
  • 転職先企業に対して申請準備の早期着手を促す
  • 本人が申請中の生活費について事前に計画を立てられるよう、登録支援機関を通じて情報提供する

なお、転職先企業(新受入れ企業)が申請中の外国人を許可前に就労させた場合、不法就労助長罪として3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となります。転職を支援する立場として、新受入れ企業にもこのリスクを伝えておくことが適切です。

転職先企業が満たすべき要件

転職の申し出を受けた場合、送り出す側(旧受入れ企業)の手続きだけでなく、転職先となる新受入れ企業が要件を満たしていなければ、転職自体が実現しない点も把握しておく必要があります。外国人本人から「転職先が決まった」と報告を受けた際に、転職先が以下の要件を満たしているか確認・案内できると、本人の在留維持にも繋がります。

要件内容
対象分野への該当特定技能の受け入れが認められている16分野のいずれかに該当すること
協議会への加入雇用前に対象分野の協議会に加入していることが必要
支援計画の策定 特定技能1号の場合、入社後の支援計画を作成実施できる体制があること
雇用契約の適正報酬額・労働時間・休日等が日本人と同等以上であること
欠格事由に非該当過去5年以内の入管法違反・労働関係法令違反等がないこと

これらの要件が揃って初めて在留資格変更許可申請が受理されます。転職先が要件を満たしていない場合、申請が不許可となり、外国人本人が特定活動の在留期間(4か月)内に次の転職先を見つけ直す必要が生じるため、本人にとって大きなリスクになります。

不明点がある場合は、登録支援機関や行政書士に早めに相談することをおすすめします。

企業側のリスクと注意点

絶対にやってはいけない「引き止め行為」 

転職を希望する特定技能外国人に対して、企業が以下のような行為を行うと法的リスクが生じます。 

違反リスクがある行為該当する可能性がある法律・罰則 
パスポート・在留カードの取り上げ・保管 不法就労助長罪、強制労働(労働基準法第5条)
「辞めたら警察に通報する」などの脅迫強要罪(刑法第223条)
違約金・損害賠償を口実とした退職阻止 労働基準法第16条違反(賠償予定の禁止)
転職活動を妨げる(連絡先を隠す等)特定技能制度の適正管理義務違反 
退職を理由に不当な減給・懲戒処分労働契約法・労働基準法違反 

問題にならない対応 

一方で、以下のような対応は適切な企業行動として認められます。 

  • 転職理由を丁寧に確認し、改善できる点を提案すること 
  • 「もう少し待ってほしい」と相談し、合意の上で退職日を調整すること 
  • 転職後の在留資格手続きについて情報提供・サポートすること 
  • 次の採用計画について登録支援機関に相談すること 

特定技能外国人は日本の労働者として一般の労働者と同等の権利を持っています。「外国人だから」という理由で特別な制約を設けることはできません。 

届出義務違反のリスク 

企業が特定技能外国人の転職・退職後に出入国在留管理庁への届出を怠った場合、以下のリスクがあります。 

  • 30万円以下の過料(出入国管理及び難民認定法) 
  • 特定技能外国人の受け入れ停止・認定取り消しの可能性 
  • 次回の在留資格審査における審査の厳格化 

届出は手続きとして煩雑に感じる場合もありますが、登録支援機関に委託することで代行してもらえるケースが多いため、活用をおすすめします。 

転職防止の対策について

ここまで「転職を申し出られた後」の対応を解説してきましたが、企業にとってより重要なのは「転職を申し出られる前」に手を打つことです。出入国在留管理庁のデータでは特定技能外国人の転職経験率は22.4%にのぼり、弊社の独自調査でも退職理由の約47%が他社への転職でした。転職理由の上位を占める「給与・条件不一致」「職場環境不一致」は、いずれも受け入れ企業の取り組みで改善できる領域です。以下に、実務で効果が確認できている転職防止の具体的な対策を3つ紹介します。 

①採用時の条件・業務内容の正確な説明 

弊社独自調査で転職理由の第1位となった「給与・条件不一致(18.6%)」の多くは、入社前の説明と実態のギャップが原因です。特定技能外国人は技能実習生と異なり「転職できる」という事実を知っています。入社前に「聞いていた条件と違う」と感じた瞬間から転職の選択肢が浮かびやすいため、採用段階で正確な情報を伝えることが定着への第一歩となります。 

具体的な取り組み例: 

  • 雇用契約書・労働条件通知書を母国語(ベトナム語・インドネシア語等)に翻訳して事前交付する 
  • 職場見学・事前就労体験(トライアル雇用)を実施し、業務内容・環境を実際に確認してもらう 
  • 残業・休日・宿舎環境・食事事情などの生活面の実態も入社前に明示する 
  • 面接・説明会に通訳を同席させ、理解度を確認しながら進める 

②入社後の定期的なコミュニケーションと早期不満の察知 

転職理由の第2位「家族・本人都合(14.9%)」や第3位「職場環境不一致(13.5%)」は、問題が顕在化するまで企業側が気づきにくい類型です。特定技能外国人は日本語でのコミュニケーションに制約があるため、不満を言語化して上司に伝えることをためらいがちです。定期的なフォロー面談の仕組みを作ることで、問題を転職の申し出として表面化する前の段階でキャッチできます。 

具体的な取り組み例: 

  • 入社1か月・3か月・6か月のタイミングで通訳付きの定期面談を実施する
  • 多言語対応のアンケートを定期的に実施し、回答を義務化する 
  • 日本人スタッフとのペアワーク・メンター制度を設け、日常の小さな不満を拾い上げる 
  • 登録支援機関の相談窓口(24時間対応)を周知し、本人が直接相談できるルートを確保する 

③外国人が働きやすい職場環境の整備

退職理由の第3位「職場環境不一致(13.5%)」には、「寒暑や重労働」「通勤の不便さ」といった物理的な環境だけでなく、「作業指示の意味がわからない」「困ったときに誰に聞けばいいかわからない」という情報環境・コミュニケーション環境の問題が含まれます。

外国人社員は日本語での意思疎通に制約があるため、日本人社員にとっては当たり前の職場環境が「働きにくさ」として蓄積し、転職の引き金になるケースが少なくありません。入社前の説明と実態が合っていても、日々の業務の中で「自分はここで長く働けるのか」という不安が生まれると転職意向は高まります。職場環境の整備は、採用時のミスマッチ防止と並ぶ定着施策の柱です。

具体的な取り組み例:

  • 社内ルール・作業指示書・手順書の母国語訳を添付する
  • 更衣室・休憩室・食堂など生活インフラに関するルールや使い方も多言語で案内する
  • 宗教的な食事制限や祈祷スペースの確保など、文化的背景への配慮を職場ルールに組み込む

弊社ウィルオブワークでは、派遣現場での作業改善に取り組んでいます。以下に実際の外国人派遣現場での取り組みとなります。ぜひ現場担当者様は参考にしてください。

よくある質問 

Q1:転職理由を確認することはできますか? 

問題ありません。転職理由を確認し、改善できる点を提案するのは適切な企業対応です。ただし、その際に「辞めさせない」という圧力をかけることは避けてください。 

Q2:次の受け入れ先企業を紹介してもいいですか? 

外国人本人が希望する場合は、次の受け入れ先の情報提供を行うことが可能です。また、登録支援機関が転職支援を行っているケースも多く、積極的に活用することが本人の在留維持にも繋がります。 

Q3:退職後に連絡が取れなくなった場合はどうすればいいですか? 

在留管理上の観点からも、退職時に次の連絡先(次の勤務先・住所等)を確認しておくことをおすすめします。連絡が取れない場合でも、出入国在留管理庁への届出義務(契約終了から14日以内)は企業側に発生するため、期限内に届出を行ってください。 

Q4:特定技能外国人が退職後に不法残留した場合、企業に責任はありますか? 

退職後の在留状況の管理は原則として外国人本人の責任です。ただし、企業が不法就労を知りながら黙認していた場合は「不法就労助長罪」に問われるリスクがあります。退職時の適切な手続き(届出・在留資格変更案内)を行っておくことが企業側のリスク管理になります。 

Q5:転職した後、次の特定技能外国人を採用するにはどうすればいいですか? 

特定技能外国人の採用には、求人票の作成・在留資格の確認・雇用契約書の締結・支援計画の策定など多くのステップが必要です。ウィルオブ・ワークでは、特定技能外国人の新規採用支援から在留資格申請のサポート、入社後の支援計画管理まで一貫して対応しています。お気軽にご相談ください。 

まとめ

特定技能外国人の転職は「原則自由」であり、企業側は強制的に引き止めることができません。一方で、退職後の届出(14日以内)、在留資格変更への対応、登録支援機関との連携など、企業側が確実に行うべき手続きが存在します。 特に届出を怠った場合は過料や今後の受け入れ審査への影響が生じるリスクがあるため、手続きのフローをあらかじめ把握しておきましょう。 

また、今後最も重要なのは「事前の転職防止対策」です。特定技能外国人だけでなく、2027年4月からは育成就労でも、一定条件を満たせば転職が可能になり、より条件のいい会社への外国人労働者の集中は加速します。外国人が働きやすい職場環境の構築、給与・待遇面の見直しを行うことで、外国人に選ばれる職場作りを目指していきましょう。


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