【2026年最新】特定技能「工業製品製造業」の業務区分・受け入れ要件を解説
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2026/07/24
この記事でわかること
- 特定技能 工場製品製造業の概要(受け入れ業種・要件等)について
- 特定技能 工場製品製造業の受け入れステップと注意点について
- 特定技能 工場製品製造業の受け入れ成功事例について
TOPICS
- 1 特定技能「製造業(工業製品製造業)」とは?基本を整理
- 2 特定技能「製造業」への対応が進まない要因
- 3 17の業務区分の内容を確認する
- 4 特定技能「製造業」でよくある誤解
- 5 業種別・雇用形態別に見る「特定技能 製造業」の対象整理
- 6 特定技能「製造業」の候補者はどこにいるのか
- 7 受け入れ企業が満たすべき要件とJAIM加入の実務
- 8 特定技能「製造業」とほかの外国人材受け入れ制度の位置づけ
- 9 特定技能1号・2号の取得要件と評価試験
- 10 受け入れ準備の実践フロー
- 11 受け入れ後の運用で気をつけたいこと
- 12 特定技能「製造業」の受け入れ事例
- 13 特定技能「製造業」に関わる相談先・情報源
- 14 特定技能「製造業」における多能工化と技能承継の視点
- 15 経営層に説明する採用効果とコストの伝え方
- 16 特定技能「製造業」に関する用語の整理
- 17 特定技能「製造業」に関するよくある質問
- 18 まとめ
特定技能「製造業(工業製品製造業)」とは?基本を整理
工場の人手不足に対応する選択肢として、特定技能という在留資格が広く使われるようになりました。製造業の現場では「工業製品製造業」という分野名で運用されており、機械金属加工や電気電子機器組立てをはじめとした幅広い業務が対象になっています。受け入れを検討するなら、まず制度の骨格を押さえておく必要があります。
旧3分野統合の背景と名称変更
以前は「素形材産業」「産業機械製造業」「電気電子情報関連産業」という3つの分野に分かれていましたが、現在はこれらが統合され、工業製品製造業という一つの分野として運用されています。
分野が一本化されたことで、複数の業務を兼務する工場でも一つの枠組みで人材を受け入れやすくなりました。統合の詳しい経緯や適用開始のタイミングは制度改正のたびに更新されるため、最新の内容は経済産業省や出入国在留管理庁の公式ページで確認してください。
技能実習との違い
技能実習は人材育成を目的とした制度で、原則として一定期間で帰国することが前提になっています。
一方の特定技能は、人手不足が深刻な産業分野で働ける人材を確保するための制度で、一定の技能水準を満たせば就労を継続できます。技能実習2号を良好に修了した人材は、試験を受けずに特定技能1号へ移行できるルートが用意されており、技能実習からの移行を軸に受け入れ体制を組む工場も少なくありません。
両制度の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 人材育成(国際協力) | 人手不足分野の人材確保 |
| 在留期間の考え方 | 実習の段階に応じて区分される | 原則通算5年が上限(出入国在留管理庁) |
| 家族の帯同 | 認められない | 認められない |
| 就労終了後 | 帰国が前提 | 要件を満たせば特定技能2号へ移行し継続可能 |
技能実習と特定技能1号はどちらも長期の在留を前提にしていない点は共通していますが、技能実習は育成を終えた時点で帰国が前提になるのに対し、特定技能は要件を満たすことで2号への移行という継続の道が用意されている点が大きな違いです。
実際に、技能実習生と特定技能外国人をあわせて50名前後の規模で受け入れ、監理団体や登録支援機関との関係整理まで一括で進めた製造業の企業もあります。
製造業における人手不足への向き合い方
経済産業省がまとめるものづくり白書や厚生労働省の雇用動向調査では、製造業における人手不足の実態が継続的に報告されています。
具体的な数値は年によって変動するため、自社の状況を判断する際は最新版の白書や調査結果を確認したうえで、特定技能がその解決策として合うかどうかを見極める必要があります。人手不足の背景には現場の高齢化や採用競争の激化など複数の要因が絡んでいるため、特定技能だけで解決できるとは限らない点も踏まえて検討を進めることが大切です。
受け入れの規模感
出入国在留管理庁は、工業製品製造業分野における特定技能1号の受入れ見込数の上限を199,500人(令和11年3月末まで)と示しています。
上限の規模から見ても、この分野は特定技能全体の中でも受け入れ枠が大きい分野の一つです。自社の採用計画がこの枠の中でどのくらいの位置づけになるのかを把握しておくと、経営層への説明でも説得力が増します。
特定技能「製造業」への対応が進まない要因
制度を知っていても、実際に受け入れまで進めない工場は少なくありません。現場でよく聞かれる要因を整理します。
業務区分が細かく分かれている
特定技能1号では17の業務区分が設けられており(出入国在留管理庁)、機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理をはじめ多岐にわたります。
自社の工場がどの区分に当てはまるのか、複数の区分にまたがる場合はどう判断するのか、担当者が迷いやすいポイントです。区分の判断を誤ると申請の差し戻しにつながるため、工程単位で丁寧に確認する作業が欠かせません。
取得ルートの選択に迷う
特定技能1号を取得するには、製造分野特定技能1号評価試験に合格する方法と、技能実習2号を良好に修了して試験を免除される方法があります(出入国在留管理庁)。
どちらのルートを軸に採用計画を立てるかによって、必要な準備期間や候補者の探し方が変わってきます。新規採用を急ぐ工場では試験ルート、既存の実習生を戦力化したい工場では移行ルートというように、自社の状況に合わせて優先順位を決める必要があります。
17の業務区分の内容を確認する
特定技能1号で受け入れ可能な業務区分は17に及びます(出入国在留管理庁)。区分ごとにどのような仕事内容を指すのか、概要を確認しておきましょう。
| 業務区分 | 内容 |
|---|---|
| 機械金属加工 | 金属を切削・プレス・鋳造・溶接するなどして機械部品や金属製品をつくる工程です。 |
| 電気電子機器組立て | 電気・電子機器やその部品を組み立てる工程です。 |
| 金属表面処理 | めっきや塗装など、金属製品の表面を加工する工程です。 |
| 紙器・段ボール箱製造 | 紙製の容器や梱包材をつくる工程です。 |
| コンクリート製品製造 | コンクリート二次製品などを製造する工程です。 |
| RPF製造 | 廃棄物を原料とした固形燃料をつくる工程です。 |
| 陶磁器製品製造 | 陶磁器製品を製造する工程です。 |
| 印刷・製本 | 印刷物の製造や書籍・冊子などの製本を行う工程です。 |
| 紡織製品製造 | 糸や織物などの紡織製品をつくる工程です。 |
| 縫製 | 衣料品などを縫製する工程です。 |
| 電線・ケーブル製造 | 電線やケーブルを製造する工程です。 |
| プレハブ住宅製品製造 | プレハブ住宅の部材や製品をつくる工程です。 |
| 家具製造 | 家具を製造する工程です。 |
| 定形・不定形耐火物製造 | 高温に耐える耐火物製品を製造する工程です。 |
| 生コンクリート製造 | 生コンクリートを製造する工程です。 |
| ゴム製品製造 | ゴム製品を製造する工程です。 |
| かばん製造 | かばんを製造する工程です。 |
これだけの区分があるため、輸送用機器部品や電子部品デバイス、金属加工といった業種の工場では、複数の区分が同時に関係することも珍しくありません。自社の製品や工程を思い浮かべながら、どの区分に近いかを当てはめてみてください。
特定技能「製造業」でよくある誤解
制度の理解が浅いまま受け入れを進めようとすると、思わぬところで手続きが止まってしまいます。よく見られる誤解を3つ紹介します。
誤解1 技能実習と同じ制度だと思われている
技能実習と特定技能は、目的も在留期間の考え方も異なる制度です。技能実習は人材育成を目的とした制度で期間終了後の帰国が前提になっているのに対し、特定技能は人手不足分野での就労継続を目的にしています。同じ外国人材というくくりで一括りに考えてしまうと、支援計画の内容や申請書類の準備で見落としが生まれやすくなります。
誤解2 どの工場でも同じ業務区分で受け入れられると思われている
特定技能1号には17の業務区分があり、工場の主力製品や工程によって当てはまる区分は変わります。他社の事例をそのまま自社に当てはめてしまうと、実際の業務内容と区分がずれてしまい、申請段階で見直しを求められることがあります。自社の工程を洗い出し、区分ごとに個別に確認する作業を省略しないことが大切です。
誤解3 JAIMへの加入は受け入れ後でよいと思われている
JAIMへの賛助会員入会は、受け入れ手続きに進むための前提条件です。受け入れが決まってから加入手続きに着手すると、採用スケジュール全体が後ろ倒しになります。採用計画を立てる初期段階から、JAIMへの加入を並行して進めておく必要があります。
業種別・雇用形態別に見る「特定技能 製造業」の対象整理
ここまでの制度理解を、自社の工場に当てはめて考えてみましょう。業種と雇用形態の組み合わせで整理すると、対応すべきことが具体的に見えてきます。
業種別の対象業務区分マッピング
出入国在留管理庁が示す17の業務区分は、工場の主力製品によって当てはまる区分が変わります。代表的な業種と該当しやすい区分の関係は、下の表のとおりです。
| 業種 | 該当しやすい業務区分 | 参考になる実績 |
|---|---|---|
| 輸送用機器部品 | 機械金属加工、電気電子機器組立て | 愛知県の輸送用機械器具製造業で正社員派遣により10名採用 |
| 電子部品デバイス | 電気電子機器組立て | 千葉県の電子部品・デバイス製造業では特定技能により20名規模の採用が実現 |
| 金属加工 | 機械金属加工、金属表面処理 | 精密機器の板金加工を手がける企業で56名の外国人材が活躍している事例あり |
輸送用機器部品について
輸送用機器部品を手がける工場は、一つの製造ラインの中で機械金属加工と電気電子機器組立ての両方の工程が混在することが珍しくありません。特定技能で受け入れる場合は、どの工程が機械金属加工に該当し、どの工程が電気電子機器組立てに該当するかを工程単位で切り分けて確認する必要があります。教育面では、重量物の取り扱いや工程間の連携が多い分、安全教育に力点を置く工場が多くなります。
電子部品デバイスについて
電子部品デバイスを手がける工場は、電気電子機器組立ての区分に該当しやすい業種です。組立て工程が細分化されている工場ほど、どの範囲まで特定技能外国人に任せられるかの整理が重要になります。大型採用を前提にする場合は、教育体制や日本語でのコミュニケーション体制もあわせて準備しておく必要があります。教育面では、細かな精密作業の習熟に時間がかかりやすいため、工程ごとの習熟度を段階的に確認する仕組みが役立ちます。
金属加工について
金属加工を手がける工場は、機械金属加工や金属表面処理の区分に当てはまります。板金加工やプレス加工、表面処理など工程の種類が多いため、区分の判断に迷うケースが目立ちます。受け入れ規模が大きくなるほど、在留資格の管理や監理団体・登録支援機関との連携といった実務負担も比例して増えていく点は、後述する事例からも見えてきます。教育面では、加工の技能伝承に時間を要する工程が多いため、技能実習からの移行を軸にした育成計画と組み合わせる工場が少なくありません。
輸送用機器部品、電子部品デバイス、金属加工以外にも、食品製造業など幅広い業種で特定技能の活用が進んでいます。業種が異なっても、業務区分の該当判断とJAIMへの加入という基本の進め方は変わらないため、後述する事例やほかの業種の実績も判断の参考にしてください。
雇用形態別の受け入れ可否と実務ポイント
業種の整理と並んで、どの雇用形態で受け入れるかも早い段階で決めておくべき論点です。
正社員として直接雇用する形態は、制度上もっとも標準的な受け入れ方です。長期的な戦力化を前提にできるため、技能実習からの移行と組み合わせやすい形態でもあります。
パートやアルバイトとしての受け入れも制度上は可能ですが、特定技能外国人支援計画の対象になることに変わりはありません。雇用形態が変わっても支援や管理の手間が軽くなるわけではないため、フルタイムでの雇用を前提に採用計画を立てる工場が多いのはこの理由によります。
派遣形態については注意が必要です。特定技能制度は農業や漁業など一部の分野を除き、直接雇用を原則としています。工業製品製造業分野も直接雇用が前提になるため、派遣会社を通じて特定技能外国人を受け入れることはできません。人材派遣の活用に慣れている工場ほど、直接雇用への切り替えが必要になる点を早い段階で社内に共有しておく必要があります。
すでに技能実習生を受け入れている工場であれば、技能実習2号を良好に修了した人材を試験免除で特定技能1号へ移行させるルートが使えます。移行の場合は在留資格の変更手続きが必要になり、既存の監理団体や登録支援機関との関係整理も同時に発生します。この関係整理がどれだけの負担になるかは、後述する事例で具体的に紹介します。
区分の判断に迷うときの考え方
一つの工場の中でも、工程によって当てはまる業務区分が変わることは珍しくありません。判断に迷う場合は、まず主たる業務が製造ラインのどの工程を指すのかを洗い出し、その工程が機械金属加工なのか電気電子機器組立てなのか金属表面処理なのかを個別に切り分けることから始めます。関連業務がメインの業務に付随する形であれば同一区分として扱える場合もあるため、工程図や作業手順書を整理したうえで、JAIMや所管省庁の窓口に確認しながら進めると認識のズレを防げます。自己判断だけで進めてしまうと、申請段階で区分の見直しを求められ、採用スケジュールが大きく後ろ倒しになるおそれがあります。
特定技能「製造業」の候補者はどこにいるのか
業務区分と雇用形態の整理ができたら、次に考えるべきは候補者の探し方です。特定技能「製造業」の候補者は、大きく3つのルートに分けられます。
一つ目は、すでに国内で技能実習生として働いている人材からの移行です。技能実習2号を良好に修了していれば試験が免除されるため、自社で受け入れている技能実習生をそのまま特定技能へ移行させるのが最も準備期間の短いルートになります。
二つ目は、国内に在留している留学生や、他社で技能実習を終えた人材からの新規採用です。日本語能力や生活基盤がすでにある人材のため、入国後のサポート負担が比較的軽くなります。
三つ目は、海外在住の人材を製造分野特定技能評価試験の合格を経て採用するルートです。準備期間は長くなりますが、採用できる人数の幅が広がるため、大型採用を計画している工場に向いています。
どのルートを軸にするかによって、支援計画の内容や登録支援機関に依頼する業務の範囲も変わってきます。自社の採用人数と準備期間の見通しに応じて、複数のルートを組み合わせることも検討してみてください。技能実習からの移行を軸にした一つ目のルートでは、48名の技能実習生を対象に監理団体および登録支援機関を変更し、特定技能への移行を進めた例もあります。
受け入れ企業が満たすべき要件とJAIM加入の実務
制度を理解したうえで、実際に受け入れる際に何を準備すべきかを見ていきます。
受け入れ企業に求められる要件
出入国在留管理庁は、工業製品製造業分野の受け入れ企業に対して次のような要件を課しています。
| 要件の観点 | 内容 |
|---|---|
| 生産性向上・人材確保 | 生産性向上や国内における人材確保に向けた取り組みを行っていること |
| 実施法人への所属 | 特定技能外国人受入事業実施法人(JAIM)に所属していること |
| 産業分類 | 事業所が日本標準産業分類のうち、工業製品製造業分野に特有の基準で定める産業を行っていること |
| 協議会への協力 | 関係省庁等で構成される特定技能の協議会で決まった措置に協力すること |
| 行政対応への協力 | 経済産業省やその委託先が行う指導、報告の徴収、調査等に必要な協力を行うこと |
| 訓練・研修の実施 | 育成就労制度で従事した業務とは異なる業務に従事させる場合等には、必要に応じて訓練や研修を実施すること |
| 実務経験の証明 | 特定技能外国人から求めがあった場合、実務経験を証明する書面を交付すること |
生産性向上の取り組みや産業分類の該当確認だけでなく、協議会への協力や行政調査への対応まで含まれているため、受け入れたあとも継続的な関与が求められる制度になっています。受け入れて終わりではなく、運用しながら要件を満たし続ける体制を社内に作っておくことが前提になります。
JAIMへの加入手続き
工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる場合、JAIMへの賛助会員入会が必須です。加入していない事業者は、そもそも受け入れの手続きに進むことができません。手続きの詳細や必要な費用はJAIMの公式サイトで随時更新されるため、加入を検討する段階で最新の案内を確認しておくと、採用スケジュール全体の見通しを立てやすくなります。
特定技能「製造業」とほかの外国人材受け入れ制度の位置づけ
製造業の現場では、特定技能以外にもいくつかの在留資格が話題になります。それぞれの位置づけを整理しておくと、自社にどの制度が合うか判断しやすくなります。
| 制度 | 主な目的 | 対象になりやすい人材像 |
|---|---|---|
| 特定技能 | 人手不足分野での就労継続 | 現場の技能を持つ人材 |
| 技能実習 | 人材育成(国際協力) | 育成期間中の実習生 |
| 育成就労(今後導入が進む制度) | 技能実習制度に代わる人材育成・確保の仕組み | 育成期間を経て特定技能へ移行する人材 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 大学卒業等の学歴を要件とするホワイトカラー業務 | エンジニアや通訳など専門職 |
現場作業を担う人材を確保したい場合は特定技能や技能実習が中心になり、技術・人文知識・国際業務は現場作業には使えません。育成就労は技能実習制度に代わる仕組みとして導入が進められている段階のため、詳細は制度の進展にあわせて最新情報を確認してください。
特定技能1号・2号の取得要件と評価試験
特定技能1号の取得ルート
1号の取得には、製造分野特定技能1号評価試験に合格する方法と、技能実習2号を良好に修了して試験を免除される方法の二つがあります(出入国在留管理庁)。
| ルート | 対象になりやすい人材 | 準備の見通し |
|---|---|---|
| 試験ルート | 新規に海外や国内の候補者を採用する場合 | 評価試験と日本語能力の基準を満たす時期を見通して採用計画を立てる |
| 移行ルート | 既存の技能実習生を戦力化する場合 | 技能実習2号の修了時期に合わせて在留資格の変更手続きを進める |
新規に人材を採用する場合は試験ルート、既存の技能実習生を戦力化する場合は移行ルートという住み分けで検討する工場が多くなっています。どちらのルートも最終的には同じ特定技能1号にたどり着きますが、準備すべき期間や候補者の探し方はまったく異なります。
特定技能2号の取得要件
2号は機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理の3区分に限定されており、製造分野特定技能2号評価試験とビジネス・キャリア検定3級への合格、または技能検定1級の取得が求められます(出入国在留管理庁)。1号よりも対象区分が絞られているため、2号を見据えた育成計画を立てられるのは該当する3区分の工場に限られます。将来的に長期雇用や管理職候補としての育成を考えるなら、早い段階でこの3区分に人材を配置しておくという判断も一つの選択肢です。
在留期間と家族帯同の違い
特定技能1号は原則として通算5年が在留期間の上限となっており、家族の帯同は認められていません(出入国在留管理庁)。一方の特定技能2号は在留期間の上限が設けられておらず、更新を続ける限り在留でき、配偶者や子どもの帯同、いわゆる家族滞在の在留資格も認められています(出入国在留管理庁)。長期的に人材を定着させたい場合、2号への移行を見据えた育成計画を立てるかどうかが、採用戦略上の大きな分岐点になります。食品製造業の受け入れ企業では、在留期間の考え方を含めた特定技能制度の詳細を採用時にあらかじめ丁寧に説明したことが、受け入れ後の安心感につながった例もあります。
受け入れ準備の実践フロー
制度の要件を踏まえたうえで、実際の受け入れまでにどう動くかを整理します。
業務区分・産業分類の確認
自社の工場がどの業務区分に該当するかを工程単位で確認する作業から始めます。ここで区分の判断を誤ると、後続の申請がすべて手戻りになります。
JAIMへの加入
区分が固まったら、JAIMへの賛助会員入会を進めます。加入には一定の時間がかかるため、採用計画の初期段階から着手しておくと後工程が詰まりにくくなります。
採用ルートの選定
区分の確認とJAIMへの加入が済んだら、新規の試験ルートか技能実習からの移行ルートかという採用ルートの選定に入ります。試験ルートを選ぶ場合は、候補者が製造分野特定技能評価試験と日本語能力の基準をいつ満たせるかを見通したうえで採用のタイミングを設計します。移行ルートを選ぶ場合は、既存の技能実習生の技能実習2号修了時期に合わせて手続きのスケジュールを組む必要があります。
支援計画の策定と体制構築
採用ルートが決まったら特定技能外国人支援計画を策定し、日本語学習支援や生活支援の体制を整えます。この段階で、自社内で対応するのか登録支援機関に委託するのかを決めておくと、その後の体制構築がスムーズになります。初期教育と勤怠管理の効率化を並行して進め、現場での継続的なフォローアップにつなげたことで職場の安定化を実現した例もあります。
雇用契約・在留資格申請から就労開始まで
支援計画が固まったら雇用契約を締結し、在留資格関連の申請を経て就労開始に至ります。それぞれの工程は前後の工程と連動しており、JAIMへの加入が遅れれば申請全体のスケジュールも後ろ倒しになります。
社内体制づくりのポイント
工程が多岐にわたるため、社内で進行管理の担当者を一人に絞っておくと、工程間の連携が滞りにくくなります。製造現場のニーズを把握している工場長・製造部長と、書類や申請手続きに詳しい工場総務・生産管理部が連携する体制を組んでおくと、現場感覚と実務手続きの両方を欠かさずに進めやすくなります。
受け入れ後の運用で気をつけたいこと
受け入れが完了したあとも、特定技能制度では継続的な対応が求められます。
定期報告と行政対応への協力
受け入れ企業は、経済産業省やその委託先が行う指導、報告の徴収、資料の要求、現地調査などに必要な協力を行う義務を負っています。定期的な報告のタイミングや必要な資料は制度改正によって変わることがあるため、担当者を固定して継続的にウォッチできる体制を整えておくと安心です。
実務経験証明への対応
特定技能外国人から実務経験を証明する書面の交付を求められた場合、応じる義務があります。これは特定技能2号への移行や転職の際に必要になる書類のため、日頃から従事した業務内容や期間を記録として残しておくと、求められたときにスムーズに対応できます。
在留資格の更新管理
特定技能1号は原則通算5年が上限のため、在留期間の更新タイミングを逃さないよう管理する必要があります。更新を見据えて、特定技能2号への移行が可能な区分かどうかを早めに確認しておくと、5年の上限に近づいてから慌てることを避けられます。
日本語コミュニケーションと生活支援の体制づくり
コミュニケーション不足は品質や安全管理に影響しかねないため、受け入れ後も継続的な支援が欠かせません。食品製造業の受け入れ企業では、コミュニケーション面の課題を未然に防ぐ支援体制を整えたうえで、特定技能制度の詳細を説明しながら採用から入国後のサポートまで一貫して支援した例があります。また、初期教育と勤怠管理の効率化、現場での継続的なフォローアップによって職場の安定化につなげた例もあります。業種を問わず、初期教育と日々のフォローアップを仕組みとして持っておくことが定着の鍵になります。
特定技能「製造業」の受け入れ事例
実際に外国人材の受け入れを進めた工場の事例を紹介します。業種は金属加工と食品製造業ですが、業務区分の該当判断からJAIM加入、支援体制の構築まで共通して参考になる部分が多くあります。
監理団体の切り替えという法務対応を乗り越え、外国人材56名の活躍を実現した金属加工業の事例
精密機器の板金加工を専門とする、創業100年以上の歴史を持つ製造業の企業で、技能実習生と特定技能外国人の受け入れにあたって外国人材の採用・管理支援を活用した事例となります。
課題
外国人人材に関する手続きやトラブル対応をすべて自社で処理していたため、工数と業務負担が増加していました。加えて、監理団体を切り替えるという前例のない大規模プロジェクトに直面し、多岐にわたる法務対応が必要な状況でした。
対応策
48名の技能実習生と特定技能外国人を対象に、監理団体および登録支援機関の変更を実施しました。在留資格変更申請の手続き代行、送り出し機関との契約締結、既存監理団体との交渉まで、法務対応を含めて一括で進めています。
導入効果
- 定量面:56名の外国人材が現在も活躍しています
- 定性面:複雑な法務手続きのプロジェクトを完遂し、経営層が本業に集中できる体制になりました
特定技能外国人13名の採用で残業時間を削減し、供給の安定を実現した食品製造業の事例
農産物加工を手がける食品製造業の企業で、特定技能外国人の採用支援を活用した事例となります。
課題
人手不足による業務過多が続き、労働者の退職率も上昇していました。特定技能外国人の採用にあたっては、言語や文化の違いによる不安や、教育・管理面での懸念も抱えていました。
対応策
受け入れ準備や手続きの支援に加え、初期教育と勤怠管理の効率化、現場での継続的なフォローアップを行いました。
導入効果
- 定量面:特定技能外国人13名を採用し、残業時間を大幅に削減しました
- 定性面:人手不足が解消され、コロナ禍で需要が増加した時期にも供給が止まることなく、職場が安定しました
特定技能制度への理解不足を解消し、自社採用の基盤づくりにつなげた洋生菓子製造業の事例
チルドスイーツなどの洋生菓子を製造する食品製造業の企業で、特定技能外国人の採用支援を活用した事例となります。
課題
慢性的な労働力不足が続いており、コミュニケーション不足による品質低下や衛生管理への影響を懸念していました。直接雇用での外国人採用の経験がほとんどなく、特定技能制度への理解も十分ではありませんでした。
対応策
コミュニケーション面の課題を未然に防ぐ支援体制を整えたうえで、特定技能制度の詳細を説明し、採用から入国後のサポートまでを一貫して支援しました。
導入効果
- 定量面:特定技能外国人10名を採用しました
- 定性面:慢性的な労働力不足の問題が解消され、自社で採用を進められる基盤づくりが進みました
特定技能「製造業」に関わる相談先・情報源
制度改正が多い領域のため、社内に一次情報を確認できる窓口を複数持っておくと、方針がぶれにくくなります。
- 経済産業省:工業製品製造業分野の制度全体を所管しており、業務区分や協議会に関する最新の告示を確認できます。
- 出入国在留管理庁:特定技能全体の制度概要、在留期間、家族帯同の可否など、在留資格そのものに関する公式情報を確認できます。
- JAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構):賛助会員の加入手続きや、受け入れ企業に求められる実務対応について確認できます。
- 登録支援機関:支援計画の実務や日本語学習支援、生活支援の具体的な進め方について相談できます。
自社で判断がつかない場合は、これらの窓口に個別に確認するよりも、登録支援機関を通じてまとめて相談できる体制を作っておくと、確認作業の手間を減らせます。
特定技能「製造業」における多能工化と技能承継の視点
製造業の現場では、特定技能外国人を単に人手不足の穴埋めとして受け入れるだけでなく、多能工化や技能承継の担い手として育成する視点も重要になります。
金属加工のように技能の伝承に時間がかかる工程では、特定技能2号への移行を見据えて複数の工程を経験させ、将来的に技能実習生や新人の指導役を任せられる人材へ育てていく工場もあります。輸送用機器部品や電子部品デバイスの工場でも、複数の業務区分にまたがる工程を経験させることで、生産ラインの変動に対応できる人材層を厚くできます。
受け入れ時点では人手不足の解消が目的でも、数年先を見据えた育成計画を最初から組み込んでおくと、特定技能2号への移行判断もスムーズになります。実際に56名規模まで受け入れを拡大した金属加工業の企業もあり、規模が大きくなるほど育成計画を体系立てておく重要性が増します。
経営層に説明する採用効果とコストの伝え方
現場から特定技能の導入を提案する場合、経営層には制度の説明だけでなく費用対効果の見通しまで示す必要があります。
整理すべきコスト要素
特定技能を導入する際のコストは、大きく次のように分けられます。
| コストの種類 | 内容 |
|---|---|
| JAIM関連の対応コスト | 賛助会員入会の手続きや継続的な会員対応にかかる社内の工数 |
| 支援体制構築コスト | 特定技能外国人支援計画の策定、日本語学習支援、生活支援の体制づくり |
| 登録支援機関への委託費用 | 申請手続きや支援業務の一部または全部を委託する場合の費用 |
| その他の周辺コスト | 試験対策や書類の翻訳、社内教育など、受け入れに伴う細かな対応コスト |
費用の具体的な金額はJAIMや登録支援機関ごとに異なるため、複数の選択肢を比較したうえで経営層に提示することをおすすめします。金額を一つに絞って提示するより、幅を示したうえで判断材料を渡すほうが、経営層の意思決定を後押ししやすくなります。
効果を数字で示す
効果を示す際は定性的な説明だけでなく、実績のある数字を根拠にすると説得力が増します。製造・工場向けの人材サービスでは、外国籍人材の活用によって在籍人数が80名から150名に増員し、退職率も70%から30%へ改善した実績があります。自社の状況に近い実績を根拠として示せると、経営層にとっての判断材料になります。
受け入れ規模別に見る負担の違い
受け入れ規模が大きくなるほど、在留資格の管理や監理団体・登録支援機関との連携といった実務負担は増えていきます。
実際に、金属加工業の事例では48名から56名規模の受け入れで大規模な法務対応が必要になりました。一方、食品製造業の事例では10名から13名規模の受け入れでも人手不足の解消という効果が得られています。
規模が大きいほど対応コストは増えますが、JAIM加入や支援体制構築にかけた対応コストが人数分に分散されるため、一人あたりの負担としては軽くなっていく面もあります。自社が想定する受け入れ人数に近い規模の実績を参考にすると、現実的な見通しを立てやすくなります。
早めに動くことが採用競争力になる
出入国在留管理庁が示す工業製品製造業分野の受入れ見込数上限199,500人は、業界全体で共有される枠です。上限に近づくほど新規の受け入れが難しくなる可能性があるため、検討を先延ばしにするほど選択肢が狭まるリスクがあります。
経営層への提案では、コストや効果の説明とあわせて、早期に動くこと自体が採用競争力につながるという視点を添えると、意思決定を後押ししやすくなります。
決裁を得るための資料の作り方
経営層への提案では、制度の説明、対象業種と該当区分、必要な人数と採用スケジュール、コストの内訳、期待される効果を整理して示すと、判断材料が伝わりやすくなります。
現場で実際に起きている人手不足の深刻度や納期遅延のリスクなどを、数字や具体例とともに示せると、制度の説明だけでは動かない経営層の意思決定を後押ししやすくなります。
登録支援機関を選ぶ際の視点
自社の体制だけでは対応が難しい場合、登録支援機関への委託も選択肢になります。
選ぶ際には、工業製品製造業分野での対応実績があるか、監理団体からの切り替えなど複雑な法務対応まで対応できるか、多言語での生活支援に対応しているかといった観点を確認すると判断しやすくなります。委託する範囲を申請書類の作成だけにするか、入国後の生活支援まで含めて任せるかによって、費用感も変わってきます。自社で対応できる範囲とのバランスを見極めながら、委託する業務の範囲を決めることが大切です。
専門パートナーの活用も選択肢に
社内だけで受け入れ準備を進めるのが難しい場合は、外部の登録支援機関や人材サービスとの連携も検討に入れておくと安心です。
弊社ウィルオブ・ワークでは、外国人材の採用から監理団体の切り替えといった複雑な法務対応まで一括で支援するサービスを展開しております。
社内の担当者が本業に集中できる体制を作れる点はもちろん、東証プライム上場グループの一員として全国50拠点以上を展開し、2,800社以上の取引実績と約93万人の登録スタッフを抱えるという規模を背景に、業種ごとの実績に基づいた支援体制も整っています。
特定技能「製造業」に関する用語の整理
制度に関わる用語を整理しておきましょう。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| JAIM | 一般社団法人工業製品製造技能人材機構。工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる企業が加入を義務づけられている実施法人です。 |
| 特定技能外国人支援計画 | 受け入れ企業が策定する、日本語学習支援や生活支援などの内容をまとめた計画です。 |
| 登録支援機関 | 特定技能外国人支援計画の実施を受け入れ企業から委託される機関です。 |
| 育成就労制度 | 技能実習制度に代わる仕組みとして導入が進められている、人材育成と確保を目的とした制度です。 |
| 製造分野特定技能評価試験 | 特定技能1号・2号の取得に必要な、業務区分ごとの技能水準を確認する試験です。 |
これらの用語をあらかじめ社内で共有しておくと、受け入れ準備の打ち合わせや登録支援機関とのやり取りがスムーズになります。
特定技能「製造業」に関するよくある質問
受け入れを検討する際によく聞かれる質問をまとめました。
特定技能「工業製品製造業」と技能実習はどう違いますか
技能実習は人材育成を目的とした制度で、期間終了後は帰国することが前提です。特定技能は人手不足分野で就労を継続するための制度で、技能実習2号を良好に修了すれば試験を受けずに特定技能1号へ移行できます。
派遣社員として受け入れることはできますか
できません。特定技能制度は農業や漁業など一部の分野を除き直接雇用が原則で、工業製品製造業分野も派遣形態での受け入れは認められていません。
JAIMへの加入は本当に必須ですか
必須です。工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れようとする国内事業者は、JAIMへの賛助会員入会が必須と定められています。未加入のまま受け入れを進めることはできません。
特定技能2号にはどうすれば移行できますか
2号の対象は機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理の3区分に限られます。移行には製造分野特定技能2号評価試験とビジネス・キャリア検定3級への合格、または技能検定1級の取得が必要です。
受け入れ企業にはどのような要件がありますか
生産性向上や国内人材確保への取り組み、JAIMへの所属、日本標準産業分類上の該当確認、協議会への協力、行政調査への対応、訓練や研修の実施、実務経験証明書の交付など、複数の観点から要件が定められています。受け入れ前だけでなく、受け入れ後も継続的に対応が求められる内容が含まれます。
特定技能で受け入れられる人数に上限はありますか
出入国在留管理庁は、工業製品製造業分野における特定技能1号の受入れ見込数の上限を199,500人(令和11年3月末まで)と示しています。上限に達すると新規の受け入れが停止される可能性があるため、採用を検討している場合は早めに動き出すことをおすすめします。
特定技能1号の在留期間や家族の帯同はどうなっていますか
特定技能1号は原則通算5年が在留期間の上限で、家族の帯同は認められていません。特定技能2号に移行すれば、在留期間の上限がなくなり、配偶者や子どもの帯同も可能になります。
登録支援機関に委託すると何を任せられますか
在留資格の申請手続きや特定技能外国人支援計画の実施、生活支援、日本語学習支援などを委託できます。委託する範囲は登録支援機関ごとに異なるため、自社で対応できる範囲を先に整理したうえで、不足する部分を委託先に依頼するという考え方で選ぶと無駄がありません。
まとめ
特定技能「製造業(工業製品製造業)」は、業務区分ごとの該当判断とJAIMへの加入を起点に準備を進める制度です。自社の業種がどの区分に当てはまるか、そして正社員か技能実習からの移行かといった雇用形態の見通しを先に固めておくことで、受け入れまでの実務が滞りにくくなります。
輸送用機器部品の工場であれば機械金属加工と電気電子機器組立ての切り分け、電子部品デバイスの工場であれば電気電子機器組立ての習熟度管理、金属加工の工場であれば技能伝承を軸にした育成計画というように、業種ごとに力点を置くべき場所は変わります。受け入れ後もJAIMへの継続的な対応や在留資格の更新管理が欠かせないため、受け入れて終わりではなく運用し続ける前提で体制を組んでおくことが大切です。
受け入れを検討する際は、次の点を順番に確認しておくと準備の抜け漏れを防げます。
- 自社の工程がどの業務区分に当てはまるかを洗い出したか
- JAIMへの賛助会員入会の手続きに着手したか
- 試験ルートと技能実習からの移行ルート、どちらを軸にするかを決めたか
- 支援計画を自社内で対応するか登録支援機関に委託するかを決めたか
- 経営層への提案に使うコストと効果の材料をそろえたか
制度改正の影響を受けやすい領域でもあるため、経済産業省や出入国在留管理庁、JAIMの公式情報を都度確認しながら、自社に合った受け入れ体制を組み立ててください。

