「2024年問題」対策としての特定技能自動車運送業|免許取得・法的リスクと業種別の対応ポイントを解説
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2026/07/28
この記事でわかること
- 特定技能「自動車運送業」の基本
- 運送業ならではの採用ハードルとその対策
- 特定技能「自動車運送業」の具体的な受け入れフロー
TOPICS
- 1 「2024年問題」でドライバーが足りない今、外国人雇用という選択肢
- 2 特定技能「自動車運送業」の基本を押さえる
- 3 自社は対象になるか 業種別の判定ガイド
- 4 運送業ならではの高いハードル 外国人ドライバーの運転免許取得
- 5 見落とすと危険 運転業務特有の法的リスクと安全管理
- 6 受け入れ企業が満たすべき要件と協議会加入の実務
- 7 特定技能ドライバーの候補者はどこにいるのか
- 8 受け入れ準備の実践フロー
- 9 「2024年問題」を経営課題として説明する コストと効果の伝え方
- 10 特定技能「自動車運送業」に関する用語の整理
- 11 特定技能「自動車運送業」に関するよくある質問
- 12 まとめ:「2024年問題」への対応は、免許取得と法的リスクへの備えから始まる
「2024年問題」でドライバーが足りない今、外国人雇用という選択肢
運送業界では、制度の説明よりも先に向き合わなければならない現実があります。ドライバーが足りないという状態が、法規制によってさらに深刻化しているという現実です。
時間外労働の上限規制で何が変わったか
2024年4月から、トラック・バス・タクシーなど自動車運転の業務に従事する労働者にも時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。これにより、これまで長時間労働で輸送量を確保してきた運送会社ほど、同じ人数のドライバーで運べる荷物や乗客の量が実質的に減っています。
自動車運転の職業は以前から人手不足が続いている分野で、有効求人倍率は全職業平均を上回る水準で推移しています。採用を増やすだけでなく、限られた時間内に業務を終える体制づくりまで含めて対応が必要になっている点が、これまでの人手不足対策と質的に異なるところです。
それでも外国人雇用に踏み切れない理由
人手不足の深刻さは分かっていても、外国人ドライバーの採用に踏み切れない運送会社は少なくありません。理由は一つではなく、複数のハードルが重なっています。
工場や介護施設の採用では起きない、運転免許の取得という運送業特有の準備が必要になること。運転という業務の性質上、交通事故や不法就労といった法的リスクへの不安が他業種より大きいこと。そして、協議会加入や支援計画の策定といった実務負担がどの程度になるのか、社内に前例がなく見通しが立たないことです。この記事では、これらのハードルを一つずつ具体的に解きほぐしていきます。
2024年に新設された特定技能「自動車運送業」という選択肢
自動車運送業は、2024年3月に特定技能の対象分野へ新たに追加されました。介護や製造業など既存の分野に比べて運用の歴史が浅く、対応を終えている運送会社はまだ多くありません。裏を返せば、情報を整理して早めに動いた会社ほど、採用の選択肢を広く持てる段階にあるといえます。
特定技能「自動車運送業」の基本を押さえる
自社に当てはめて考える前に、まず制度の骨格を確認しておきます。
対象となる3つの業務区分
自動車運送業分野で受け入れが可能な業種は、トラック運送業、タクシー運送業、バス運送業の3つです。同じ運送業でも、必要な運転免許の種類や評価試験の内容は区分ごとに異なります。自社がどの区分に当てはまるかをまず確認したうえで、区分ごとの要件を個別に見ていく進め方が失敗しにくい流れです。
技能実習との違い
技能実習は人材育成を目的とした制度で、一定期間の実習を経て帰国することが前提になっています。一方の特定技能は、人手不足が深刻な分野で即戦力として働ける人材を確保するための制度です。両制度の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 人材育成(国際協力) | 人手不足分野の人材確保 |
| 在留期間の考え方 | 実習の段階に応じて区分される | 原則通算5年が上限(出入国在留管理庁) |
| 家族の帯同 | 認められない | 認められない(出入国在留管理庁) |
| 雇用形態 | 監理団体を通じた受け入れが中心 | 直接雇用が原則、派遣は不可(国土交通省) |
自動車運送業には技能実習の職種そのものがなかったため、これまで運送業で外国人材を受け入れてきた会社の多くは、留学生のアルバイトや身分系の在留資格を持つ人材が中心でした。特定技能の新設によって、初めて運送業向けに設計された制度で外国人ドライバーを直接雇用できるようになった点が、これまでとの大きな違いです。
受け入れの規模感
新しく加わった分野であるため、他の特定技能分野と比べて受け入れ人数の実績はまだ少ない段階です。年ごとの受入れ見込数の上限や実際の受け入れ人数は、出入国在留管理庁が公表する資料で随時更新されています。自社の採用計画を立てる際は、検討を始めた時点の最新の公表資料を確認しておくと、経営層への説明でも根拠を示しやすくなります。
自社は対象になるか 業種別の判定ガイド
制度の骨格が分かったら、自社の事業に当てはめて考えてみましょう。業種と雇用形態の組み合わせで整理すると、対応すべきことが具体的に見えてきます。
業種別の対象業務と必要な免許
トラック運送業、タクシー運送業、バス運送業では、従事できる業務の範囲も必要な免許も異なります。代表的な違いを整理すると、次のようになります。
| 業種 | 主な業務内容 | 必要な運転免許の考え方 |
|---|---|---|
| トラック運送業 | 貨物の運送、積み込み・積み下ろし、配送先での荷役作業 | 中型免許または大型免許(貨物の種類や車両により異なる) |
| タクシー運送業 | 旅客の運送 | 第二種免許(普通第二種免許等) |
| バス運送業 | 旅客の運送(路線バス・貸切バス等) | 第二種免許(中型第二種・大型第二種等、運行形態により異なる) |
免許の区分は車両の大きさや業務内容によって細かく分かれているため、上の表はあくまで大枠の整理です。実際の免許取得要件は所轄の運輸支局や公安委員会の情報で最新の内容を確認してください。
トラック運送業は、貨物の積み下ろしや配送先での荷役作業まで業務範囲に含まれる場合があるため、運転技能だけでなく現場作業への理解も採用時に確認しておく必要があります。タクシー運送業とバス運送業は旅客を乗せる業務であるため第二種免許の取得が前提になり、トラックに比べて免許取得までの準備期間が長くなりやすい点も踏まえて採用計画を立てる必要があります。
雇用形態の制約
業種の整理と並んで、どの雇用形態で受け入れるかも早い段階で押さえておくべき論点です。正社員としての直接雇用が、制度上もっとも標準的な受け入れ方になります。パートやアルバイトとしての受け入れも制度上は可能ですが、特定技能外国人支援計画の対象になることに変わりはなく、支援や管理の手間が軽くなるわけではないため、フルタイムでの雇用を前提に計画する運送会社が中心です。
派遣については注意が必要です。特定技能は農業や漁業など一部の分野を除いて直接雇用が原則で、自動車運送業も派遣での受け入れは認められていません。ドライバー不足の解消策として人材派遣を検討していた運送会社ほど、直接雇用への切り替えが必要になる点を早めに社内で共有しておく必要があります。
区分の判断に迷うときの考え方
トラックとタクシーの両方の事業を持つ会社や、路線バスと貸切バスを兼業している会社では、どの区分で申請すればよいか迷うことがあります。判断に迷う場合は、採用予定のドライバーが実際にどの業務に従事するのかを先に固め、その業務がどの区分に該当するかを個別に確認する順番で進めると認識のずれを防げます。自己判断だけで進めず、運輸支局や協議会の窓口に確認しながら進めることをおすすめします。
運送業ならではの高いハードル 外国人ドライバーの運転免許取得
ここからが、工場や介護施設の外国人材受け入れとは決定的に異なるところです。特定技能の他分野では、外国人本人の要件は技能評価試験と日本語能力が中心ですが、運送業ではこれに加えて「日本の運転免許を取得できるかどうか」という、受け入れ企業がコントロールしにくい要素が加わります。採用計画の成否を左右する最大の変数といっても過言ではありません。
3つの取得ルート
外国人が日本でドライバーとして働くには、業務区分に応じた日本の運転免許が必要です。取得の方法は主に3通りあります。
一つ目は、日本の自動車教習所に通って免許を取得する方法です。在留資格をすでに持つ人材であれば、日本人と同じ流れで教習を受けられます。二つ目は、母国で取得した運転免許証を日本の免許に切り替える方法です。国によって切替えの可否や必要な手続きが異なるため、対象者の出身国の制度をあわせて確認する必要があります。三つ目は、海外に居住する人材を採用し、来日後に免許を取得する方法です。この場合は、免許取得のための準備期間を「特定活動」という在留資格でカバーする仕組みが用意されています。
どのルートを選ぶかによって、候補者が就労を開始できるまでの期間が大きく変わります。母国の免許をそのまま切り替えられる人材であれば準備期間は短くなりますが、教習所に通って一から取得する必要がある人材であれば、その分だけ採用から就労開始までの期間が延びると考えておく必要があります。
自動車運送業分野特定技能1号評価試験
特定技能1号を取得するには、業務区分ごとに実施される評価試験に合格する必要があります。試験の実施団体や日程、出題範囲といった詳細は制度の運用開始からまだ日が浅く更新される可能性があるため、採用計画を立てる段階で国土交通省や出入国在留管理庁の公式情報で最新の内容を確認してください。
日本語能力要件
日本語能力については、日本語能力試験(JLPT)または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のいずれかで一定の水準を満たすことが求められます。
旅客を乗せるタクシーやバスの業務では、貨物輸送が中心のトラック業務よりも、乗客とのやり取りを想定した日本語力が実務上重要になります。道案内や運賃の説明といった日常的なやり取りに加えて、トラブル発生時に状況を説明できるかどうかも、旅客業務ならではの確認ポイントになります。
免許取得までの期間を採用スケジュールにどう組み込むか
免許取得は、採用計画の中でもっとも見積もりを誤りやすい工程です。教習所の予約状況や技能検定の受験タイミングによって、想定より数か月単位で就労開始が遅れることもあります。
候補者ごとに「母国免許の切替えで済むのか」「教習所に通う必要があるのか」を早い段階で見極め、免許取得ルート別に必要な期間を採用スケジュールに組み込んでおくことが、計画通りに就労を開始できるかどうかを左右します。免許取得の見通しが立たないまま在留資格の申請を進めてしまうと、就労開始の時期がずれ込み、現場の人員計画全体に影響が及ぶ点に注意が必要です。
見落とすと危険 運転業務特有の法的リスクと安全管理
運転業務には、工場や介護施設の受け入れでは想定しにくい法的リスクがともないます。外国人材だからという理由で特別なリスクが生じるわけではありませんが、確認や管理を怠ったときの結果が重くなりやすい業務であることは押さえておく必要があります。
不法就労助長罪と確認義務
在留資格の範囲を超えて外国人を働かせた場合、雇用主自身が不法就労助長罪に問われる可能性があります。この罪は、雇用主に不法就労をさせる意図がなかったとしても、在留カードの確認など就労の可否を確かめる義務を怠った過失があれば成立し得ます。
採用担当者だけでなく、配車や点呼を担当する現場の管理者にも、在留カードの有効期限や就労制限の内容を確認する習慣を徹底しておく必要があります。
交通事故が起きたときの使用者責任
外国人ドライバーが業務中に事故を起こした場合、雇用主が使用者としての責任を問われる可能性があります。この点は日本人ドライバーを雇用する場合と変わりませんが、運転技能や道路標識の理解に不安が残る段階で単独業務に就かせてしまうと、事故リスクが高まります。安全運転教育や添乗指導の体制を、既存の日本人ドライバーと同じ水準、あるいはそれ以上に整えておく必要があります。
旅客を乗せる業務ならではのコミュニケーションリスク
タクシーやバスのように旅客を乗せる業務では、運転技能だけでなく、緊急時に乗客へ状況を説明できるかどうかも安全管理の一部です。体調不良を訴える乗客への対応や、運行に遅れが出た際の説明など、とっさの日本語対応が求められる場面を想定した研修を用意しておくと、トラブルの深刻化を防ぎやすくなります。
在留資格・運転免許の更新管理を怠るリスク
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限です。更新のタイミングを見落として在留資格が切れてしまうと、その時点で就労を継続できなくなります。運転免許についても更新時期の管理が必要になる点は日本人ドライバーと同じですが、在留資格の更新と運転免許の更新という2つの期限を並行して管理する必要がある点は、外国人ドライバー特有の注意点です。社内での期限管理の仕組みをあらかじめ用意しておくことをおすすめします。
受け入れ企業が満たすべき要件と協議会加入の実務
外国人本人の要件と並んで、受け入れる運送会社側にも満たすべき要件があります。
受け入れ企業に求められる主な要件
受け入れ企業には、自動車運送事業を営んでいることに加えて、安全性に関する認証の取得状況や労働環境の整備状況が確認される場合があります。具体的な要件は制度の運用にあわせて更新されることがあるため、申請の直前ではなく採用を検討し始めた段階で最新の要件を確認しておくと、後から要件を満たしていないことが判明する事態を避けられます。
自動車運送業分野特定技能協議会への加入手続き
自動車運送業分野で外国人材を受け入れるには、自動車運送業分野特定技能協議会の構成員になる必要があります。加入の手続きには申請書類の準備や確認の時間がかかるため、採用計画の初期段階から並行して進めておくことをおすすめします。加入手続きの詳細な流れや必要書類は、協議会や国土交通省の公式情報で随時更新される内容を確認してください。
定期報告など受け入れ後の行政対応
特定技能外国人を受け入れる企業は、受け入れ状況について所管省庁への定期的な報告が求められます。報告のタイミングや内容を社内で把握しておかないと、対応漏れにつながるおそれがあります。協議会加入の手続きとあわせて、受け入れ後にどのような報告義務が発生するのかも、採用計画の段階で一度確認しておくと安心です。
登録支援機関を活用する場合のポイント
特定技能外国人の受け入れには、生活支援や日本語学習の機会の提供など、支援計画に基づいた対応が必要です。社内に対応できる体制がない場合は、登録支援機関に支援業務を委託する選択肢があります。運送業は勤務時間が不規則になりやすい業種のため、委託先を選ぶ際は、運送業の勤務実態を理解した支援ができるか、緊急時の連絡体制が整っているかを確認しておくと安心です。
特定技能ドライバーの候補者はどこにいるのか
制度を理解したら、実際にどこで候補者を探すかを考えます。
技能実習ルートが使えない理由と代わりの選択肢
自動車運送業には技能実習の職種がないため、技能実習からそのまま移行するルートは使えません。事務職や管理部門であれば技術・人文知識・国際業務といった在留資格が候補になりますが、これらは運転業務そのものへの従事を想定した在留資格ではなく、留学生の資格外活動許可も週28時間以内のアルバイトに限られるため運転業務にそのまま充てることは難しい場合が多くなります。
結果として、運送業で外国人ドライバーを直接雇用したい場合、実務上の選択肢は特定技能に絞られてくるのが現状です。他分野で技能実習を修了し、すでに日本での就労経験がある人材が、自動車運送業分野の評価試験に合格して転職してくるケースは今後増えていく可能性があります。
国内在留人材の新規採用
すでに日本国内に在留している留学生や、特定活動などの在留資格を持つ人材が、評価試験に合格して特定技能へ切り替えるルートです。日本での生活基盤がすでにある人材が対象になるため、来日後の生活支援にかかる負担は比較的軽くなる傾向があります。
海外からの試験採用ルート
海外に居住する人材が、現地または来日後に評価試験と日本語試験に合格し、免許を取得して就労を開始するルートです。免許取得までの準備期間を「特定活動」でカバーする必要があるため、来日から就労開始までの期間が国内人材より長くなる点を採用計画に織り込んでおく必要があります。
受け入れ準備の実践フロー
候補者の目星がついたら、受け入れに向けた実務を進めます。
自社が対象になるかどうかの確認から始めます。トラック、タクシー、バスのどの区分に該当するか、複数区分にまたがる場合はどう整理するかを、この段階で固めておきます。
並行して、自動車運送業分野特定技能協議会への加入手続きを進めます。加入には一定の時間がかかるため、採用計画の初期段階から着手しておくことで、後工程の遅れを防げます。
採用ルートの選定では、国内在留人材の新規採用か、海外からの試験採用かを、候補者の探しやすさと受け入れ体制の準備状況を踏まえて決めます。
運転免許の取得支援と支援計画の策定は、候補者が免許未取得の場合に特に重要になります。教習所の手配や特定活動での在留期間の確保など、免許取得までのスケジュールを具体的に組み立てます。
最後に、雇用契約の締結、在留資格の申請、就労開始という流れに進みます。申請から許可までの期間は時期によって変動するため、余裕を持ったスケジュールを組んでおくことをおすすめします。
「2024年問題」を経営課題として説明する コストと効果の伝え方
現場での準備が整ってきたら、経営層に採用の必要性を説明し、予算の承認を得る段階に進みます。ここでの説明は単なる人員補充の提案ではなく、時間外労働の上限規制という法規制に対応するための経営判断として位置づけると伝わりやすくなります。
整理すべきコスト要素
特定技能ドライバーの受け入れにかかる費用は、複数の費目に分かれます。
| 費目 | 主な内容 |
|---|---|
| 協議会関連費用 | 自動車運送業分野特定技能協議会への加入にかかる費用 |
| 運転免許取得支援費用 | 教習所費用、特定活動期間中の生活支援など |
| 登録支援機関委託費用 | 支援計画の実施を委託する場合の月額費用 |
| その他周辺費用 | 日本語学習支援、住居手配、渡航費用など |
費目ごとの具体的な金額は、教習所や登録支援機関によって幅があるため、複数の見積もりを比較したうえで経営層に提示することをおすすめします。
効果を数字で示す
外国人ドライバーの採用効果を経営層に説明する際は、採用できた人数だけでなく、稼働率や欠員による配送遅延の日数、既存ドライバーの時間外労働時間の変化など、自社が把握できる指標とあわせて示すと説得力が増します。採用前の状態を数値で記録しておき、受け入れ後にどう変化したかを比較できるようにしておくことをおすすめします。
早めに動くことが採用競争力になる
自動車運送業は特定技能の中でも新しく設けられた分野で、対応を終えている運送会社はまだ多くありません。制度への対応が遅れるほど、他社との人材獲得競争が本格化してから動き出すことになります。協議会加入や社内体制の整備、そして免許取得の支援体制づくりには時間がかかるため、採用を検討し始めた段階で早めに着手しておくことが、結果的に採用競争力につながります。
決裁を得るための資料の作り方
経営層への提案資料には、制度の概要、自社が対象になる根拠、想定される費用、そして2024年問題によって放置した場合に見込まれる影響をあわせて盛り込むと判断材料になります。特に、時間外労働の上限規制によって既存の人員体制だけでは輸送量を維持できなくなる可能性がある点は、数値のイメージとあわせて具体的に示すことをおすすめします。運転免許取得や法的リスクへの備えにどの程度の準備期間とコストがかかるのかも、あわせて盛り込んでおくと、現場感のある提案になります。
登録支援機関を選ぶ際の視点
登録支援機関を選ぶ際は、運送業の勤務実態への理解に加えて、免許取得支援や協議会加入の実務経験があるかどうかを確認しておくと、受け入れ後の運用がスムーズになります。委託範囲や費用体系が会社によって異なるため、複数社を比較して自社の体制に合う先を選ぶことをおすすめします。
専門パートナーの活用も選択肢に
自社だけで制度対応から採用、受け入れ後の支援までを完結させるのが難しい場合は、外国人材の受け入れ支援を専門に行う会社に相談する方法もあります。弊社ウィルオブ・ワークは東証プライム上場グループの一員として、全国50拠点以上、2,800社以上の取引実績を持ち、登録スタッフ約93万人の基盤を活かした人材サービスを展開しています。
外国人雇用の分野でも、特定技能外国人の受け入れに関するサポートを行っています。自動車運送業に特化した実績を今後蓄積していく段階の会社も含めて、制度対応に不安がある場合は早い段階で相談先の候補に入れておくとよいでしょう。
特定技能「自動車運送業」に関する用語の整理
ここまでに登場した用語の意味を、あらためて整理しておきます。
- 自動車運送業分野特定技能協議会:自動車運送業分野で特定技能外国人を受け入れる事業者が構成員になることを求められる協議会です。加入は受け入れの前提条件になります。
- 支援計画:特定技能外国人が安定して就労・生活できるよう、受け入れ企業が実施する支援内容をまとめた計画です。日本語学習の機会の提供や生活オリエンテーションなどが含まれます。
- 登録支援機関:受け入れ企業に代わって支援計画の実施を担う、出入国在留管理庁に登録された機関です。
- 特定活動:外国人ドライバーが来日後に運転免許を取得するための準備期間などに用いられる在留資格です。
- 評価試験:特定技能1号を取得するために合格が必要な、業務区分ごとの技能水準を確認する試験です。
- 不法就労助長罪:在留資格の範囲を超えて外国人を働かせた雇用主に問われうる罪です。確認義務を怠った過失があれば成立し得ます。
特定技能「自動車運送業」に関するよくある質問
自動車運送業での外国人雇用を検討する中でよく寄せられる質問をまとめました。
特定技能「自動車運送業」とはどのような制度ですか
2024年に特定技能の対象分野に加わった制度で、トラック運送業、タクシー運送業、バス運送業の3区分で外国人ドライバーを直接雇用できます(国土交通省)。運転免許の取得や評価試験の合格など、外国人本人が満たすべき要件があります。
派遣社員として外国人ドライバーを受け入れることはできますか
できません。特定技能は一部の分野を除いて直接雇用が原則で、自動車運送業も派遣での受け入れは認められていません(国土交通省)。
自動車運送業分野特定技能協議会への加入は必須ですか
自動車運送業分野で外国人材を受け入れる事業者は、協議会の構成員になることが要件の一つとされています(国土交通省)。採用計画の初期段階から加入手続きを進めておくことをおすすめします。
外国人ドライバーは日本の運転免許をどう取得しますか
日本の教習所に通って取得する方法、母国の免許を切り替える方法、来日後に特定活動の在留資格で免許取得の準備期間を確保する方法の3通りがあります(出入国在留管理庁)。
技能実習からの移行と新規採用はどちらを選ぶべきですか
自動車運送業には技能実習の職種がないため、技能実習からそのまま移行するルートはありません。国内在留人材の新規採用か、海外からの試験採用かを、候補者の探しやすさと受け入れ体制の準備状況にあわせて選ぶことになります。
受け入れ企業にはどのような要件がありますか
自動車運送事業を営んでいることに加えて、安全性に関する認証の取得状況や労働環境の整備状況が確認される場合があります(国土交通省)。具体的な要件は最新の公式情報で確認してください。
特定技能2号への移行はできますか
現時点で自動車運送業分野が対象としているのは特定技能1号のみで、2号は設定されていません(出入国在留管理庁)。在留期間は原則通算5年が上限です。
運転免許取得までの期間はどれくらい見ておくべきですか
母国の運転免許を切り替えられる場合は準備期間を短くできますが、教習所に通って一から取得する場合は数か月単位の期間を見込んでおく必要があります。候補者ごとに取得ルートを早めに見極め、採用スケジュールに反映しておくことをおすすめします。
まとめ:「2024年問題」への対応は、免許取得と法的リスクへの備えから始まる
自動車運送業での外国人雇用は、時間外労働の上限規制という法規制への対応として位置づけられる取り組みです。工場や介護施設の受け入れと違い、運転免許の取得という運送業特有のハードルと、交通事故や不法就労といった法的リスクへの備えが、受け入れの成否を左右します。
最後に、押さえておきたいポイントを振り返ります。
- 自社がトラック、タクシー、バスのどの区分に該当するかを最初に確認する
- 運転免許の取得方法と評価試験の内容を業務区分ごとに把握し、採用スケジュールに組み込む
- 不法就労助長罪や交通事故時の使用者責任など、運転業務特有の法的リスクに備える
- 協議会への加入は採用計画の初期段階から並行して進める
- 経営層への説明では、コストとあわせて2024年問題への対応効果も示す
制度そのものが新しく、社内に前例がない運送会社がほとんどです。免許取得とリスク管理という運送業ならではの壁を一つずつ確認しながら進めれば、対応が手探りの今だからこそ、採用競争で先に動く選択肢になります。
