【企業向け】二重派遣とは?禁止の理由や罰則、予防方法を徹底解説!

2024/05/09

企業が従業員を雇用する際に、雇用形態の1つに「派遣」というものがあります。派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結び、その派遣会社から派遣先の企業に出社します。

この派遣労働の中で違法になってしまうのが「二重派遣」という行為です。今回は派遣社員と関りのある企業様向けに、二重派遣について詳しく解説していきます。

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二重派遣とは?

二重派遣というのは、派遣先の会社が派遣社員をさらに別の企業に派遣する行為です。通常は、派遣会社に雇用されている人材なので、派遣会社がどこの企業に派遣するのかを決めなければいけません。しかし、労働力不足などを理由に、派遣先の企業がさらに派遣をしてしまうことがあります。これは「二重派遣」と呼ばれ、違法行為になります。

偽装請負

二重派遣をごまかす方法として、暗に行われているケースが「偽装請負」という方法です。
偽装請負とは、契約上は請負契約を締結しているものの、実態としては派遣を行っている、という状態を指します。

例えば、派遣会社と契約し派遣社員を受け入れているA社が、別のB社と請負契約を結んだとします。このとき、A社は請負った業務の遂行のためにB社に派遣社員を送るケースがあります。派遣社員の指揮命令はA社が行うべきなのですが、B社が指揮命令を行ってしまうケースがあります。

これは実態としては二重派遣となるので、違法になります。意図的に行われる場合もあれば、無意識に行われる場合もあるので、注意が必要です。

二重派遣が禁止の理由

二重派遣を行うことは、法律で禁止されていますが、そこにはどんな理由があるのでしょうか?

労働条件が守られない可能性があるため

派遣契約を結ぶ際にはどんな労働条件で仕事をするのかが細かく契約されています。そのため、派遣先の企業がさらに別の企業に派遣を行うと、その労働条件が異なってしまう事があるのです。
適切な休憩時間を取れない、労働時間が契約書とは異なっている、などの点です。そういった事態を防ぐためにも、二重派遣は法律で禁止されているのです。

雇用の責任が曖昧になってしまうため

派遣雇用の契約を結んでいると、通常派遣先で派遣社員が怪我をした場合、契約を結んでいる派遣会社が責任を負うことになります。
しかし、派遣先の企業から別の企業に二重派遣をすると、二重派遣先で労働者が怪我をしてしまった場合に、どの企業が責任を取らなければいけないのかが曖昧になります。責任のなすりつけ合いを防ぐ意味でも、二重派遣は禁止されているのです。

派遣スタッフの収入が減少してしまうため

派遣労働者として派遣先企業に勤めると、仲介手数料が発生します。通常であれば、派遣会社と、登録された派遣先企業でのみの手数料発生ですが、さらにもう一社の派遣先企業が登場すると、ここでも仲介手数料が発生することに繋がります。

こうして仲介手数料が増えると、二重派遣されて労働をする労働者に支払われる賃金は、減少してしまう事が考えられるのです。そのため、二重派遣はしてはいけません。

二重派遣の罰則

二重派遣を行ってしまった場合には、「職業安定法」と「労働基準法」の2つの法律に抵触することになります。具体的に解説していきましょう。

職業安定法への抵触

1つ目の「職業安定法」への抵触についてです。職業安定法では「労働者供給事業は厚生労働大臣に認められた派遣・紹介事業者、あるいは労働組合などが無料で行うという許可をもらっている場合以外は禁止」と定められています。

つまり、派遣先の企業は人材派遣を行う権利を持っていないにも関わらず、さらに別の企業に人材派遣をしているということで、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられます。

労働基準法への抵触

2つ目の「労働基準法」への抵触についてです。労働基準法第6条「中間搾取の排除」では、「業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」というように規定されています。

つまり、派遣された企業が更に別の企業に人材派遣を行い、中間手数料を受け取ってしまうと、労働基準法違反に咎められます。1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられてしまいます。

罰則を受けるのはどの企業か?

このように、二重派遣を行ってしまうと2つの法律に抵触することが分かりました。その場合法律違反として罰則を受けるのは、派遣会社から人材を受け入れ、他社にさらに人材派遣を行った企業です。

法律で定められた懲役刑もしくは、罰金刑を受けることになります。さらには、二重派遣を行っていた事実は業界内で知られてしまうため、派遣会社との契約を結ぶことも困難になってくるでしょう。信用がどんどん下がってしまうのです。

二重派遣であることを知らずに受け入れていた場合は?

では、派遣社員を受け入れた企業が「二重派遣と知らされずに受け入れていた場合」はどうなるのでしょうか?この場合は、罰則の適用はありません。

いずれの法律に関しても「故意であること」という点が定められているため、二重派遣という実態を知らないのであれば、罰則を受けるのは最初に派遣社員を受け入れ、そこから人材派遣をしていた企業のみです。ただし、二重派遣と知りながら、その後も受け入れていた場合は、罰則の対象になってきます。

二重派遣を防ぐために確認すべきこと

二重派遣を防ぐために確認すべきこと


二重派遣を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか?気を付けて確認するべきことをまとめてみました。

雇用関係

1つ目は「雇用関係」です。派遣会社からAの会社に人材派遣を行う場合派遣社員が雇用契約を結んでいるのは、元の派遣会社です。A社からB社に送り込まれた社員がA社と雇用契約を結んでいない場合は、二重派遣が疑われるでしょう。

契約内容

2つ目は、請負契約や委任(準委任)契約を結んでいるのにも関わらず、実態が派遣労働者のような業務内容になっていないかを確認する事です。
委任契約や準委任契約は事務の処理が目的となっていて、決められた業務を遂行することで報酬が発生する契約となっています。請負契約であれば、成果物の完成をして賃金の支払いがされると決められているため、契約内容を確認することで、二重契約を防ぐことも出来ます。

指揮命令系統

3つ目の方法として「指揮命令系統の確認」があります。派遣労働者としてある企業に派遣された場合は、その企業内の社員が指揮命令を与える人になっているはずです。
しかし、実際にはその企業の社員でなく、別の企業の社員が指揮命令を与えていたのであれば、二重派遣になっているケースが疑われます。実態は誰から指揮命令を受けているのかを調査してみましょう。

勤務実態

4つ目は「勤務実態の把握」です。二重派遣になっている場合、派遣労働者の勤務実態が当初の契約内容と大きく異なるケースが見受けられます。
休憩時間の長さ、労働する時間帯の違いなど、契約内容と勤務実態が異なっていないか詳しく調べてみましょう。

スタッフへのヒアリング

5つ目は「スタッフへのヒアリング」です。派遣先の企業の現場では、あまり意図せずに別の企業に派遣をしてしまっているケースも見受けられます。
この場合、派遣労働者も気が付かずに二重派遣になっていることがあるため、定期的に派遣先企業の本部から、労働者本人に匿名性を守りつつアンケートを実施することが重要になります。

二重派遣に注意すべき業界

二重派遣が行われがちな業界に「IT・エンジニア業界」と「製造業・作業員業界」があります。それぞれどうして二重派遣が行われやすいのかご紹介いたします。

IT・エンジニア

「IT・エンジニア業界」では、多重派遣という構図が問題になっています。SIer業界の企業では、様々な分野の下請け企業が存在し、その企業での業務を遂行しやすい人材を、無意識的に常駐させてしまいやすいのです。
他企業に常駐させて労働させても問題ありませんが、指揮命令まで委ねることは二重派遣となり、法律違反です。

製造業・作業員

「製造業・作業員業界」でも二重派遣は起こりやすいです。製造業の場合、派遣先の会社で業務が少なくなると、別の企業に作業員を送り込みたくなります。この場合、他企業の指揮命令のもと派遣社員を労働させると、二重派遣となり、法律違反になります。

まとめ

今回は派遣社員として働く中で起こる「二重派遣」という違法行為について詳しく解説してきました。

二重派遣は、派遣会社、派遣先企業、さらなる派遣会社、派遣労働者、全てに悪影響があります。今回ご紹介したような内容を活用しつつ、二重派遣が起こらない仕組みを構築していきましょう。二重派遣を犯さないためには、信頼のできる派遣会社を利用することも大切です。

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