技能実習や特定技能の任意保険加入は必要?任意保険や注意点ポイントを解説

2024/05/16

外国人人材を雇用する際、さまざまな事前知識や手続きが必要になりますが、保険についての認識も企業側がしっかり持っておくことが大切です。
特に技能実習生・特定技能外国人に関する保険については専用の保険なども存在するため、きちんと理解しておく必要があります。

今回は外国人人材、特に技能実習生・特定技能外国人の任意保険について詳しく解説いたします。

外国人の任意保険での注意点

すべての外国人就労者が対象となる保険に、雇用保険・社会保険がありますが、特に技能実習生・特定技能外国人を受け入れる企業が知っておくべき項目があります。

■救援者費用について

救援者費用とは、技能実習生がけがなどをした場合、母国から家族を呼ぶ場合の補償金です。
通常の保険では、この救援者費用の補償はないため、基本企業負担になる可能性がありますので、任意保険の加入を検討することをおすすめします。

■自転車保険について

自転車通勤がある場合は、自転車事故(賠償責任)の可能性があるので任意保険に加入することにより賠償責任も補償されます。

援助者費用など、外国人が母国を離れて日本で生活することによって発生する可能性がある費用などは社会保険だけではカバーしきれません。
場合によっては外国人人材の受け入れ企業側が負担することが義務付けられているものもあるので、事前に任意保険に加入し、万が一の場合に備えることが大切です。

技能実習生の保険について

ここでは技能実習生の任意保険について詳しく解説していきます。
技能実習生に特化した保険は大きく分けて2種類のタイプがあります。

1.外国人技能実習生総合保険(JITCO保険)

  • 傷害治療費用保険金、傷害死亡・後遺障害保険金
  • 疾病治療費用保険金、疾病死亡保険金
  • 賠償責任保険金
  • 救援者費用等保険金

注)歯科疾病、既往症の治療、美容整形、妊娠・早流産・出産、けんか、自殺行為、犯罪行為にかかわるもの等、保険約款に定める事由に該当する場合は、保険金支払の対象となりません。

出典:JITCO「外国人技能実習生総合保険・特定技能外国人総合保険(JITCO保険)」

【特徴とメリット】
入国後講習期間、配属後の第三者への損害賠償【日常生活】、救援者費用等保険金も付いた保険です。また生活環境の変化などから、病院に行く外国人の方も多いので治療費用の3割負担分もカバーしてもらえるので加入しておくことをおすすめします。

2.その他外国人総合保険

JITCO保険より保険料が安い任意保険はさまざまな保険会社から出ていますが、補償内容についてしっかり確認することが必要です。

大きな違いとしては、技能実習生が病院にかかった場合、治療費用の3割負担分を企業側が負担しなくてはいけないこと、配属後の第三者への損害賠償【日常生活】が別途オプションになっている部分です。

【特徴とメリット】
まずひとつは、保険費用を抑えられるというメリットがあります。また用途によりオプション追加ができることも特徴です。
補償内容が細かく分けられていることもあるので、技能実習生がしっかりと理解した上で加入を決められるように、きちんとした説明をする必要があります。

特定技能の保険について

1.特定技能外国人総合保険(JITCO保険)

補償内容として次の保険金が対象となります。

  • 傷害治療費用保険金、傷害死亡・後遺障害保険金
  • 疾病治療費用保険金、疾病死亡保険金
  • 賠償責任保険金
  • 救援者費用等保険金

注)歯科疾病、既往症の治療、美容整形、妊娠・早流産・出産、けんか、自殺行為、犯罪行為にかかわるもの等、保険約款に定める事由に該当する場合は、保険金支払の対象となりません。
出典:JITCO「外国人技能実習生総合保険・特定技能外国人総合保険(JITCO保険)」

【特徴とメリット】
補償内容は外国人技能実習生総合保険とほぼ同じで、配属後の第三者への損害賠償【日常生活】、救援者費用等保険金も付いた保険です。
また、病院にかかった場合の治療費用3割負担分をカバーしてもらえる点も同じです。

2.その他外国人総合保険

こちらも技能実習生向け保険とほぼ同様の内容で用意されているものが多く、技能実習生が病院にかかった場合の治療費用3割負担分を企業側が負担しなくてはいけないこと、配属後の第三者への損害賠償【日常生活】が別途オプションのようになっている部分なども同じです。

任意保険の費用の負担について

任意保険の加入は、マイカー通勤を許可する企業などには就業規則に明記することもあるかと思います。従業員全員を対象に就業規則に入れていれば問題ありませんが、外国籍の方のみというのは問題がありますので技能実習生・特定技能外国人に関しても様々なトラブルを想定し、しっかり説明しておくことが必要です。

1.技能実習生

面談の段階で任意保険加入に関する説明をしっかり行なったうえで、加入の意思確認をする必要があります。特に救援者費用、治療費用の3割負担分のカバー、配属後の第三者への損害賠償【日常生活】に関する説明は必ず行いましょう。治療費などを自身で負担しなくてはならない場合があることをしっかり認識してもらうことが大切です。

上記も踏まえて内定を出す方法が理想的です。実際大きな事故などが起きた際に母国から家族呼ぶなどの費用を実習生や家族が用意できない場合は、受け入れ企業が負担する可能性があり、労災などですべてまかなえない場合、起訴にまで発展してしまうことがあります。
入国後講習中の保険に関しては技能実習運用要領に下記のようにあるので受け入れ企業側負担が望ましいでしょう。

※入国後講習への専念措置に関するもの
【関係の省令の規定】 (技能実習生の待遇の基準) 規則第14条 法第九条第九号(法第十一条第二項において準用する場合を含む。)の主務省令 で定める基準は、次のとおりとする。
二 第一号企業単独型技能実習に係るものである場合にあっては申請者が、第一号団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては申請者又は監理団体が、手当の支給その他の方法により、第一号技能実習生が入国後講習に専念するための措置を講じていること。

2.特定技能

特定技能とは、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する在留資格です。
また転職が可能なので採用面接の段階で任意保険加入の説明を行なったうえで、加入の意思確認をとることをおすすめします。
特に救援者費用、治療費用の3割負担分カバー、配属後の第三者への損害賠償【日常生活】についての説明は後々トラブルが起こることを避けるためにもしっかりと行う必要があります。場合によって自身で治療費などを負担する必要があることをきちんと認識してもらうことが大切です。

給料から控除する場合

技能実習生が任意保険に加入する場合、外国人保険は団体加入であることがほとんどです。受け入れ企業又は監理団体からの申し込みが必要となります。
保険料の支払い方法も、初任給から一括で控除する場合や、3年間で給料から控除する場合において注意点があります。
使用者は社会保険料や税金といった法律で定められているものについては労働者の同意がなくても控除することが出来ます。しかし、それ以外のものを控除する場合は「労使協定」が必要となります。

労働者の同意なしに使用者が給与から控除できるもの(法定控除)は「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」「所得税」「住民税」のみとなっています。それ以外の「家賃」「親睦会費」「組合費」「財形貯蓄」「生命保険料」などを給与から控除するためには、会社と従業員の代表との間で給与控除に関する「労使協定」を結ぶ必要があります。従業員の過半数が組織する労働組合がある場合は、会社と労働組合の間で結ぶことになります。この「労使協定」は掲示や書面の交付等により労働者に周知させなければなりません。ただし、この協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。

まとめ

任意保険の加入はあくまで任意ですが、実際に技能実習生の死亡事故などで安全配慮義務違反が認められ労災認定後に損害賠償請求訴訟にまで発展してしまったケースもあります。

今後、外国人人材の受け入れが増えていけば、外国人の病気や怪我による補償問題が起きる可能性も高くなるでしょう。
技能実習生・特定技能外国人、受け入れ企業側双方にとって、最善の方法で補償が行えるよう、保険についての正しい知識、認識を持っておくことをおすすめします。

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