派遣の抵触日とは?3年ルールの計算・通知・延長手続きを派遣先企業向けに徹底解説

2026/05/25

この記事でわかること

  • 派遣の抵触日とは何か、個人単位・事業所単位の2種類の違い
  • 抵触日の正確な計算方法と、派遣先企業が行うべき通知・延長手続き
  • 抵触日を過ぎた場合の法的リスク

派遣の抵触日とは、労働者派遣法で定められた「3年間の派遣期間制限」が満了した翌日のことです。抵触日を1日でも超えて派遣社員を受け入れると違法派遣となり、法的リスクが発生します。

本記事では、抵触日の定義・正確な計算方法・個人単位と事業所単位の違い・通知義務・延長手続き・違反した場合のリスクまで、派遣先企業の担当者が知るべき実務を網羅的に解説します。

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派遣の抵触日とは?基本の定義と3年ルール

2015年に施行された労働者派遣法において、同一の事業所に3年を超えて働くことを禁じるという大きな改正点がありました。いわゆる「3年ルール」です。抵触日とは、この3年という派遣期間の制限を過ぎた翌日のことをさします。

たとえば、2022年1月1日に派遣で稼働したスタッフの場合、抵触日は2025年1月1日となります。原則、抵触日をむかえたら、同じ組織内でそのまま働き続けることはできません。

抵触日が設けられている理由

では、なぜ抵触日が設けられているのか?それは派遣という働き方は元来「臨時的・一時的」という考え方があり、簡単に代替することを防止する必要があったからです。

また、派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップを図る必要もあったことも、「3年ルール」を派遣法内で定め、抵触日を設けている理由とつながっています。

派遣制限を受けない例外5ケース

派遣という働き方においては、基本的に3年という派遣期間の制限が設けられています。しかし、例外として、派遣制限をうけない場合も一部あります。その条件とは、下記のいずれかのケースに当てはまる場合です。

  • 派遣元で無期雇用されている派遣労働者
  • 60歳以上の派遣労働者
  • 日数限定業務に従事している者
    (1ヶ月間に働く日数が通常労働者より少ない、かつ月10日以下の勤務)
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する労働者の代替業務を担当する者
  • 完了時期が明確な有期プロジェクト業務で働く者

自社で働く派遣社員が上記パターンに含まれるか、確認しておいてください。

また、抵触日とは派遣契約特有の概念です。そもそも「請負」との違いを整理しておくと、なぜ抵触日が必要なのかがより理解しやすくなります。派遣と請負の本質的な違い、なぜ区別が必要なのかを基礎から解説しています。

抵触日の正確な計算方法【具体例つき】

「抵触日の計算は3年後の同日」と思われがちですが、細かいルールがあります。実務担当者が押さえておくべきポイントを整理します。

計算の基本ルール

  • 起算日:派遣社員が最初に就業を開始した日
  • 抵触日 = 起算日から3年経過後の「同日」
  • 更新を重ねても起算日はリセットされず、通算でカウントされる

抵触日の具体的な計算例

「就業開始から3年後の同日」が抵触日です。月末日や月の途中開始でも計算方法は変わりません。「3年後の同月同日」と覚えておくとシンプルに管理できます。

就業開始日3年後の同日抵触日
2023年4月1日2026年4月1日2026年4月1日
2023年10月15日2026年10月15日2026年10月15日

更新をまたいでもカウントは通算される

派遣契約を更新した場合でも、抵触日の起算点は最初の就業開始日です。「1年契約を3回更新した」場合も、3年目の更新時点で抵触日を迎えます。

【例】 2022年4月1日就業開始 → 1年ごとに更新 → 2025年4月1日が抵触日(3回目の更新開始日と同日)

個人単位の抵触日と事業所単位の抵触日の違い

抵触日の種類には、「個人単位の抵触日」と「事業所単位の抵触日」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴について紹介していきますので、理解を深めていきましょう。

個人単位の抵触日

個人抵触日
個人単位の派遣期間制限では、「派遣社員が同一の組織で働くことができる期間は3年が限度」と定められており、その派遣期間制限が切れた翌日が個人単位の抵触日となります。

この場合の組織とは、会社単位ではなく、「課・グループ」などがあたります。そのため、同じ会社内でも、別の「課・グループ」に異動すれば、3年経過後も働くことが可能です。

事業所単位の抵触日

事業所抵触日
事業所単位の派遣期間制限では、「派遣先の同一の事業所で、派遣スタッフを受け入れることができる期間は3年が限度」と定められており、その派遣期間制限が切れた翌日が事業所単位の抵触日となります。

ただし、事業所単位の抵触日は個人単位の場合と異なり、派遣先企業が派遣社員の継続的な受け入れを希望する場合に延長することができます。その場合に必要な対応に関しては、「事業所単位の派遣期間を延長したい場合の対応」にて解説していきます。

どちらが優先される?二重管理のポイント

個人単位と事業所単位の派遣期間制限では、事業所単位のほうが優先されるという関係性があります。そのため、個人単位の抵触日より、事業所単位の抵触日が先に来た場合、個人の就業期間が3年未満になる可能性もあります。

比較項目個人単位事業所単位
制限対象派遣社員個人派遣事業所
期間上限同一組織で3年同一事業所で3年
延長可否不可可能(意見聴取が必要)
優先順位低い高い

注意として、派遣先が「個人の3年はまだ残っている」と思っていても、事業所単位の抵触日が先に来た場合は、その時点で受け入れをストップしなければなりません。必ず両方を同時に管理してください。

派遣先企業が必ず行うべき手続き3つ

① 事業所抵触日の通知

1つ目は事業所抵触日を派遣会社に対し、通知することです。 こちらは、双方が事業所単位の抵触日を把握することで、派遣可能期間の制限を超えないようにすることが目的です。なお事業所抵触日を通知する書面に特に決まったフォーマットはなく、以下の内容が記載してあれば、書式は自由です。

  • 事業所名
  • 事業所の所在地
  • 事業所抵触日

以下は通知書に記載が必要な3項目の具体例です。フォーマットは自由ですが、漏れがないよう確認してください。 また、通知のタイミングについては、派遣会社と派遣契約を締結する前(契約更新時も毎回必要)となります。書面・FAX・電子メールいずれかで通知しましょう。

記載項目記載例
事業所名〇〇株式会社 東京本社 製造部
事業所の所在地〒XXX-XXXX 東京都〇〇区〇〇 1-2-3
事業所抵触日2026年4月1日

② 事業所単位の派遣期間を延長したい場合の対応

2つ目に、事業所単位の派遣期間を延長したい際の対応ですが、抵触日の1カ月前までに意見を聴取することで延長が可能です。意見の聴取先は、該当する事業所の過半数の労働組合となっており、もし労働組合がない場合は、過半数の代表者が対象となります。

注意点としては、本店で延長手続きを一括対応できない可能性がある点です。事業所が各支店や営業所ごとにある場合は、意見聴取は各支店、営業所ごとに行う必要が出てきます。 

もし正しく意見聴取が行われていない場合には、派遣期間制限が延長されません。その結果、抵触日以降に派遣社員を受け入れることができなくなります。

なお延長手続きには制限がないため、延長手続きを行い続けることで、派遣会社から派遣社員を派遣してもらうことは可能です。 

延長手続きのステップ

STEP1:事業所単位の抵触日を確認する(抵触日の1ヶ月以上前に着手)
STEP2:過半数労働組合 or 過半数代表者に意見聴取を実施
STEP3:意見聴取の結果を記録(書面で保存)
STEP4:派遣会社に延長後の新たな抵触日を通知
STEP5:次の抵触日に向けて再度①から繰り返す

また、延長手続きを行う際には注意点があります。以下3つの注意点を手続き前に必ず確認しましょう。

  • 1ヶ月前を過ぎてからの意見聴取では延長が認められない
  • 支店・営業所ごとに独立した意見聴取が必要(本社一括は不可)
  • 意見聴取の記録は法定保存義務あり

③ 抵触日以降も同じ派遣社員を受け入れたい場合

抵触日以降も同じ派遣社員を受け入れたい場合、派遣社員に対して直接雇用の申し込みを行う必要があります。

これは、派遣社員としての受け入れではなく、自社の社員として受け入れることを意味しています。直接雇用のポイントは、正社員だけでなく、契約社員やパート社員も雇用形態に含まれることです。 そのため、対象社員の希望を聞きつつ、お互いが納得する形で契約締結できるように進めていきましょう。

抵触日を過ぎてしまった場合の法的リスク

抵触日を1日でも超えて派遣社員を受け入れることは、労働者派遣法違反(違法派遣)となります。派遣先企業として、以下のリスクが発生します。 

直接雇用申込みなし規制(労働契約申込みみなし制度)

2015年の派遣法改正により、違法派遣状態が生じた場合、派遣先企業が派遣社員に対して「直接雇用の申込みをしたもの」とみなされる制度が設けられています(労働者派遣法第40条の6)。 

つまり、知らずに抵触日を過ぎてしまった場合でも、法律上は直接雇用の申込みをしたことになり、派遣社員が承諾すれば雇用関係が成立します。 

行政指導・公表のリスク 

違法派遣が発覚した場合、厚生労働省による行政指導・業務停止命令の対象となる可能性があります。また、悪質な場合は社名が公表されるケースもあります。 

リスクまとめ 

  • 直接雇用申込みみなし規制(本人が承諾すれば即雇用関係成立)
  • 厚生労働省への報告義務・行政指導
  • 悪質な場合は事業停止命令・社名公表
  • 派遣会社との契約にも影響が生じる場合あり

抵触日を迎えた際の対応

もし派遣社員が抵触日を迎えた場合、どのような対応が必要になってくるのでしょうか?対応方法は以下の4つとなります。

  • 派遣先企業への直接雇用
  • 同じ派遣先の別の課やグループで働く
  • 別の派遣先企業で働く
  • 派遣元企業での無期雇用

ひとつずつ、詳しく見ていきましょう。

派遣先企業への直接雇用

抵触日を迎えた派遣社員を引き続き受け入れたい場合、本人の希望を確認したのち、直接雇用にて迎え入れることができます。

派遣先企業としては新たに別の社員を採用するよりも、勤務姿勢や能力を理解している社員をそのまま雇用するほうが、教育負担や会社方針を理解させる工数を減らせるメリットがあります。抵触日を迎えた派遣社員に今後も継続して勤務してほしい場合には、直接雇用の提案をしてみてはいかがでしょうか?

同じ派遣先の別の課やグループで働く

抵触日に該当した派遣社員でも、同じ派遣先の別の課やグループで働くことは可能です。なぜなら、個人単位の派遣期間制限で定められている組織は会社単位ではなく、「課・グループ」などがあたるからです。

そのため、たとえば人事課で勤務していた派遣社員が、抵触日を迎える前に経理課に異動した場合には、経理課で再び3年間派遣勤務することができるのです。

別の派遣先企業で働く

そのほかの方法として、別の派遣先企業で働く方法もあります。同じ派遣先でも、これまでとまったく違う業務内容で働くことは、培ったスキルや経験を活かせない可能性も出てきます。

そのため、これまでのスキルや経験を活かして働きたいと考える方は、別の派遣先企業でキャリアを積んでいくのもひとつの選択肢になりえます。

派遣元企業での無期雇用

条件つきになりますが、派遣元企業で無期労働契約に変換することで、同じ派遣先企業で引き続き働くことが可能となります。その条件とは、派遣元企業での雇用期間が通算5年以上であること、かつ派遣社員自身が希望していることがあげられます。

この方法が可能となる背景には、派遣元企業での雇用期間が通算で5年を超える場合に「無期転換ルール」が適用されることが関係してきます。派遣元企業での雇用期間が通算で5年を超えていて、かつ継続して同じ派遣先企業で勤務したい方は、派遣元企業での無期雇用という方法も検討してみてください。

参照:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」

クーリング期間とは?注意すべき落とし穴

クーリング期間とは、個人単位・事業所単位の派遣期間制限をリセットできる期間のことを意味します。個人単位・事業所単位ともに、派遣期間終了後3カ月と1日が経過すれば、期間がリセットされ、同じ派遣社員を再び受け入れることが可能となります。 

クーリング期間

クーリング期間の注意点

クーリング期間を経てすぐに同じ派遣社員を受け入れることは、労働者派遣法上、推奨されていません。クーリング期間を「期間制限の抜け道」として意図的に活用することは、行政の指導対象となりえます。

継続して働いてほしい場合は、クーリング期間の活用ではなく、直接雇用の申込みを検討することを推奨します。 

クーリング期間のまとめ 

  • 3ヶ月+1日の空白期間で期間制限がリセット可能
  • 個人単位・事業所単位の両方に適用される
  • 意図的な活用は法の趣旨に反し、行政指導の対象になりえる
  • 継続就業を希望する場合は直接雇用を優先して検討する

抵触日についてよくある質問

抵触日に関してよくある質問を、回答とともにまとめて紹介していきます。どの質問も、抵触日を理解するうえでおさえておきたい内容ですので、参考にしてみてください。

個人単位と事業所単位の派遣期間制限はどちらが優先されるのか?

各抵触日の相関関係
個人単位と事業所単位の派遣期間制限では、事業所単位のほうが、優先されるという関係性があります。そのため、個人単位の抵触日より、事業所単位の抵触日が先に来た場合、人によっては就業期間が3年未満になる可能性もありえます。

たとえば、派遣社員Xさんの個人単位での派遣期間が2025年2月1日の時点で、あと1年残っていたとします。しかし、事業所単位の抵触日が2025年2月1日だった場合、Xさんの派遣期間が1年残っていてもその事業所では働くことができないということになります。

事業所抵触日を通知するタイミングはいつか?

派遣先企業が対応すべき内容である事業所抵触日を通知するタイミングですが、派遣会社と派遣契約を締結する前に、あらかじめ派遣会社に対し事業所抵触日を通知しなければなりません。

通知する方法は以下3点のうち、いずれかにより実施します。

  • 書面の交付(FAX送信を含む)
  • 書面データを電子メールに添付のうえ送信
  • 電子メールに記載のうえ送信

なお、個人単位の抵触日に関しましては、派遣会社に対して通知する必要はありません。

Q. 派遣会社が変わっても抵触日はリセットされるか?

A. リセットされません。個人単位の抵触日は「同一の組織(課・グループ)で働いた通算期間」に基づくため、派遣会社が変わっても同じ組織で働き続けた期間はカウントされます。 

Q. 抵触日を過ぎて気づいた場合はどうする?

A. 直ちに派遣会社に連絡し、派遣社員の就業を停止してください。違法派遣状態が継続すると「直接雇用申込みみなし規制」が適用されるリスクがあります。速やかな対応が重要です。 

抵触日のルールを守りながら人材派遣を活用するには、法令対応に精通した信頼できる派遣会社を選ぶことが重要です。どの派遣会社が自社に合っているか迷っている方は、「おすすめ人材派遣会社8社の特徴と選び方」も参考にしてみてください。

業種別の抵触日管理ポイント

最後に、派遣活用が多い業種によって、抵触日管理の注意点は異なります。弊社株式会社ウィルオブ・ワークが支援する主な業種別のポイントをご紹介します。

【製造業・工場】ライン異動の取り扱いに注意

製造現場では派遣の活用期間が長期になりやすく、抵触日管理が特に重要です。同一工場内でも「第1ラインチーム」「第2ラインチーム」が別組織として扱われるケースがあり、ライン異動で個人単位の期間をリセットできる場合があります。ただし、実態として同一業務・同一指揮系統の場合は同一組織とみなされるリスクもあるため、派遣会社と事前に確認することを推奨します。

【コールセンター】チーム・プロジェクト単位の組織管理

コールセンターでは、商品サポート・テクニカルサポートなど対応業務ごとにチームが分かれているケースが多く、チーム異動が「別組織への配置換え」として認められる場合があります。一方で、大規模センターでは事業所単位の抵触日に複数の派遣社員が同時に到達しやすい構造になっているため、受け入れ開始日の分散管理と、事業所単位の延長手続きを早めに進めることが重要です。

【アパレル・販売】繁忙期の短期集中採用に潜むリスク

アパレル・販売分野では、シーズンごとの繁忙期に派遣社員を集中的に受け入れるケースが多く見られます。「毎シーズン同じスタッフ」という運用が続くと、気づかないうちに3年の通算期間に近づいていることがあります。短期契約の更新を繰り返す場合でも起算日はリセットされないため、受け入れ開始日から通算した期間管理が不可欠です。

まとめ

派遣の抵触日は、個人単位と事業所単位の2種類があり、それぞれ異なる管理が必要です。また、抵触日通知・意見聴取・直接雇用提案など、派遣先企業が対応すべき手続きも多岐にわたります。 

重要なのは、抵触日を「過ぎてから対応する」のではなく、就業開始時から計画的に管理することです。違法派遣状態に陥ると、直接雇用申込みみなし規制が適用されるなど、企業側のリスクも大きくなります。 

抵触日の管理・対応でお困りの場合は、法令対応に精通したウィルオブにお気軽にご相談ください。 

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