建設業界の技能実習生受け入れを考える~メリット・デメリット~
- 外国人採用タイムズ
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2024/05/15
建設業界の技能実習生の3つのメリット
1、安定した人材確保
技能実習は転職がないので3年、もしくは5年受入れ企業で継続的に雇用することが可能になります。(技能実習3号の場合、一時帰国あり)
※月々の管理費など日本人にはかからない費用が加算されため、日本人よりコストはかかりますが、日本人がすぐに辞めてしまうなど、採用や継続的な雇用が難しくなってきている企業様にとっては十分なメリットになります。
2、計画的な採用が可能
受入れ企業が監理団体へ求人票を提出してから、入社までは約6~7か月間かかります。
求人情報を媒体に出し、いつ採用できるか不明瞭な状況よりも、「入社までの期間が約6~7か月」と把握できるのは受入れ企業側にはメリットがあると思います。
※新型コロナウイルスにより、国ごとの入国時期の変動は出ていますが、ウイルス発生前は計画通り入国ができていました。
3、特定技能への移行が可能
2019年から新しく特定技能という在留資格ができ、技能実習2号から特定技能1号への移行が可能になりました。
それにより、最長で8年間雇用することが可能になります。
また特定技能1号からは特定技能2号への移行が可能で、特定技能2号は在留期間の上限がなく、永続的な雇用が可能になります。
※特定技能2号の時点で外国人施工管理技士の誕生、専任技術者の誕生を視野に入れることも可能です。
特定技能(1号)の在留資格を有する外国人を採用するための方法や特定技能の概要から支援、採用事例などを、まとめてご紹介しております。
建設業界の技能実習生の3つのデメリット
1、日本語能力
技能実習生は入国前に海外の送り出し機関で日本語の教育を受けてから日本へ入国します。
日本語レベルは実習生の個人の能力や送り出し機関の教育の質により異なりますが、受入れ企業側は「簡単な日常会話が可能なレベル」であるという認識が必要となってきます。
2、実務未経験
技能実習生は入国前に海外の送り出し機関で言語と同様、作業に関しての教育を受けてから入国します。
入社する際、基礎的な技術を身につけてはいますが現場での作業は経験がないので日本人の実務未経験の方と同等なレベルという認識が必要です。
3、作業内容が決まっている
建設の技能実習生は実習可能な職種と作業が下記のように定められています。
さく井 | パーカッション式さく井工事 ロータリー式さく井工事 |
建築板金 | ダクト板金 内外装板金 |
冷凍空気調和機器施工 | 冷凍空気調和機器施工 |
建具製作 | 木製建具手加工 |
建築大工 | 大工工事 |
型枠施工 | 型枠工事 |
鉄筋施工 | 鉄筋組立て |
とび | とび |
石材施工 | 石材加工 石張り |
タイル張り | タイル張り |
かわらぶき | かわらぶき |
左官 | 左官 |
配管 | 建設配管 プラント配管 |
熱絶緑施工 | 保温保冷工事 |
内装仕上げ施工 | プラスチック系床仕上げ工事 カーペット系床上げ工事 銅製下地工事 ボード仕上げ工事 カーテン工事 |
サッシ施工 | ビル用サッシ施工 |
防水施工 | シーリング防水工事 |
コンクリート圧送施工 | コンクリート圧送工事 |
ウエルポイント施工 | ウエルポイント施工 |
表装 | 壁装 |
建設機械施工 | 押土・整地 積込み 掘削 締固め |
築炉 | 築炉 |
塗装 | 建築塗装 鋼橋塗装 |
作業内容の詳細については外国人技能実習機構の「移行対象職種情報」をご覧ください。
上記の作業内容を遵守した上で、4つの業務区分の条件に適合することが求められます。
必須業務
技能を習得するために必須の業務を指します。
作業時間の割合は、実習全体の2分の1以上です。
関連業務
必須業務に関連する業務であり、技能の習得に関わる業務を指します。
作業時間の割合は、実習全体の2分の1以下です。
周辺業務
関連業務以外の必須業務に関連する通常の業務を指します。
作業時間の割合は、実習全体の3分の1以下です。
安全衛生業務
それぞれ、従事させる時間のうち10分の1以上を安全衛生に係る業務に充てなければなりません。
実習を適正に行うとは
技能実習制度には主に、技能実習法を中心とし、出入国管理及び難民認定法や労働基準法等の多くの法律が関わってきます。
法律をもとに技能実習制度では禁止事項が定められています。
実習を適正に行うとは下記の不正行為を行わないことです。
No, | 不正内容 | 説明 | 受け入れ停止期間 |
1 | 技能実習生に対する暴行・脅迫・監禁 | 監理団体(組合)、実習実施機関(受入企業)において、技能実習生に対して暴行、脅迫又は監禁を行った場合です。 | 5年間停止 |
2 | 旅券・在留カードの取上げ | 監理団体、実習実施機関にいて、技能実習生の旅券又は在留カードを預かっていた場合です | 5年間停止 |
3 | 賃金等の不払い | 監理団体又は実習実施機関において、技能実習生に対する手当又は報酬の一部又は全部を支払わなかった場合です。 | 5年間停止 |
4 | 技能実習生の人権を著しく侵害する行為 | 監理団体、実習実施機関において、技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行っていた場合です。 | 5年間停止 |
5 | 偽造又は虚偽文書の行使・提供 | 監理団体、実習実施機関において、外国人に上陸許可の証印等を受けさせる目的、又は不正行為に関する事実を隠ぺいする目的で、偽造・変造された文書・図面、虚偽の文書・図面を行使又は提供していた場合です。 | 5年間停止 |
6 | 保証金の徴収等 | 監理団体、実習実施機関又はあっせん機関が本邦において技能実習生が従事する技能実習に関連して、技能実習生やその家族から、保証金を徴収するなどしてその財産を管理していた場合や労働契約の不履行に係る違約金を定めるなど不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していた場合です。 | 3年間停止 |
7 | 入国1ヶ月目の組合による講習期間中の業務への従事をさせる行為 | 監理団体、実習実施機関において、講習期間中に業務に従事させていた場合です。 | 3年間停止 |
8 | 二重契約 | 監理団体、実習実施機関において、技能実習に係る手当若しくは報酬又は実施時間について技能実習生との間で地方入国管理局への申請内容と異なる内容の取決めをしていた場合です | 3年間停止 |
9 | 技能実習計画との齟齬 | 監理団体や実習実施機関において、地方入国管理局への申請の際提出した技能実習計画と著しく異なる内容の技能実習を実施し、又は当該計画に基づく技能実習をしていなかった場合です。 | 3年間停止 |
10 | 名義貸し | 監理団体、実習実施機関において、地方入国管理局への申請内容と異なる他の企業で技能実習を実施させていた場合などです。 | 3年間停止 |
11 | 技能実習の継続が不可能となった場合の報告不履行 | 監理団体や実習実施機関において、技能実習の継続が不可能となる事由が生じていながら、地方入国管理局への報告を怠っていた場合です。 | 3年間停止 |
12 | 監査等の不履行 | 監理団体において、団体要件省令に規定する監査、相談体制構築等の措置を講じていなかった場合です。 | 3年間停止 |
13 | 一定の行方不明者数の発生 | 監理団体や実習実施機関において、上陸基準省令に規定する人数の行方不明を発生させた場合です。 なお、監理団体や実習実施機関の責めに帰すべき理由がない場合は、この類型に該当しません。責めに帰すべき理由がない場合とは、技能実習が技能実習計画に沿って実施され、賃金の支払い等が雇用契約どおりに行われていることなど監理団体や実習実施機関がその責務を果たしている場合です | 3年間停止 |
14 | 不法就労者の雇用等 | 監理団体、実習実施機関において、 ①事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせる行為、 ②外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行為又は ③業として、①及び②の行為に関しあっせんする行為のいずれかを行い、唆し、又はこれを助けた場合です。 | 3年間停止 |
15 | その他労働関係法令違反 | 監理団体や実習実施機関において、【1】、【3】及び【4】に該当しなくても、技能実習の実施に関して、 労働基準法、労働安全衛生法、職業安定法等の労働関係法令について重大な違反があり、技能実習の適正な実施を妨げた場合です。 | 3年間停止 |
16 | 営利目的のあっせん行為 | 営利を目的とするあっせん機関において、技能実習に関してあっせんを行っていた場合や監理団体若しくは営利を目的としないあっせん機関において、技能実習に関して収益を得てあっせんを行っていた場合です。 | 3年間停止 |
17 | 「不正行為に準ずる行為」の再発 | 地方入国管理局から「不正行為に準ずる行為」を行ったものとして指導を受けた監理団体、実習実施機関等において当該指導を受けた後3年以内に再度「不正行為に準ずる行為」を行った場合です。 | 3年間停止 |
18 | 技能実習実施状況に係る日誌等の作成等不履行 | 監理団体や実習実施機関において技能実習の実施状況に係る文書や技能実習の指導に係る文書の作成、備付け又は保存を怠っていた場合です。 | 1年間停止 |
19 | 帰国報告の不履行 | 監理団体において、技能実習生の技能実習活動終了後の帰国に係る地方入国管理局への報告を怠っていた場合です。 | 1年間停止 |
特定技能(1号)の在留資格を有する外国人を採用するための方法や特定技能の概要から支援、採用事例などを、まとめてご紹介しております。
外国人技能実習機構の実地検査
技能実習では外国人技能実習機構が実地検査を行います。
外国人技能実習機構の実地検査について説明していきます。
外国人技能実習機構技能実習機構の義務
外国人技能実習機構技能実習機構の義務として、機構の職員は、主務大臣からの委任を受けて、実習実施者に対して実地検査を行うことが技能実習法に定められています(技能実習法第14条)。
実地検査の回数
実地検査には、関係者から相談、申告、情報提供があった場合等に直ちに行う臨時検査、原則、監理団体に1年に1度、実習実施者に3年に1度実施する定期検査があります。
実地検査の内容
実地検査において、認定計画に従って技能実習が適正に行われているか確認するため、実習実施者に報告を求め、必要な帳簿書類等を確認します。技能実習法違反の場合や出入国・労働関係法令違反が疑われる場合などには、改善勧告・改善指導を行います。
実習実施者の注意点
実習実施者は、機構の実地検査に際して、虚偽の報告や虚偽の必要書類の提出等をした場合には、認定計画の認定が取消される場合がありますのでご注意下さい。
実地検査の一般的な流れ
出典:外国人技能実習機構
適正ではないと判断された場合のリスク
リスクは大きく分けて3つです。
1、行政処分(企業名・監理団体名公開)
行政処分には大きく分けて下記の2つあります。
・改善命令(技能実習法第15条)
認定計画に従って技能実習を行わせていない場合や技能実習法令、出入国・労働関係法令に違反した場合に、必要な措置と期限を定めて命令します。
・許可、認定の取消し(技能実習法第16条)
下記の不正行為は監理団体の許可、技能実習計画の認定が取り消しの対象になります。
認定計画に従って技能実習を行わせていない場合
欠格事由に該当した場合
実地検査に際して虚偽の報告等をした場合
改善命令に違反した場合
※上記の行政処分を受けた企業は外国人技能実習機構のHPに企業名・監理団体名が公開されます。
2、受け入れ停止期間
外国人技能実習機構の実地検査等により、「不正行為」と入国管理局に判断された場合は不正行為が終了した後から一定期間、技能実習生の受け入れができなくなります。
※不正の内容により受け入れ停止期間が異なります。(1:技能実習を適正に行うとは
の表を参照)
3、特定技能の受け入れ計画の審査が通りにくくなる
下記が特定技能の方を受け入れる際の流れです。
ポイントは「建設特定技能受入計画の認定申請」を1回目に国土交通省へ提出するという点です。
特定技能も技能実習と同様、適正な実施が受け入れ企業には求められます。
そのため、その企業に過去、技能実習の認定取り消し等が発生した経験があると国土交通省からの特定技能の受け入れ計画の審査が通りにくくなります。
建設業界の技能実習の注意点
技能実習生の失踪は実習生の増加に比例し、年々増加傾向にあります。
出典:法務省「失踪技能実習生を減少させるための施策」
その失踪の大きな要因になるのは、送り出し機関・受入れ企業・監理団体が適切でないことが挙げられます。
送り出し機関の問題
送り出し機関によってはブローカーが介在している送り出し機関も存在します。
適切な送り出し機関かどうかを判断するためには下記の外国人技能実習機構のHPより認定された送り出し機関が記載されています。
出典:外国人技能実習機構 外国政府認定送り出し機関一覧
受入れ企業の労働環境
受入れ企業での労働環境も失踪の大きな原因の1つです。
特に言葉遣いと教育です。
1、言葉遣いについて
外国籍の方々への言葉遣いにも理解が必要です。
例えば、外国籍の方々へ「お前」などと呼ぶ行為は注意が必要です。
建設現場等で日本人の方同士で相手に対して「お前」と呼ぶ行為はよく見られます。
ですが、外国籍の方々は「お前」と呼ばれると「怒られているのか」等の間違った理解をしてしまうケースもあります。
その背景としては、まず技能実習生の場合、入国前に日本語の教育を現地の送り出し機関で受講してきます。
その際に相手を指す言葉で「あなた」と学び入国します。「あなた」と自分のことを呼ばれず、「お前」と呼ばれる時点で当然、違和感や恐怖を感じます。
このような小さな言葉の積み重ねが失踪という最悪な結末を引き起こすケースも多々あります。
2、教育について
建設現場では上司が部下を教育する際、「背中を見て覚えろ」という教育風景が見受けられます。
教えてもらう立場の方は日本人の方でも始めは理解するのに難しさを感じることでしょう。では、教えてもらう立場の方が外国籍の方の場合は、どうでしょう。
当然、理解することが難しいと思います。
日本に来て間もない外国籍の方の立場を理解した上で教育を行うことで、失踪などの最悪な結末は防ぐ可能性を高めることできます。
監理団体としての適切な監査・指導
技能実習1号では毎月監理団体が監査・指導を行います。
そこで技能実習が計画通り行われているか否か、技能実習生との面談(特定技能を目指させる為の教育可能)等が行われます。
このような監査・指導を行っていない状況で、毎月多額の監理費を受入れ企業から徴収している監理団体も存在します。
2020年に法改正もあり、今一度適切な監理団体を見直すこと、監理団体を比較することを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
3年後、5年後等の将来、建設業界では人材不足はより深刻化します。
例えば、優秀な日本人施工管理技士は海外へ進出する傾向があり、現場作業員は若者の工業高校への進学率の低下、建設企業への入社率の低下、不法就労者の取り締まりにより更に減少が考えられます。
この様な将来が予測される中で技能実習制度は建設業界の新しい常識になってきます。
そのため、今回は技能実習のメリット・デメリットの部分と注意点を紹介させて頂きました。
企業側も外国籍の方もお互い幸せになるためにも技能実習のメリット・デメリットの理解、適正な運用をし、お互いを理解し合うことで家族のような関係構築が可能になります。
そのような過程で当社もご協力させて頂けましたら幸いです。最後までご覧いただき誠に有難う御座いました。
技能実習をはじめ、外国人雇用についてのご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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