2021年、外国人労働者への脱退一時金の上限が3年から5年へ見直しに

日本の国民年金や厚生年金には、国籍の要件がありません。つまり、日本国内に住所を所有し20歳以上60歳未満であれば、外国人であっても国民年金や厚生年金の被保険者となります。(医療滞在ビザや長期観光ビザで滞在している外国人は含みません。また厚生年金の場合、年齢の下限は無く、就職した時点での加入が原則です。)

 

対象者になるとは言え、外国人が一生を日本で過ごすとは限りません。例えば留学生であれば、卒業後、母国へ帰国することや、他国へ移住することも想定されるでしょう。そうなってしまうと、せっかく納めてきた年金の保険料が掛け捨てになってしまいます。

 

そこで用意されているのが、脱退一時金制度です。

 

外国人労働者の中には受け取る予定のない年金保険料を支払いたくないと申し出てくる方もいらっしゃいます。その際に、雇用主として社会保険の必要性や脱退一時金制度について説明できるでしょうか?

 

本稿では、2021年4月に上限月数の見直しが予定されている脱退一時金について、解説していきます。ぜひ、外国人雇用の知識のひとつとしてご活用いただければと思います。

 

2021年、制度改正により支給上限が5年へ

現行の脱退一時金制度では、年金への加入歴が3年以上の場合、長期間保険料を納め続けたとしても脱退一時金として受け取れる金額が変わらない仕組みとなっています。

 

その支給上限が、2021年4月1日から5年に改正されます。

 

制度改正の要因となったのは、2019年に新しく在留資格として追加された「特的技能(1号)」の在留期間の上限が5年であることや、外国人出国者全体の内、3年から5年滞在していた方の割合が16%に増加したことなどがあげられます。

 

そもそも脱退一時金とは、どんな制度か

脱退一時金とは、日本の国籍を持たない外国人労働者が、老齢年金の受給資格期間である10年を満たさずに帰国する時に、すでに納めている年金保険料の一部を返金してもらえる制度です。対象となる外国人労働者が、日本に住所を保有しなくなった日から2年以内に請求をすることで支給を受けることができます。

 

国民年金に加入していた外国人の場合

 

脱退一時金の支給要件

下記の1~4で計算した第1号被保険者(任意加入被保険者も含む)の期間が、6か月以上あること

  1. 保険料納付済期間の月数
  2. 保険料4分の1免除期間の月数×4分の3
  3. 保険料半額免除期間の月数×2分の1
  4. 保険料4分の3免除期間の月数×4分の1
  • 日本国籍を有しない方であること
  • 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていないこと
  • 国民年金の被保険者でないこと

 

下記いずれかに該当した場合は脱退一時金を請求できません

  • 国民年金の被保険者となっているとき
  • 日本国内に住所を有するとき
  • 障害基礎年金などの年金を受けたことがあるとき
  • 最後に国民年金の資格を喪失した日から2年以上経過しているとき

※ただし、国民年金または厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日に日本国内に住所を有していた人は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年を起算します。

 

脱退一時金の金額

最後に保険料を納付した月が属する年度と、保険料納付済月数に応じて、以下のとおりとなります。

 

■最後に保険料を納付した月が2021年4月以前


参考:日本年金機構参照

■最後に保険料を納付した月が2021年4月以降

参考:日本年金機構参照

厚生年金保険加入していた外国人の場合

 

脱退一時金の支給要件

  • 厚生年金保険・共済組合等の加入期間の合計が6月以上あること
  • 日本国籍を有しない方であること
  • 老齢厚生年金などの年金の受給権を満たしていないこと

 

下記いずれかに該当した場合は脱退一時金を請求できません

  • 国民年金の被保険者となっているとき
  • 日本国内に住所を有するとき
  • 障害厚生年金などの年金を受けたことがあるとき
  • 最後に国民年金の資格を喪失した日から2年以上経過しているとき

※ただし、国民年金または厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日に日本国内に住所を有していた人は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年を起算します。

 

脱退一時金の金額

(1)被保険者であった期間の平均標準報酬額 ×(2)支給率(保険料率×2分の1×支給額計算に用いる数)

 

(1)被保険者期間であった期間における平均標準報酬額は以下のA+Bを合算した額を、全体の被保険者期間の月数で除して得た額をいいます。
A  2003年4月より前の被保険者期間の標準報酬月額に1.3を乗じた額
B  2003年4月以後の被保険者期間の標準報酬月額および標準賞与額を合算した額

 

(2)支給率とは、最終月(資格喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月の保険料率(最終月が1月~8月であれば、前々年10月の保険料率)に2分の1を乗じた率に、被保険者期間に応じた以下の表の数を掛けたものをいいます。

 

脱退一時金の請求に関する注意事項

脱退一時金を受け取った場合、脱退一時金の計算の基礎となった期間は、年金加入期間ではなくなります。脱退一時金の請求に際しては、以下の注意事項を確認の上、請求の手続きが必要です。

 

2017年8月から老齢年金の受給資格期間が10年に短縮されています

2017年8月以降の脱退一時金の請求には、受給資格期間が10年以上ある方(老齢年金を受ける権利がある方)は、脱退一時金を受け取ることができません。将来、日本の老齢年金として受け取ることができます。
※ この取扱いは、2017年8月1日以降に日本年金機構が受理した脱退一時金請求書について適用されます。

 

(1)受給資格期間10年以上(25年未満)ある方が2017年7月31日までに脱退一時金の請求をした場合は、脱退一時金を受け取ることができます。

※ 脱退一時金の全ての支給要件を満たしていることが前提となります。
※ 脱退一時金の請求は、転出日(日本に住所を有しなくなった日)または被保険者資格喪失日のどちらか遅い方の日以降に行うことになります。外国人の方であっても日本に住所があるときは、国民年金第1号被保険者となり(60歳未満の者に限る)、2017年7月31日に転出した場合、国民年金の資格喪失日は翌日の8月1日となります。この場合、上記(2)のケースに該当することになりますのでご注意ください。

 

日本と年金通算の協定を締結している相手国の年金加入期間のある場合

一定の要件のもと年金加入期間を通算して、日本および協定相手国の年金を受け取ることができる場合があります。詳しくは社会保障協定をご確認ください。
日本年金機構:社会保障協定参照

 

脱退一時金を複数回申請する場合

脱退一時金は、日本の年金制度に加入していた期間に応じて、36カ月を上限として計算されます(注)。長期間(37カ月以上)日本の年金制度に加入されていた方が脱退一時金を請求した場合、脱退一時金の支給金額は36カ月を上限として計算されますが、脱退一時金を請求する以前の全ての期間が年金加入期間ではなくなります。

 

※ 複数回の在留を繰り返し、日本の年金制度に加入する期間が通算で37カ月以上になる予定の方で、加入期間に応じた脱退一時金の受給を希望される場合には、各在留終了後の帰国の都度、請求が必要になる場合があります。(例えば、3年間(36カ月)で第1号・2号技能実習を終了し帰国の後、第3号技能実習生として実習を受けようとする方は、第2号技能実習終了後および第3号技能実習終了後に請求をすることで各加入期間に応じた支給を受けることができます。)

 

帰国前に日本国内から請求書を提出する場合

請求書を住民票の転出(予定)日以降に日本年金機構に提出します。(脱退一時金の受給要件として、日本年金機構が請求書を受理した日に日本に住所を有していないことが必要です。)郵送等で手続きをする場合には、請求書が転出(予定)日以降に日本年金機構に到達するよう送付しなければなりません。

 

再入国許可およびみなし再入国許可を受けて出国する場合

市区町村に転出届を提出したうえで、再入国許可を受けて出国している方は、脱退一時金を請求することができます。転出届を提出していない場合、再入国許可期間内は、原則として脱退一時金を請求することができません。

 

再入国許可を受けて出国する方でも、国外へ住所を移す場合には、市区町村へ転出届を提出する必要があります。市区町村へ転出届を提出したうえで、再入国許可を受けて出国している方は、脱退一時金を請求することができます。この場合、転出日の翌日(国民年金の資格喪失日)から2年間が脱退一時金の請求可能期間となります。

 

原則として、再入国許可の有効期間が経過するまでは国民年金の被保険者とされることから、脱退一時金は請求できません。なお、国民年金の被保険者資格の喪失日(再入国許可の有効期間(みなし再入国許可期間)が経過した日)から2年間が脱退一時金の請求可能期間となります。(再入国許可期限内であっても住民票が消除される場合がありますので、脱退一時金請求の時効起算日についてはご注意ください。)

まとめ

今回は、外国人労働者の国民年金や厚生年金に紐づく脱退一時金制度ついてのご紹介でした。よくご質問をいただくポイントとして、脱退一時金制度は、雇用する企業に適応されるものではありませんので、ご注意いただければと思います。

 

法改正等で、少しずつではありますが、外国人労働者が安心して長く活躍できる環境が整ってきています。こうした情報が外国人労働者の活用を進める雇用主の皆さまの一助となれれば幸いです。

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