外国人労働者の日本語教育の方法とは?現状と対策について解説
- 外国人採用タイムズ
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2024/05/14
外国人労働者には企業からの積極的な日本語教育の提供が求められています。学習したい人や学習が必要な外国人の数に対して、日本国内の教育環境が不足している現状があるからです。本稿では、日本語教育の方法や外国人を雇用する企業として考えておきたいポイントを解説します。
TOPICS
外国人労働者の日本語教育の現状
日本で働く外国人労働者にとって、日本語でのコミュニケーション能力は仕事だけでなく生活にも大きく影響する要素です。
外国人労働者の受け入れを推進する国として、または外国人人材を必要とする企業として日本語教育の環境を整える必要性が高まっています。実のところ、教育環境が充実しているとは言えないのが現状です。
文化庁の令和元年時点の調査を見ると、増加する日本語学習者の数に対し、日本にある日本語教育機関や施設や日本語教師の数が足りていないことがわかります。
日本語学習者の数 | 277,857人(前年から約18,000人の増加) |
日本語教育機関や施設の数 | 2,542施設(前年比252施設増) |
日本語教師の養成コースを持つ施設の数 | 579施設(前年比59施設増) |
日本語教師の数 | 46,411人(前年から約4,800人の増加) |
日本語教師のうち5~6割はボランティアです。となると、学習者の学習時間のニーズに対応できない教師も含まれるでしょう。現に、外国人学習者から、教室に通える時間帯を増やしてほしいという多くの声あがっているようです。
(※)参考:日本語教育実態調査等 | 文化庁
平成30年度国内の日本語教育の概要 | 文化庁
外国人労働者の日本語教育の方法4 つ
外国人労働者が日本語を習得するには、どのような方法があるのでしょうか。以下に4つの方法をご紹介します。
入社・採用前に母国の日本語学校で学ぶ
入社前の対策としては、日本に来る前に自分の国の日本語教室などで学んでもらう方法があります。
働き始める前なので比較的時間を取れる可能性が高く、じっくりと学べるでしょう。入社前のやりとりにおいても日本語でのコミュニケーションが取りやすくなります。何よりも企業と人材の双方にとっての不安解消、安心度を高める準備となるでしょう。
日本で働きながら日本語学校に通う
入社して働きながら、日本語学校に通っている方もいます。この方法の場合、学費を負担や一部補助をしている企業も少なくありません。
働きながら学ぶことは、日本人と同じく仕事時間との調整が難しくなります。来日直後の外国人人材であれば、慣れない環境でなおさらハードな毎日となるはずです。学習期間、あるいはレッスンの日には短時間勤務を許可するなどの配慮も必要でしょう。
企業が提供する研修で力をつける
社内で外国人人材を対象とする日本語研修を実施してもいいでしょう。レベルにもよりますが、一定のコストと教育スキルが必要です。
社内研修といってもさまざまな手段が考えられます。社内に講師人材がいなければ、外部から専門講師を招くことも視野にいれたほうがいいでしょう。
日本語検定のレベルアップを目指す内容・カリキュラムもおすすめです。また、日本人人材とのフリートークや教え合える機会を設けると、職場コミュニケーションの活性化にも役立つでしょう。
オンラインを活用する日本語学習
言語習得には、座学と実践がバランスよく組めるのが理想です。また、頻繁に日本語に接するほど、スキルの効果や定着度は高まります。
学習ツールでも、研修でも、オンラインでも提供できるようにしておくのがおすすめです。
eラーニングの教材があればいつでも、どこでも学習できます。集合研修には時間や場所の調整が必要ですが、オンラインであれば柔軟な設定が可能です。細切れの時間を効率よく使えるため、学習効率も上がるでしょう。
雇用してから日本語がまったくできないことがわかった場合は?
日本で働く外国人労働者の日本語レベルは、仕事だけでなく、人材の生活全般の質も左右します。
面接では何とか意思の疎通が図れたとしても、業務が始まってみると日本語スキルの大幅な不足が露呈するケースもあるようです。日本語が不自由な外国人人材だけでなく、ともに働く日本人社員にも負担がかかるでしょう。そのような状況を放っておくわけにはいきません。
日本語スキルが不足していても業務が進められる工夫
日本語に不安の残る外国人人材には、日本語に頼らずとも業務内容を理解し、遂行してもらうツールが必要です。
例えば、マニュアルを彼らの母国語で作成するのも一つの方法でしょう。画像や動画を用いた説明ツールを用意すれば、どの国の人材にも使えるツールとなります。
日本語スキルを上げるための研修を実施
外国人労働者の日本語スキルが不足していれば、業務に支障が出ない日本語レベルに達するための研修が必要です。
社内に教育ノウハウがあれば独自に行なうこともできます。学習効率を考えると外部の専門家やサービスを活用することも視野にいれたほうがいいかもしれません。必然的にコストはかかります。
なお、ウィルオブ・ワークの外国人派遣サービスは、2週間ほど先行して日本語が話せる外国人リーダーを数人配置します。
そのリーダーがまず仕事内容を把握するのです。そのあとに配置される他の外国人スタッフに母国語などで仕事の手順を伝授していく方法を採用しています。
詳しくは、こちらのページからご覧ください。
▼株式会社ウィルオブ・ワーク
外国人の人材派遣・人材紹介サービス
母国語による説明とサポートによって、採用の初期段階に起こりがちな多くの障害をカバーできることは企業と外国人人材にとって大きなメリットです。人材の日本語レベルに関わらず業務が遂行できるようになり、安定雇用にも繋がりやすいでしょう。
外国人人材を雇用する企業が考えておきたいこと3つ
日本語スキルは、外国人人材のコミュニケーション能力、業務理解や遂行力を左右します。企業の採用においても、人材の日本語レベルは気になるところでしょう。
外国人人材の雇用をする、あるいは今後視野に入れていきたい企業は、以下のような点にアンテナを張っていかれることをおすすめします。
自社で日本語力向上に役立つ環境を整備
お伝えしたように、外国人労働者の日本における学習環境は充実しているとは言えない状況が続いています。
外国人人材を雇用する個々の企業が中身の濃い研修を提供していく必要がありそうです。また、意図的に、コミュニケーション機会(日本語の実践)が増えるような環境を作っていくことも重要なポイントとなるでしょう。
自社に必要な人材の日本語レベルを把握
外国人人材の日本語レベルは高いに越したことはありません。しかし、実際には企業ごとに必要とされる日本語レベルは異なります。部署や職種によっても変わってくるでしょう。目安としては、日本語能力試験のレベルが役立ちます。
日本語能力試験JPLTについては、こちらの記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
▼関連記事
日本語能力試験JPLTは外国人採用の判断基準に使えるのか?
募集時(入社)に求める日本語レベルが高ければ高いほど、採用の難易度は高まるでしょう。
入社後に学習環境を整えているので、徐々にスキルを高めてほしいという条件にすれば、該当する外国人人材の枠はグッと広がるのです。
逆に、教育体制が不十分であれば、日本語スキルに不安のある人材を雇用するべきではありません。
各国の日本語教育事情を知る
世界各国における日本語教育の状況は異なっています。アジアに絞って比較しても大きな差があるのです。
日本語教育が活況な国のほうが高スキルを雇用できる可能性は高いでしょう。このように国レベルの事情にもアンテナを張っていかれることをおすすめします。
まとめ:外国人労働者に対する日本語教育体制を準備する
日本で働く外国人労働者にとって、日本に来てから日本語を思う存分学べる環境が整っているとは言い難い現状があります。
もちろん、日本語レベル=人材の能力ではありません。しかし、日本語スキルの不足が職場におけるスムーズなコミュニケーションの障害になりやすいのは事実です。
慣れない環境で生活/仕事をしていく外国人人材にとって大きなストレスとなるでしょう。また、言葉の通じにくい人材とともに仕事をする日本人人材の負担も軽視すべきではありません。
採用前も採用後も、企業として工夫や改善をしながらスキルアップできる環境を整備していかれることをおすすめします。
また、外国人の採用や雇用に関する情報をこちらの記事でまとめています。ぜひご活用ください。