【技能実習・特定技能編】介護分野の外国籍雇用ガイド①
日本の介護職員は、2035年には約79万人の人手不足が予測されています。
そんな状況の中、介護業界では外国籍の方の採用が進んできています。
ただ、外国籍の方を採用するにはいろいろな方法があり、何が最善の方法なのかがわかりにくく、迷っている採用担当の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、話題の技能実習や特定技能に焦点を当てて説明をしていきます。
全3回に分けて5つの在留資格について解説していくので、参考にしていただき施設にあった採用方法を選択してください。
5つの方法
外国籍の方が日本で働くには、就労ができる在留資格が必要です。
介護分野で働くことのできる在留資格は5つあります。
この5つの在留資格のほかに、永住者や日本人の配偶者等などの身分に基づく在留資格を持っている外国籍の方は日本人と同じように就労することが可能なため、介護職として働くことができます。
ここで紹介する5つの在留資格にはそれぞれ条件があるので、その条件を知っていないと、いざ採用しようとなった際に慌てることになります。
それぞれの特徴をしっかりと知るためにも、まずは5つの在留資格を紹介します。
5つの在留資格
・技能実習
・特定技能
・EPA(イーピーエー)
・留学
・「介護」 ※介護という名称の在留資格ですが、本文中は「介護」と表記します。
※1. 外国人技能実習機構
※2. 出入国在留管理庁
※3. 厚生労働省
※4. 日本介護福祉士養成施設協会
※5. 出入国在留管理庁
技能実習
上の表でもわかるように、介護分野で最も人数の多いのが技能実習です。
近隣の介護施設にも技能実習で来日している外国籍の方がいるのではないでしょうか?
介護分野の技能実習は2017年11月から始まった制度で、技能を習得し母国の発展のために活躍できる人材を育成する、国際貢献のための実習を目的としているのが技能実習です。
技能実習は就労のため、人手不足の解消のために採用するのではなく、日本の介護技術を有償で実習する方と考えてください。
技能実習について詳しく知りたい方は、別記事「介護での技能実習生受け入れのポイントとは?|技能実習制度の現状も解説」で解説していますので、そちらもぜひ参考にしてください。
本記事では大きな特徴のみ紹介します。
技能実習の特徴
受け入れ人数に制限がある
介護に従事している事業所ごとの常勤職員数によって受け入れられる人数が決まっています。
ここで注意しなければならないのが、介護職の常勤職員数だということです。
事務職や医療に従事している看護師は対象外となるので、採用前に希望の人数の採用ができるのか下の表で確認しておきましょう。
(介護に従事している看護師は常勤数に含むことができる。)
【受け入れ人数について】
家具家電など生活備品などの支援をする
社宅や住居の提供なども受け入れる事業所(法人)が準備をしなければなりませんが、その他にも技能実習生がすぐに生活できるような生活備品の準備も欠かせません。
準備したほうがいいものは当社が作成・使用している下記リストを参考にしてみてください。
技能実習計画に沿って実習を行う
実習生の採用が決まったら、技能実習計画を作成します。
団体監理型の場合は、監理団体が作成の指導をしてくれますが、技能実習計画とは技能実習生が習得する技術をどのように事業所で指導していくかという計画表です。
この計画表に沿って実習が行われているかどうか監査もされるとても大事なものです。
また、技術の習得が偏らないようこちらを参考に作成しましょう。
介護技術全般を取得するため、入浴介助だけをやってほしいといった採用はできません。
特定技能
特定技能はこの5つの中で最も新しい在留資格です。
特定技能は、介護も含めた人手不足が顕著にみられる14の分野で外国籍の方が働くことのできる制度として、2019年4月より始まりました。
介護分野では、特定技能1号のみ対象で、最長で5年間日本で働くことのできる在留資格です。
※特定技能2号は、建設、造船・舶用工業の2分野のみ対象で介護は対象外です。
特定技能1号の特徴
特定技能1号の特徴としては、下記のようなものがあります。
最長で5年間、日本で働くことができる
1号特定技能は、最長5年間(通算5年間)日本で働くことができます。
注意が必要なのは、特定技能1号としての滞在期間が5年間であるということです。
例えば、特定技能1号の在留資格で外食業を2年働いている方が、特定技能1号の介護職に転職した場合、残りの滞在期間は3年となります。
要するに、業種や分野ごとに5年間ではなく、在留資格として5年間滞在許可があるということです。
そして、在留資格は1年ごとに更新し、最長5年間となりますので最初から5年間の在留期間があるわけではないので注意しましょう。
海外、国内どちらからも直接雇用で採用ができる
先ほどの技能実習とは違い、特定技能は海外にいる方を採用することも、すでに日本にいる外国籍の方を採用することもできます。
というのも、一度技能実習を終了した方が再度就労のために来日することが難しかったこと、経験者が再来日してくれることを望んでいる企業が多かったことから海外からも採用をすることができるようになっています。
海外からの採用の場合は、入国する前までに内定を出し在留資格が下りている状態にしなければならないので、海外から一回観光で来日してもらい採用するということはできないので注意しましょう。
技能実習やEPAとは違い、日本国内でも採用ができるというのは、日本の生活と日本語にある程度慣れている方を採用することができる介護施設にとっては嬉しい、新たな制度と言えるでしょう。
また、特定技能は直接雇用のみでの採用となります。
よく介護施設の方から「特定技能も派遣で採用できますか?」と質問をいただくのですが、特定技能は派遣での採用はできません。
このあと紹介しますが、特定技能は派遣会社なども登録支援機関として参画できるのですが、特定技能の方を派遣社員として紹介することはできないので、見極められるようにしておきましょう。
受け入れ施設には条件がある
特定技能の外国籍の方を雇用できる事業所は決まっています。
採用を検討している事業所では受け入れができるか確認しましょう。
① 訪問系のサービスは受け入れができない
訪問系サービスと呼ばれる、訪問介護やサービス付き高齢者向け住宅などでは特定技能外国人を雇用することができないので注意しましょう。
理由は、利用者、特定技能外国人双方の人権擁護のためと、在留資格に基づいた活動を行っているか適切に判断するためとされています。
② 日本人等の常勤の介護職員より多い人数の受け入れはできない
特定技能外国人の採用人数枠は事業所によって異なり、その事業所の日本人等の常勤介護職員の総数を超えて採用することはできません。
この“日本人等“には下記の方が当てはまります。
・日本人の介護職員
・EPA介護福祉士(EPAにて来日後、介護福祉士を合格した者)
・在留資格「介護」
・永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の身分に基づく在留資格を所持している者
技能実習生や留学生、EPA介護福祉士候補者は対象ではありませんのでご注意ください。
外国籍の方への支援をしなければならない(10個の支援項目が決まっている)
特定技能外国人を採用・雇用する法人は、その特定技能外国人に対し雇用や生活に関する支援を行う義務があります。
その義務の支援が法人内で難しい場合は、登録支援機関に支援をすべて委託することができるので安心してください。
【支援項目】
①事前ガイダンス | 労働条件や入国手続きについて対面・テレビ電話等で説明 |
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② 出入国する際の送迎 | 出入国時の空港等⇔住居の送迎 |
③ 住居確保・生活に必要な契約支援 | 社宅の提供や携帯電話や水道ガス電気などの契約の案内、補助 |
④ 生活オリエンテーション | 日本のマナーや交通ルール等の説明(8時間以上の実施) |
⑤ 公的手続等への同行 | 住居地・社会保障・税などの手続の同行、補助 |
⑥ 日本語学習の機会の提供 | 日本語学校や教材の案内 |
⑦ 相談・苦情への対応 | 職場や生活上の相談や苦情に対し、その外国人の母国語での対応、指導 |
⑧ 日本人との交流促進 | 地域住民との交流の場やお祭りなどの案内 |
⑨ 転職支援(人員整理等の場合) | 雇用側の理由により契約を解除する場合は、転職先を探す手伝いや必要な行政手続の情報の提供 |
⑩ 定期的な面談・行政機関への通報 | 支援責任者等が外国人及びその上司等と3か月に1回以上面談を行い、違反等があれば通報 |
特定技能協議会に加入しなければならない
特定技能外国人を雇用した場合は、雇用から4か月以内に介護分野における特定技能協議会の構成員にならなければなりません。
この特定技能協議会は、厚生労働省や介護の業界団体、特定技能外国人を受け入れている法人から構成されており、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう下記2点を主に行っています。
・特定技能の趣旨や受け入れの優良事例を全国的に周知する
・地域別の人手不足の状況把握と分析
また、加入するだけでなく協議会に対し必要な協力をしなければなりません。
さいごに
介護分野の技能実習と特定技能の採用に関する特徴を解説しました。
この2つは多くの介護施設が注目し取り組んでいる方法ですが、ここで解説した特徴のほかにも外国籍の方の理解を示すことも大切ですし、支援をしっかりと行うことが大事です。
外国籍の方にとっても働きやすい職場になるよう、施設でもよく検討してみてください。
技能実習や特定技能の受け入れについて興味は持っていても、実際にしなければならない事項など把握できていないことも多いのではないでしょうか?
また、義務化されている10項目の支援においても、介護施設の方が行うには時間も人手も足りない状況です。
すべて委託したい場合でも、一部を委託したい場合でも経験のある支援機関に相談するのが解決への早道です。
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