「特定技能(1号・2号)」ビザの申請方法と取得要件を解説
- 在留資格を知る
- 特定技能
2024/04/16
2019年4月から「特定技能」という在留資格が設立されました。
それにより、人手不足が非常に厳しい14の業種において、一定程度の知識・技能を有する即戦力として働くことのできる外国人労働者を受け入れることが可能となりました。
「特定技能」のビザを取得するには、外国人側も企業側もそれぞれの要件に満たさなければなりません。
この記事では、1号と2号の2種類の「特定技能」ビザ申請方法や要件について解説します。
※この記事では、ビザ=在留資格という意味合いで使わせていただきます。
TOPICS
在留資格「特定技能」とは
「特定技能」とは、人手不足が厳しい業界で一定程度の技能・知識を有する外国人に与える在留資格です。
そして、人材不足が厳しい業界は「特定産業分野」と呼ばれています。
くわしくはこちらの記事:8分でわかる!「特定技能」とは?雇用方法や注意点、「技能実習」との違いも
特定産業分野とは
特定技能外国人を雇用できる業界は「特定産業分野」といいます。
2023年9月現在、合計12特定産業分野あります。
- 介護業
- ビルクリーニング業
- 素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業
- 建設業
- 造船・舶用工
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
「特定技能1号」とは
「特定技能1号」とは、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
相当程度の知識や経験を必要とする技能を有することを証明するために、外国人が特定技能評価試験と日本語能力評価試験に合格する、または関連する「技能実習2号」を修了する必要があります。
「特定技能1号」ビザの在留期間
1号特定技能外国人の受け入れは通算5年となり、5年以上の雇用はできないので気を付けてください。
また、もし技能実習生として日本で働いたことがあれば、技能実習の期間も「特定技能1号」の5年間に含みます。
「特定技能1号」ビザの取得要件:企業側
入管法上では、「特定技能」ビザで来日する外国人を雇用する日本の会社のことを「特定技能所属機関」といいます。
特定技能所属機関になるには、下記の要件を満たすほか、適切な特定技能外国人支援計画を策定することも必須です。
- 労働、社会保険、租税などの法令を遵守していること
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 1年以内に特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により行方不明外国人労働者を発生させていないこと
- 5年以内に入管法や労働法違反により欠格事由に該当しないこと
- 報酬を預貯金口座への振込により支払うこと
- 特定技能協議会への加入
- 外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること
- 中長期在留者の受け入れや管理を適正に行った実績があり、かつ役職員の中から支援責任者と支援担当者を選任していること(兼任可)
- 支援責任者等が欠格事由に該当しないこと
特定技能協議会とは
特定技能協議会とは、特定技能制度の適切な運用を図るため設置された機関です。
各特定産業分野において独自な協議会が設置されています。
特定技能所属機関は、原則として業種別に設けられている協議会に加盟する義務があります。
特定技能所属機関のほか、所管省庁や関係省庁、業界団体なども構成メンバーとなります。
特定技能外国人への適切な職場・生活支援
特定技能外国人が安定して日本で働けるように、彼らへの職場・生活支援が求められています。
そして、その支援義務は特定技能所属機関にあります。
特定技能ビザを申請する前に、1号特定技能外国人支援計画を策定し出入国在留管理庁に提出しなければなりません。
必須となる支援項目は合計下記の10個あります。
- 入国前外国人への生活ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続等への同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援
- 定期的な面談の実施、行政機関への通報
登録支援機関とは
特定技能外国人への支援は登録支援機関へ委託することができます。
登録支援機関とは、特定技能所属機関の委託を受けて、当該する特定技能外国人に対して支援を行う機関です。
特定技能外国人の支援は、書類作成を含めて専門知識が必要な場合があります。
雇用企業自身で支援を行うのが難しい場合、登録支援機関に委託することはできます。
くわしくはこちらの記事:「登録支援機関」に関する基礎知識|申請方法・要件や役割
ただ、登録支援機関に委託する場合、1名雇用あたり月3~5万円の費用が発生し、雇用期間5年で計算すると合計費用が300万円となります。
このランニングコストを抑えたい場合、支援業務の内製化を検討をおすすめします。
「特定技能1号」ビザの取得要件:外国人側
技能水準を測定するためには、特定技能1号ビザを申請する前に、外国人が該当する産業分野の特定技能1号評価試験に合格する必要があります。
また、仕事を円滑に進めるためには基本的な日本語能力も必要となるので、日本語能力評価試験の合格も条件です。
ただし、「特定技能1号」の産業分野に関連する「技能実習2号」を修了した人は、経験があると認定され試験から免除されます。
特定技能1号評価試験とは
特定技能1号評価試験とは、外国人が当該特定産業分野にて働くうえの必要な技能水準を有しているかどうかを評価する試験です。
技能水準をより精確に図るため、筆記試験だけでなく実技試験も設けています。
両方にも合格しないと外国人が「特定技能1号」ビザに申請できません。
また、同じ特定産業分野において複数の職種がある場合、職種ごとに評価試験が設置されていることがあります。
希望職種の評価試験に受けるように注意してあげましょう。
くわしくはこちらの記事:特定技能評価試験|業種別の解説と実施状況
日本語能力評価試験とは
1号特定技能外国人として日本で仕事や生活できるかどうかを判定するため、ビザを申請する前に外国人が日本語能力評価試験に合格する必要があります。
日本語能力評価試験は2種類あり、それぞれの合格基準が異なります。
ひとつは「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」のA2レベルを取得、もうひとつは「日本語能力試験(JLPT)」N4以上を取得です。
それに合格すると、外国人が基本的な日本語を理解できて、簡単で日常的な範囲なら日本語でのコミュニケーションができると認定されます。
「技能実習2号」の修了
「特定技能」に関連する分野の「技能実習2号」を修了すると、上記の試験から免除されます。
「技能実習2号」を修了するには、日本で2年以上の実務経験が必要となるからです。
ただし、分野によって関連する「技能実習2号」がない場合もあるので、その場合特定技能1号評価試験と日本語能力評価試験の受験が必要となります。
「特定技能1号」ビザの申請方法
海外にいる外国人を呼び寄せる場合、下記の手順に沿って「特定技能1号」ビザを申請してください。
- 在留資格認定証明書を申請する
- 在留資格認定証明書を発送する
- ビザ(査証)を申請する
- 入国審査を受ける
- 入国し勤務を開始する
すでに日本にいる人を1号特定技能外国人として雇用する場合、在留資格認定証明書とビザ(査証)の申請が不要ですが、代わりに在留資格変更許可申請をしてください。
「特定技能1号」ビザの申請に必要書類
「特定技能1号」ビザを申請するには下記の書類が必要となります。
合計19点もあるため、漏れのないように気を付けてください。
- 在留資格認定証明書交付申請書/在留資格変更許可申請書
- 特定技能所属機関の概要書
- 登記事項証明書(法人の場合)/住民票のコピー(個人事業主の場合)
- 役員の住民票のコピー(法人の場合)
- 直近2事業年度の決算文書(損益計算書及び賃借対照表)のコピー
- 特定技能所属機関に係る労働保険に関する資料
- 労働保険手続きに係る保管文書のコピー
- 特定技能所属機関に係る社会保険に関する資料
- 社会保険手続きに係る保管文書のコピー
- 特定技能所属機関に係る納税に関する資料
- 法人税・住民税の納税証明書
- 特定技能雇用契約書及び雇用条件書のコピー
- 特定技能雇用契約に関する重要事項説明書
- 特定技能外国人の報酬額が日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であることの説明書
- 入国前に仲介業者に支払った費用を明らかにする文書
- 技能試験の合格説明書や技能検定3級の実技試験合格証明書など
- 日本語能力試験(JLPT)の合格証明書や技能検定3級の実技試験合格証明書など
- 特定技能外国人の健康診断書
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 登録支援機関に委託する場合、支援委託契約書
- 支援責任者の履歴書、就任承諾書、支援業務にかかる誓約書のコピー(※)
- 支援担当者の履歴書、就任承諾書、支援業務にかかる誓約書のコピー(※)
※外国人への支援が登録支援機関に委託する場合提出不要
また、企業規模によって追加書類があるので、併せてご確認ください。
「特定技能2号」とは
「特定技能2号」とは、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
これまで建設業と造船・舶用工業の2産業分野のみ対象でした。
しかし2023年8月31日以降、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の9分野と、造船・舶用工業分野のうち溶接区分以外の業務区分全てが新たに特定技能2号の対象となりました。
「特定技能1号」と「特定技能2号」の違いとは
一番大きな違いとしては、働く期間の上限です。
「特定技能1号」ビザを持っている外国人が通算5年のみ働ける一方、2号特定技能外国人は上限なし就労することが可能です。
また、「特定技能2号」ビザの申請にあたって外国人に対する職場・生活支援が不要となるので、特定技能所属機関にとっての負担が少なくなるといえます。
まとめ
1号特定技能外国人を雇用する場合、相当程度の知識または経験を必要とする技能を持っている外国人が即戦力として期待できます。
ただし、ビザを取得するために外国人も企業もさまざまな要件に満たす必要があります。
たとえば特定技能協議会の加入や1号特定技能外国人に対して適切な支援計画を策定すること。
また、必要書類19項目以上もあるため、ビザを申請する前にしっかりと確認し漏れのないように準備しましょう。
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