ビルクリーニング業界の技能実習・特定技能を解説 vol. 1 ~比較編~

ビルクリーニング業界の外国人雇用

2016年4月1日にビルクリーニング職種が技能実習2号移行対象職種として追加されました。
ビルクリーニング業界では清掃機械のロボット化による生産性の向上や、女性・高齢者の積極的な雇用が進められていますが、2017年には有効求人倍率2.95倍に達するなど人手不足が解消されていません。

 

外国人雇用においても、多くの留学生・家族滞在・永住者の方なども就労されている業界ですが、家族滞在・留学生の方は週28時間の就労制限があるためにまだまだ人材が足りていないのが現状です。

 

しかし、2019年より新しい在留資格である、特定技能が創設されたことにより、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れることが可能になりました。
政府は、特定技能のビルクリーニング分野において、2019年から5年間で見込み人数37,000人の外国人受け入れを想定しています。

 

技能実習・特定技能の特徴を比較

技能実習制度と特定技能制度では在留期限や作業内容に違いがあります。
それぞれの特徴について順にご説明していきます。

■在留期間

技能実習制度では、基本的に3年まで在留することが可能ですが、受け入れ企業が優良認定されると在留期限が5年まで延長することができます。
特定技能制度では5年間の在留が可能です。

 

■職種制限・作業内容

留学生や家族滞在の方と違い、技能実習・特定技能ともに作業の内容に制限があります。
また技能実習には必須業務と関連業務という縛りがあるため、任せる作業の割合を監理する必要があります。

 

外国人技能実習機構の技能実習移行対象職種の審査基準の中でビルクリーニングは、『不特定多数の利用者が利用する建築物(※1)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上を目的として、場所、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して場所別及び部位別(※2)の清掃作業(※3)を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する作業をいう。

(※1)住宅(戸建て、共同住宅の専有部分等)を除く建築物をいう。
(※2)場所別とは、玄関ホール、通路、トイレ、昇降機、事務室等の区分をいい、部位別とは、床、壁面、天井、立体面等の区分をいう。
(※3)清掃作業のうち、日常清掃作業は、毎日1回以上等の頻度で行う作業をいい、定期清掃作業は、年又は月等の単位で定期的に行う作業をいう。 また、中間清掃作業は、日常と定期清掃作業との間で、汚れの程度に応じて清掃する作業をいい、臨時清掃作業は、契約以外で臨時的あるいは特別に実施する作業をいう。

と記載されています。

 

 

出展: OTIT 外国人技能実習機構『移行対象職種情報 ビルクリーニング職種』

 

■経験

技能実習生は日本で技能を習得するために入国するため、経験を問われることはありませんが、特定技能は技能実習で3年間の経験がある方や母国または日本で評価試験を合格された方になるので知識や技能があることが前提です。

■日本語レベル

技能実習生は日本語の習得も技能実習の中で学んでいくため、あいさつや簡単な日常会話レベル(N5)でも問題ありませんが、特定技能では『日本語能力試験(N4以上)を合格していること』と定められています。
日本語能力試験で定められている各レベルの目安は以下の通りです。

N1

幅広い場面で使われる日本語を理解することができる

N2

日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる

N3

日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる

N4

基本的な日本語を理解することができる

N5

基本的な日本語をある程度理解することができる

出展:日本語能力試験HP

 

実際当社が外国人の方と接する中で感じたおおよその日本語レベルは以下のとおりです。

  • N1:漢字の読み書きがある程度でき大学などに入学なども可能
  • N2:このレベル以上から日常会話以上の会話の理解に問題はなく、小学生レベルの漢字なども理解
  • N3:日常会話は問題なく、ひらがな、カタカナ、簡単な読み書きは可能
  • N4:日常会話がある程度理解して会話ができる
  • N5:日常会話がある程度理解して応対ができる

※日本には、ひらがな・カタカナ・漢字という3つの組み合わせがある為、日本人と同等レベルの漢字理解などはN1レベルの方でもかなり難しいレベルです。

 

■受け入れ方法

技能実習生

技能実習制度では監理団体に加入して実習生を受け入れるか企業が単独で受け入れる方法がありますが、入国の際の手続きや各種申請など煩雑な作業を監理団体が行ってくれるため、監理団体型で受け入れを行う企業がほとんどです。
※日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施することが可能であれば企業単独型で受け入れが可能です。

 

 

出展:JITCO 公益財団法人 国際人材協力機構『外国人技能実習制度とは』

 

特定技能

登録支援機関を介して採用や、自社で媒体、職業紹介事業者などを介しての採用が可能です。
※別途人材紹介料が必要です。
特定技能は下記のいずれかの方法で資格を取得し、採用されるのが一般的です。
(1)技能実習2・3号修了から特定技能へ移行
(2)国内ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験合格者
(3)海外ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験合格者

 

■受け入れ計画・転籍・入社までの期間

●技能実習制度は、受け入れ人数制限はありますが、面接をしてしてから6ヶ月程度を目安に入国が可能で、計画的な受け入れがしやすく、また受け入れ企業側の問題などでやむを得ない事情がない限り、基本的に転籍することはありません。

 

●特定技能制度は、人数枠の制限はありませんが、求めるスキルを持つ外国人を探す必要があるため、計画的な採用は少し難しくなります。
採用が決まれば、約1ヵ月~3ヶ月程度で勤務を開始することが可能ですが、転職も可能なため、急な退職の可能性もあります。

 

■給与水準

技能実習制度の場合は、18万円前後が相場となっています。特定技能制度の場合は日本人と同等額以上の報酬と定められていますので技能実習制度の水準よりは上がることが想定されます。

 

まとめ

今回は、ビルクリーニング業界の技能実習制度と特定技能制度それぞれでお問い合わせが多い内容をまとめて解説しました。
外国人の採用を積極的に進められはじめている業種ですので、新たな採用手段として参考にしていただければと思います。

 

次回は実際に受け入れを検討する場合の必要な許可などの具体的な内容を解説していきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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採用ジャーナル 編集部

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