【EPA・留学・在留資格「介護」編】介護分野の外国籍雇用ガイド②
- 介護
2024/05/24
日本の介護職員は、2035年には約79万人の人手不足が予測されています。
そんな状況の中、介護業界では外国籍の方の採用が進んできています。
ただ、外国籍の方を採用するにはいろいろな方法があり、何が最善の方法なのかがわかりにくく、迷っている採用担当の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、話題の技能実習や特定技能だけでなく、介護分野で働くことができる5つの在留資格の特徴やメリットなどを紹介していきます。
参考にしていただき、施設にあった採用方法を選択してください。
▼関連記事
【技能実習・特定技能編】介護分野の外国籍雇用ガイド①
【5つの在留資格総集編】介護分野の外国籍雇用ガイド③
5つの方法
外国籍の方が日本で働くには、就労ができる在留資格が必要です。
介護分野で働くことのできる在留資格は5つあります。
この5つの在留資格のほかに、永住者や日本人の配偶者等などの身分に基づく在留資格を持っている外国籍の方は日本人と同じように就労することが可能なため、介護職として働くことができます。
ここで紹介する5つの在留資格にはそれぞれ条件があるので、その条件を知っていないと、いざ採用しようとなった際に慌てることになります。
それぞれの特徴をしっかりと知るためにも、まずは5つの在留資格を紹介します。
5つの在留資格
・技能実習
・特定技能
・EPA(イーピーエー)
・留学
・「介護」 ※介護という名称の在留資格ですが、本文中は「介護」と表記します。
出典:
※1. 外国人技能実習機構
※2. 出入国在留管理庁
※3. 厚生労働省
※4. 日本介護福祉士養成施設協会
※5. 出入国在留管理庁
▼関連記事
技能実習、特定技能について詳しく知りたい方は、別記事「【技能実習、特定技能編】介護分野の外国籍雇用ガイド①」で解説していますので、そちらもぜひ参考にしてください。
EPA(経済連携協定)
一般的にEPAと呼ばれていますが、正しい在留資格名は「特定活動」で在留カードの表記も「特定活動」となります。
(特定活動の種類では、特定活動7に該当します。)
EPAには看護師候補者と介護福祉士候補者の2種類があります。
それぞれ日本の国家資格である看護師・介護福祉士に合格することを目的に来日し、実務経験を積むため病院や介護施設の就労することのできる在留資格です。
看護師候補者の場合は在留期間が3年間、介護福祉士候補者は在留期間4年間と職種によって日本に滞在できる期間が異なるので注意しましょう。
上記の在留期間内で国家試験に合格となった場合は、日本への滞在延長が許可されます。
この延長の場合は、病院や介護施設で働くことが条件となりますが滞在期間に上限はなく、本人の希望によって何年でも日本で働くことができるようになります。
反対に試験不合格となった場合は、1年間の滞在延長ができ再度受験をすることができます。
延長した期間中の試験で合格した場合は、上記と同様に滞在延長となりますが、ここでも不合格の場合は帰国をしなければなりません。
(帰国後も短期滞在という在留資格で再来日し、国家資格の受験をすることは可能です。)
EPAは人手不足を解消するための制度ではなく、経済連携協定という名の通り2国間の経済活動の連携を強めるために制定されたものであることを理解しておきましょう。
EPAの特徴
EPAの特徴としては、下記のようなものがあります。
採用できる国籍が3か国に限られている
1番の特徴と言ってもいいのが、対象となる国籍が下記3か国に限定されている点です。
・インドネシア
・フィリピン
・ベトナム
この3か国以外で採用を検討されている方は、EPA以外の手段で採用しましょう。
採用が難しい
EPAもう1つの特徴は、候補者の国籍によって日本語レベルや学習範囲が全く異なるという点です。
国別に就労までの流れを解説します。(候補者の動きです。)
この図のように、国によって日本語の勉強期間やタイミング、日本語能力が異なるため採用する際の基準が変わってきます。
また、日本に入国するまでの期間や入国から就労までの期間も違うので、施設の受け入れ準備のスピードも変わってきます。
さらに、現地の看護学校の卒業や実務経験が候補者の条件となるため、技能実習と比べてある程度の看護知識や経験者を採用することができることから、候補者に対して採用を希望する施設が多く、マッチング(面接)のできない法人もあるようです。
そのような点から、ほかの在留資格に比べて採用が難しいのがEPAの特徴です。
JICWELSに登録が必要
JICWELSは、日本で唯一EPAの受け入れ・あっせんを行っている機関です。
EPAでの採用を検討している方は、まずJICWELS(公益社団法人 国際厚生事業団)への求人申請登録をしなければなりません。
JICWELSの紹介を通じて候補者とマッチング(面接)を行い、採用を進めていきます。
学習支援をしなければならない
EPAは、国家資格に合格することが目標となっているため、国家資格のための受験勉強はもちろん、受験できるだけの日本語の勉強が必須となってきます。
国家資格を受験するために必要な日本語能力は、看護師の場合はN1が認定要件となっていることからも、非常に高いレベルの日本語能力が求められています。(介護福祉士の場合は受験資格に日本語能力はありませんが、N2以上が目安と言われています。)
それに加えて専門用語・専門知識の勉強もしなければならないため、3~4年間で合格をするためには、就労時間の半分を日本語や受験勉強に充てるなどの雇用先の支援が必要不可欠と言えるでしょう。
試験に合格すれば日本で長期的に働くことのできる人材ではあり、ある程度の知識と経験のある方を採用できますが、試験合格までの期間はお互い勉強と支援で大変なのが現状です。
あっせん機関でもあるJICWELSでも外国人のための教材の販売や支援、相談受付などを行っているので活用するのがいいでしょう。
留学
留学生も介護施設でアルバイトをすることができますが
ここでは介護福祉士養成施設(介護の専門学校など)に通う留学生についてアルバイトとして雇用する場合と卒業後の進路について説明します。
養成施設の留学生は年々増加しており、日本人学生よりも留学生のほうが多いという学校もあるようなので、これから留学生のアルバイト、新卒採用が増えてくると考えられています。
ただし、留学生は学業を目的として来日しています。
アルバイトとして雇用する場合でも、あくまで学業が本業であることを雇用先も理解し就労がメインとならないように気をつけましょう。
留学の特徴
留学の特徴としては、下記のようなものがあります。
資格外活動許可と週28時間
留学生がアルバイトとして介護施設で働くには、資格外活動許可が必要です。
採用担当の方は、面接の際に資格外活動許可があるかどうか必ず確認をしましょう。
出典:出入国在留管理庁
就学資金等の貸付
養成施設入学者へ、学費などの就学資金が都道府県等から貸与されます。
介護福祉士の資格取得後(卒業後)、5年間介護の仕事をすることでこの貸付金の返済は不要となります。
5年に満たずに退職等した場合は、返済が必要です。
留学生を採用する場合は、把握しておくといいでしょう。
卒業後は在留資格「介護」へ
養成施設に留学している間に介護福祉士の資格を取得した留学生は、卒業後に「介護」に在留資格変更ができます。
そのため、卒業後に就職してもらうためのインターンシップのような感覚でアルバイトとして採用するのもいいかもしれません。
アルバイトの期間に経験も知識も職場の人間関係も習得している人が、就職してくれるのは心強いので、検討してみるのもいいでしょう。
在留資格「介護」
在留資格「介護」は、いわゆる就労ビザと呼ばれる種類で、日本で介護士として就労するための在留資格です。
今まで紹介した4つの在留資格とは違い、在留期間の上限や28時間などの条件がないため、介護施設の方が一番採用したいと思う方になるでしょう。
しかし、在留人数を見てもわかるように「介護」は一番人数が少ないため採用に至るまでのハードルが高いのが特徴です。
「介護」の特徴
「介護」の特徴としては、下記のようなものがあります。
介護福祉士の合格者が条件
この在留資格は、介護福祉士に合格していることが申請条件です。
そのため、日本の介護福祉士に合格している外国籍の方を見つけなければならないため、採用のハードルがぐっと高くなります。
その反面、介護福祉士を採用できるのがこの在留資格の最大の特徴でもあるため、経験者の採用ができるのは魅力的かと思います。
日本人と同じように働ける
「介護」は上記4つの在留資格のような、就労に関する条件がないことも大きな特徴です。
訪問系サービスでの雇用も問題なくできますし、就労時間についても制限がなくフルタイムでの雇用が可能なため、日本人を採用するのと同じように採用ができるということです。
もちろん、外国籍なので在留資格の申請など日本人にはない手続きは発生しますが、就労に関しては日本人と同じだと考えてください。
また、ほかの在留資格と違うのは、在留期間の上限もないということです。
介護士として働く限りは、何年でも在留資格を更新して日本で就労することができますし、配偶者や子供とも一緒に日本で暮らすことができます。
さいごに
介護分野でのEPA介護福祉士候補者・留学・在留資格「介護」について解説しました。
介護福祉士取得を目指す方や介護福祉士の方というのがこの3つの共通点ですが、合格までの道のりをサポートしてあげるのも雇用する介護施設には大事なポイントです。
技能実習生や特定技能のようにサポートする項目が決まってはいませんが、サポートできるような体制を施設内で整えておきましょう。