基準設定編~外国人労働者指導成功への7ステップ~
- 外国人採用タイムズ
2024/05/14
本記事は成功事例を交えた外国人労働者に対する指導成功への7ステップ(全4回)の第2回目となります。
前回は最重要項目となる心構えや在留資格の制度理解の重要性を解説しました。
■ まだ第1回目を見ていない方はまずこちらをご覧ください。
受入準備編~外国人労働者指導成功への7ステップ~
入国前にできることは、心構えや在留資格の制度理解だけではありません。
重要なことの1つとして、全社としての基準を設定することがあります。
業務が属人化の状態になってしまっている、マニュアルが設定されていない、などがあると、外国人労働者は日本人よりもさらに困惑することとなります。
「基準を明確にする」と一口に言っても、具体的にどうすればよいかわからないことが多いと思います。
外国人労働者にも伝わるように作成することができれば、日本人の新人育成にも役立ちます。
ここではそんな人材育成につながる準備を紹介していきます。
マニュアル作成と定義の明確化
社内向けにマニュアル化できる部分は、マニュアル化しましょう。
ここで重要になってくるのは、教える人によって手順が違うということがないようにしないといけません。
マニュアルにはAの作業をしたあとに必ずBの作業をしましょう、など手順がわかりやすいように明記することを心がけると外国人労働者が混乱することがなくなり、安心して作業ができます。
また手順だけではなく、社内での“よい仕事”や“お客様に喜ばれる仕事”の定義化や基準作りを図り、社内全員が同じことを目指して動けるようにすることも大事でしょう。
指導する人によって求めるクオリティなど言うことが違うと外国人労働者の不信感に繋がりますので、気を付けましょう。
日本語能力が日本人に比べて低い外国人労働者に対し「こんな簡単なことは教えなくても誰でもできるだろう」などの考えは危険です。
また、どこまでやれば完了であるか、などの細かいところまでも丁寧に伝わるまで指導することが大切です。
例えば、時刻についてはきちんと理解したうえで厳守してもらうことが必要です。
「14時ちょうどに作業を終わらせて、完成品を○○さんへ持っていって」といった指示を理解できなければ、次の工程が遅れ、納期に間に合わないということになりかねません。
したがって、午前と午後、0時から24時、1分から60分、1秒から60秒までを日本語で理解し表現できるようにする必要があります。
「1(いち)」と「7(しち)」「8(はち)」、「2(に)」と「4(し)」のように数量や時刻等で聞き間違いが起こりやすいものについては、言い方を区別しましょう。
加えて、職場にメモ用紙等を大量に設置しておき、大事な指示をする際には紙に書いて渡す(もしくは指さし確認)といった工夫も必要です。
また、数量についても細かい確認が必要です。
モルタルを作るのに「セメント1、砂が3の割合で混ぜる」と指示をしますし、建設現場の位置測定でも「2センチバックする」といった指示をします。
ここで数について理解ができていないようであれば、1から段階を踏んで教えていくことが必要です。
日常生活においても、自身の賃金の確認等で数量の理解が求められるため、少なくとも百万単位までの理解ができることが必要となります。
マニュアルについては、監理団体が翻訳対応してくれる場合もあります。
技能実習の場合は、入国前の現地講習中や入国後講習にて、事前に資料を読んでくることも可能ですので、監理団体に翻訳対応の相談をすることも1つの手段です。
(配属後によく使う単語をピックアップして、監理団体に依頼するという方法もあります)
その他、受け入れ前に以下を確認しておきましょう。
・業務1つ1つにマニュアルが作成されているか(写真を使ったものだとより効果的です)
・暗黙知となっており、新入社員が毎回困るようなことはないか
・評価基準や評価項目が明確になっているか
評価基準については下記で細かく解説していきます。
評価基準を明文化する
日本人には「どうすれば給与がもっと上がるのか」「どうしてこの給与額なのかわからない」など、給与面を自ら交渉する考えや文化が外国に比べて少ないです。
日本人に比べて外国人労働者は給与面を積極的に交渉する、といった考え方を持っている方も多いです。
いきなり給与面について聞かれて、よくない返答をしてしまうとトラブルになりかねませんので、しっかりと準備をしておきましょう。
また日本と外国の違いとして“同僚同士で給与を見せ合う“というのがあります。
トラブルになるケースとして、会社が主観的に1名に対し昇給を行い、給与を見せ合ったことで自分は昇給されていないことを知った方が、会社にクレームを入れる、というのが多いです。
その時に事前に決めた基準を見せて合理的な説明ができると解決できますので、全社で共通認識を持ちましょう。
なので、まずどのような仕事をすればどのようなポジションにいけるのか、評価されるのか(昇給するのか)、を明文化しておき、事前に伝える必要があります。
入社して1年後、3年後、5年後どのような仕事をしているかをきちんと説明できるようにしておきましょう。
「入社して数年は見習いとしての勉強期間だから一律昇給はなし」などの考えはいけません。
「外国人社員は管理職にしない」などと決めることもダメです。
会社の主観で昇進や昇給を決めることがないよう、以下のように明文化しましょう。
・中長期的な外国人活躍モデルを策定
・賃金テーブルや等級制度を導入する
評価基準を明文化することは、現場での目標がわかりやすくなり、指導する側も褒めやすくなることにも繋がります。
褒めあう文化ができれば、外国人労働者が会社の指導を前向きに聞ける関係性の構築に繋がるので、評価基準を明確にすることはとても大切です。
社内での表彰制度を導入することで外国人労働者との関係性の向上、外国人労働者のモチベーションアップに成功している企業もあります。
どうしても昇進・昇給の基準を明文化するのは難しい、という企業は“日本語検定の合格“を基準(作業面で問題ないことを前提として)としていることもあります。
また、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、一部助成金も出ます。
厚生労働省のHPに案内等がありますので、こちらの人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)も参考にしてください。
まとめ
今回は外国人労働者に対する指導成功への7ステップの基準設定についてを解説しました。
主に全社としての基準設定についての内容でしたが、すでに整っている企業も多いでしょう。
まだ全社としての共通認識が足りないと感じている企業は、外国人雇用をきっかけに整備をするチャンスです。
受入準備編でもお話ししましたが、外国人雇用は会社が良い方向へ成長するきっかけにもなりえるのです。
指導する側にとっても人を育てる大事な経験となり、自らが管理職となった際に必ず役立つことを指導員となる方には伝えましょう。
また、会社としても外国人労働者の教育を業務として明記し、役職員に周知することで指導員に任せきりではなく、仕事の一部であるという共通認識を持つようにしましょう。