特定技能の「二国間協定」とは?目的や手続きについても解説
- 外国人採用タイムズ
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2024/05/15
特定技能で外国人人材を雇用する場合、人材の出身国と日本が「二国間協定」を締結していれば、その内容に沿って手続きを進めなければなりません。今回は、特定技能の二国間協定の概要と目的を解説します。また、2021年1月時点で締結している12カ国と各国の特徴的な手続きをご紹介していますので、参考にご覧ください。
特定技能の二国間協定とは?
特定技能の二国間協定とは、日本が外国人労働者を送り出す国と締結している取り決めのことです。協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)とも呼ばれます。
外国人労働者を受け入れる必要性が高まる中、各国との約束やルールを明確に定め、受け入れ/送り出しの協力・連携を円滑にするためのものです。
2021年現在、この協定を結んでいるのは12カ国。受け入れ数の多い主要国に留まります。アジア圏の新興国が多いのが特徴です。それぞれの国の事情や日本との関係性によって、締結される二国間協定の内容は異なります。
締結国と各国の特徴的な要素については、以降の「二国間協定を結んでいる国と手続きについて」の項目で詳しく解説しているので参考にしてください。
なお、二国間協定を締結していない国から人材を受け入れることも可能です。ただ、手続きや申請における複雑さや難易度は高まるでしょう。
二国間協定はなぜ必要?目的とは?
日本を含め、各国が二国間協定を締結する目的を見ていきましょう。
特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出し・受け入れの確保
海外の国には、それぞれに国民が出国して海外で働く際に求められる手続きがあります。管理と同時に、保護の目的があるのです。一方、日本にも外国人人材の受け入れにあたって、煩雑な手続きや複数の提出すべき書類があります。
各国で様式や必要項目は違います。日本で働くために必要な項目を満たしていないことも多いのです。逆も然り。そこで、お互いに必要事項を満たせる手続きに統一することでプロセスを円滑にする目的もあります。
特定技能外国人の保護
日本企業における外国人労働者の受け入れは、最近になって需要が増えてきたように思えますが、実は、かなり前から存在していました。主に技能実習制度によるものです。
しかし、雇用された外国人労働者の労働環境は、確固たる制度が確立されておらず、半ば野放しの状態でした。中には悪質な仲介業者による搾取、過剰労働や賃金未払いなどの劣悪・不当な環境が存在していたことも否めません。
二国間協定は、これらの状況を撲滅するために規制を強化する意図もあります。これが、外国人労働者が安心して働きやすい環境を整備することにもつながるでしょう。
二国間協定を結んでいる国と手続きについて
では、日本と二国間協定を結んでいる国をご紹介します。前述しましたが、国ごとに協定内容が異なっている点には注意が必要です。各国の特徴的内容も挙げていますので、受け入れる人材の国との協定事項は必ずチェックしておきましょう。
二国間協定を締結している国
2021年1月時点で、日本と特定技能についての二国間協定を結んでいる国は12カ国です。
- フィリピン
- ネパール
- モンゴル
- インドネシア
- バングラデシュ
- パキスタン
- カンボジア
- ミャンマー
- スリランカ
- ベトナム
- ウズベキスタン
- タイ
(※)参考:特定技能に関する二国間の協力覚書 | 出入国在留管理庁
特定技能資格者受け入れの一般的な流れ
2019年4月より、日本における外国人の在留資格に「特定技能」が追加されました。人材不足の状況があると考えられる14の職種での就労が可能となったのです。特定技能の在留資格を取得している場合、同分野であれば転職も認められています。
外国人人材は該当分野における即戦力人材であることを証明するために「特定技能評価試験」や「日本語能力試験」を受けなければなりません。国ごとに試験が実施される業種が異なることにも注意が必要です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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特定技能、テスト受験・合格の状況
「特定技能」で外国人を採用する企業は、人材と雇用契約を結んだあと具体的な支援計画を策定します。人材の「特定技能」の資格取得に向けて、受け入れ機関(または登録支援機関)による申請の協力・支援も必要となるでしょう。
特定技能人材の受け入れ企業(特定技能所属機関)となるための要件には以下のような細かい欠格事由も含まれます。
- 人材と適切な雇用契約を結んでいる
- 企業に法令違反がない(5年以内)
- 外国人人材への適切な支援計画が策定されている
- 外国人人材を支援する体制が整備されている
- 1年内に、解雇例がない
- 1年以内に外国人の行方不明者がいない
- 更新を期待させたうえでの派遣の雇い止めがない
…など
外国人人材の国籍が日本と二国間協定を締結している国の場合は、各国との協定内容に従って申請手続きを進める必要があります。
手続きについては登録支援団体に委託することも可能です。ただし、登録支援団体の選定にあたっては、母国語でサポートできる人材の人数や外国人雇用に関わる経験や実績も重視すべきでしょう。
各国における特殊な手続きやルールについて
二国間協定を締結している国の中でも、特徴的な手続きが必要な7カ国の特徴を見ていきましょう。
■ベトナム
外国人労働者の中でも割合が大きいのがベトナムからの人材です。ベトナムからの人材を受け入れる場合は、現地で認定されている送り出し機関を経由しなければなりません。人材は送り出し機関を通じて日本で働ける場所(企業)を探し、日本企業も送り出し機関を通して求人を募集します。
また、企業はベトナムのDOLABという管理局、あるいは大使館に推薦者表交付の申請をしなければなりません。申請後、政府の承認一覧に企業名が記載されることが、ベトナムからの人材を受け入れる条件です。
DOLABについてはこちらの記事も参考にしてください。
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ベトナム人材受け入れの詳細はこちら
ベトナムに関する情報 | 出入国在留管理庁
■ネパール
現地にいる人材を探す場合は、人材への直接アプローチのほか、在日大使館に申し込んで求人を出してもらうこともできます。原則、人材の就労や雇用に関与するのはネパール政府です。日本在住の人材を受け入れる場合は、人材が地方出入国在留管理官署に対し、在留資格変更許可申請をしなければなりません。
就労目的の入国であれば、初来日、再入国ともに、ネパールを出国する際に、ネパール労働雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門が発行する海外労働許可証の提示が必要です。
ネパール人材受け入れの詳細はこちら
ネパールに関する情報 | 出入国在留管理庁
■フィリピン
フィリピンから人材を「6名以上」受け入れる際は、現地の海外労働事務所が公開する認定送出機関一覧にある送り出し機関を経由しなければなりません。
さらに、フィリピン国籍の人材を雇用する際には、POLO(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)に申請し、審査を受けます。受け入れ機関(企業)に対するPOLO担当官の英語面接が実施され、必要に応じて実地調査も行われます。
POEA(海外雇用庁)に特定技能所属機関として登録されれば採用活動が可能です。日本企業との雇用契約を結んだ人材は、フィリピン出国の際に海外雇用許可証(OEC)を提示しなければなりません。
POLOとPOEAについてはこちらの記事も参考にしてください。
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フィリピン人を雇用するとどんなメリットがある?手続きや注意点、POEA・POLOについても解説
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フィリピンに関する情報 | 出入国在留管理庁
■タイ
タイ国籍の人材の受け入れは、タイ労働省認定の送り出し機関を経由するほか、直接雇用も認められています。ただし、現地に出向いて求人活動を行なうことはできません。
送り出し機関を利用する場合は、在日タイ王国大使館労働担当官事務所に雇用契約書のひな形認証手続申請し、認証を受けるのが先です。その後に送り出し機関から人材の紹介を受けます。
直接雇用の場合は、人材との雇用契約の締結が先です。その後、雇用契約書と在留資格認定証明書を在日タイ王国大使館労働担当官事務所に提出します。
新規入国者は、タイ王国労働省(MOL)に対する出国許可申請が必要です。日本に在住するタイ国籍人材は、在日大使館からの雇用契約の認証を受けなければなりません。
タイ人材受け入れの詳細はこちら
タイに関する情報 | 出入国在留管理庁
■インドネシア
日本で働く特定技能人材の中でベトナム人材に次ぐ割合を占めるのがインドネシアの人材です。
インドネシア国籍の人材を雇用する企業は、まずインドネシア政府が管理するIPKOL(労働市場情報システム)に登録します。IPKOLを介して企業と求職者の意向が一致すれば、雇用契約を結びます。企業が在留資格認定証明書を申請し、交付される証明書の原本を人材に送付します。
雇用予定の人材は、インドネシア政府のSISKOTKLN(海外労働者管理システム)に登録し、政府が発行するE-KTKLN(移住労働者証)を受け取ります。在留資格認定証明書とE-KTKLNをインドネシアにある日本国大使館・総領事館に提出し、特定技能のビザ発給を申請します。入国時の審査にて資格が付与される流れです。
インドネシア人材受け入れの詳細はこちら
インドネシアに関する情報 | 出入国在留管理庁
■ミャンマー
ミャンマー国籍の方が日本で働くためには、ミャンマー政府から認定を受けた現地の送り出し機関を通す必要があり、送り出し機関と人材の間で雇用契約の締結が必要です。また、MOLIP(ミャンマー労働・入国管理・人口省)でOWIC(海外労働身分証明カード)を申請する必要があります。
新たに雇用予定の特定技能外国人においては、特定技能に係る在留資格認定証明書をミャンマー日本国大使館に提示し、査証発給申請を行います。手続きをすべて終えたミャンマー人の方は、日本の上陸審査に適合していれば来日および特定技能資格を取得することがます。
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ミャンマーに関する情報 | 出入国在留管理庁
■中国
中国からの特定技能人材に関する二国間協定は2019年6月時点で合意に至ったことが発表されました。2021年1月時点において、締結には至っていません。
まとめ:二国間協定は外国人人材の出身国ごとに異なる
外国人採用における日本の受け入れと各国の送り出しをよりスムーズに行なうために締結されるのが二国間協定です。外国人人材を不法な搾取や劣悪な労働環境から守るためのものでもあります。
現在の締結国は12カ国ですが、外国人労働者の雇用がますます浸透する中で締結国は増えることも考えられるでしょう。国ごとにルールや約束ごとが異なるため、自社が採用する人材の出身国の協定内容に則った採用を進めることが大切です。