技能実習から特定技能へ移行するには?|メリット・デメリットや手続き方法を徹底解説!

2025/06/10

この記事でわかること

  • 技能実習と特定技能の特徴
  • 技能実習から特定技能に移行する方法
  • 技能実習から特定技能に移行する際の注意点

技能実習生は、特定技能の在留資格に移行できれば日本で働き続けることができます。

この記事では、技能実習生から特定技能に移行するための要件や手続きの方法を解説します。

切り替えるときの注意点や特例措置の事例などもご紹介していますので、参考にしてください。

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技能実習制度と特定技能制度の違いとは?

はじめに技能実習制度と特定技能制度について、それぞれ確認しておきましょう。

 技能実習特定技能
目的開発途上国への国際協力就労・企業の人材確保
対象国16カ国の新興国
インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ペルー、ミャンマー、モンゴル、ラオス
原則、すべての国
※イラン、トルコなどを除く。
ただし、以下のような国が中心
ベトナム、中国、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、タイなど
在留期間技能実習1号→1年以内
技能実習2号→2年以内
技能実習3号→2年以内
※合わせて最長5年
通算5年
雇用可能人数常勤従業員数に応じて制限あり人数制限なし(介護・建設除く)
転職原則として不可可能
業務内容非専門的専門的
入国時試験なし(介護/日本語N4を除く)技能試験、日本語能力試験
技能実習2号の良好修了者は免除
送り出し機関あり(外国政府の推薦/認定機関)なし
監理団体あり(許可制)なし
支援機関なしあり(登録制)
外国人と受入れ機関(企業など)とのマッチング通常監理団体と送出機関とを通して行われる。受入れ機関が直接海外で採用活動を行い又は国内外のあっせん機関等を通して行われる。

技能実習制度

技能実習生制度は、技能移転等を通じた開発途上国への国際協力を目的とした制度です。受け入れ時の技能水準は原則として問われておらず、最長5年間の在留期間が認められています。

一方、「技能実習制度の目的は国際協力」と謳いながら、企業の人材不足に充てられていることが現状です。そこで、本来の意義が失われつつある技能実習制度を大きく見直し、「育成就労制度」として新たな外国人雇用制度を打ち立てる法案が2024年6月に可決されました。

育成就労制度の目的は人材育成・確保であり、外国人雇用を考えている企業にとっては着目したいポイントです。この法案は2027年までに施行されるため、最新の動向は必ずおさえておきましょう。

特定技能制度

「特定技能制度」は、中小・小規模事業者等の人手不足の深刻化への対処として、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる仕組みです。

生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお人材確保が困難な産業上の分野における人材の確保を目的としています。

「特定技能1号」は、14の産業分野で「相当程度の知識経験を必要とする技能」を要する業務に従事する外国人材の在留資格です。

「特定技能2号」は、現在のところ2つの産業分野で「熟練した機能」を要する業務に従事する外国人材向けの在留資格です。

これまでの在留資格の「高度専門職」「教授」「技術・人文知識・国際業務」「介護」「技能」等の資格と同等のレベルの資格とされています。

※参考:特定技能総合支援サイト | 法務省出入国在留管理庁

技能実習生から特定技能への移行はできる?

技能実習生から特定技能への切り替えは可能です。

ただし、すべての技能実習生が無条件に移行できるわけではありません。

ここでは、切り替えが可能な対象職種と要件を解説します。

移行可能な対象職種

技能実習生から特定技能への移行が認められるのは、以下の特定技能1号の対象となる14の産業分野です。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材産業
  4. 電気・電子情報関連産業
  5. 建設
  6. 造船・舶用工業
  7. 自動車整備
  8. 産業機械製造業
  9. 航空分野
  10. 宿泊産業機械製造業
  11. 農業
  12. 漁業
  13. 飲食料品製造業
  14. 外食業

移行の要件

技能実習から特定技能への移行に必要とされる主な要件は以下です。

  1. 技能実習2号を良好に修了
  2. 技能実習での職種/作業内容と、特定技能1号の職種が一致

技能実習1号から特定技能への移行は認められません。

技能実習3号の場合は、実習計画を満了することが要件となります。

本来、特定技能の在留資格を得るには、「日本語能力試験」と、業種ごとに実施される「技能試験」に合格しなければなりません。

しかし、上記の「1.技能実習2号を良好に修了」を満たしていれば、技能実習の職種・作業にかかわらず日本語試験が免除されます。

さらに、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合は技能試験も免除されます。

「技能実習2号を良好に修了している」というのは、技能実習を計画に従って2年10月以上修了していることをいいます。

なお、技能試験の免除というのは「技能実習時代の作業」と「特定技能でこれから行う業務」に関連性がある場合に限られます。

また、企業側に外国人人材を受入れ/支援する体制が整っていることも重要な要件の一つです。

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移行におけるメリット・デメリット

では、技能実習生から特定技能への移行で考えられるメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

特定技能の外国人は、企業にとって即戦力人材です。人数制限もない(介護・建設分野を除く)ため、人手不足をいち早く解決する大きな一助となるでしょう。

技能実習生を受け入れるときと比較しても、申請の手間は少なく、雇用後すぐに働いてもらえます。

一定の能力を有することが要件ですから、研修などの負担もあまりかかりません。

受入れまでの時間やコストも低く抑えられます。

ただし、「1号特定技能外国人支援計画」(合計10項目あります)を作成して、それに基づく支援は必要です。

とはいえ、技能実習生として既に滞在し、さまざまな支援も受けておられるわけですから、新たに必要になる支援は多くないと思われます。

技能実習生側にとっても「特定技能に移行する」という選択肢が加わったことで、帰国せずに日本で働き続けられることはメリットでしょう。

1号特定技能外国人支援計画については、次の資料を参照ください。
※出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」特定技能ガイドブック
※4頁、11~12頁「1号特定技能外国人支援計画の作成」

デメリット

特定技能の在留資格の場合、技能実習生と比較して規制が若干緩和されます。

例えば、一定の範囲で転職が可能です。転職される可能性がある点は、企業としてはデメリットかもしれません。

また、受入れ時のコストは低くても、特定技能の給与水準は「日本人と同等以上」となるため、技能実習生より高くなります。

特定の技能を有している以上は当然のことと考えるべきでしょう。

さらに、外国人雇用特有の手続きや登録機関委託も費用がかかるため、同等能力を持つ日本人人材よりコストがかかります。

技能実習生から特定技能へ切り替えるときの手続き方法

技能実習生から特定技能への切り替え手続きの方法を解説します。

移行の申請・書類提出先は、地方出入国在留管理局です。地方出入国在留管理局に出向いて提出する書類をもとに審査が進められます。

審査にかかる期間は、おおよそ1~2ヶ月です。この審査に通れば、「特定技能1号」での在留資格認定証明書が発行されます。

また、それぞれの国籍国での手続きが求められることがあります。日本在留の外国人であれば、在日大使館などでの本人手続きが必要です。

国籍により手続きが異なりますので、早めに内容を確認し、着実に準備を進めましょう。

(参考)出入国在留管理庁
※「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」PDF 15頁「各国の送出手続きについて」より

※特定技能総合支援サイト | 法務省出入国在留管理庁WEBサイト
上記ページから、「特定技能制度について(説明会動画)」関連資料ダウンロードおよび、「特定技能制度について」7頁以下「特定技能に関して各国で必要となる手続」(各国ごとの手続き詳細が解説されています。)が確認できます。

技能実習生から特定技能への移行準備

企業と外国人人材で合意した入社予定日に滞りなく迎えられるよう、切り替えのための準備は早めに取り掛かることが大切です。

準備期間には3~4ヶ月必要

申請から承認が降りるまでに1~2ヶ月かかり、申請前には外国人人材や委託する登録機関などとやり取りする期間も必要です。

また、外国人人材の受入れ機関としての要件を満たすために、社内制度や体制も整備しなければなりません。

つまり、希望する入社日から逆算して3~4ヶ月前から着手されることをおすすめします。

さらに、外国人人材の技能実習生としての在留期限の時期にも配慮が必要です。

その場合でも技能実習生から特定技能への移行は可能ですが、在留資格認定証明書交付申請となるため審査承認までの期間がより長くかかります。

準備すること・書類等

必要な申請書類の種類は、移行(在留資格変更許可申請)でも「特定技能」申請の場合と基本的には変わりません。

管轄の地方出入国在留管理局・支局に提出する主な書類は下記のとおりです。なお、申請時に外国人人材のパスポートと在留カードの提示が求められます。

  • 在留資格変更許可申請書(※ 申請書PDF
  • 特定技能外国人の報酬に関する説明書
  • 特定技能雇用契約書の写し
  • 特定技能外国人の履歴書
  • 技能水準/日本語能力水準を証明する資料
    ex. 技能実習計画書コピー、各試験の合格証など
  • 技能実習2号修了に関する評価調書

※「特定技能(1号)」への在留資格変更許可申請に係る提出書類一覧 PDFにて、必要書類をご確認ください。この一覧表も提出書類に含まれます。

技能実習から特定技能へ移行する際の注意点

技能実習から特定技能へ移行するにあたり、いくつか注意しておきたいことがあります。

技能実習時と特定技能移行後の業務内容が合致していること

技能実習2号を良好に修了した人材は、技能や日本語の試験が免除されます。

ただし、技術試験の免除は、技能実習での業務内容と特定技能における業務内容の一致が前提です。

同一職種に含まれるかどうかは以下の法務省のサイトを確認しましょう。

技能実習時代の納税や届出の義務を遵守しているか確認する

未納の税金や届け出の義務を怠っていると、特定技能への切り替え時の審査のマイナスポイントとなりなるため、事前の確認は必須です。

未納の税金があれば直ちに納税し、未届の書類があれば入局管理局に説明するなど、マイナス要素を取り除いたうえでの申請をおすすめします。

特定技能への移行時に発生する特例措置とは?

技能実習から特定技能への移行に際し、一部の外国人人材に関しては特例措置が設けられています。

特例措置とは、本来のルールや規制を状況に応じて緩和することです。

外国人人材どのような状況にあるかで、必要書類や措置の内容が異なるため、ケースごとの相談・確認が求められます。

ここでは一例として、技能実習から特定技能への移行でよくある、移行申請中に在留期限が切れてしまった場合の特例措置をご紹介しましょう。

この措置により、承認を待つ間に滞在期限が切れても最長4ヶ月間の延長が可能です。「特定活動」(就労可)の在留資格となり就労もできます。

ただし原則、この特定活動の期間(4ヶ月)の更新はできません。また、この特定活動で在留した期間は特定技能1号の通算5年に含まれることになります。

以下の項目から、この特別措置の適用要件と申請手続きの方法を見ていきましょう。

特例措置の適用要件

受入れ企業と技能実習生の双方によって満たされるべき要件です。

  • 企業は従来と同等以上の報酬を支払う
  • 企業が労働基準法や社会保険、租税などの法令を遵守している
  • 企業に特定技能所属機関としての欠格事由(前科や不正行為)がない
  • 企業が人材の理解可能な言語での支援力を持つ(登録支援機関に委託可)
  • 企業が特定技能外国人の受け入れ体制の整備中である
  • 予定登録支援機関の登録未完了など時間を要する理由がある
  • 人材が従来と同じ事業者で引き続き就労するための特定技能1号への変更予定
  • 人材が従来と同じ業務に従事する雇用契約が締結されている
  • 人材が技能実習2号取得から1年10ヶ月以上が経過し技能・日本語試験の合格免除に対応

特例措置の申請手続きの方法

管轄の地方入国管理局に以下の申請書と必要資料を提出し、申請します。申請に際しては、外国人人材の在留カードとパスポートの提示が必要です。

  • 在留資格変更許可申請書(顔写真を貼付)
  • 変更までの雇用契約書面(雇用契約書,雇用条件書等の写し)
  • 申請人に係る従前の賃金台帳の写し
  • 受入れ機関が作成した理由書(任意の様式)
  • 技能及び日本語試験の合格免除に対応することの証明書類

(参考)出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」へ変更予定の方に対する特例措置について | 出入国在留管理庁

技能実習生から特定技能への移行は早めに着手

企業の人材不足を補える有効策として、技能実習生から特定技能への移行は徐々に広がっています。

移行手続きの難易度は低いとはいえ、審査には一定の時間がかかります。

必要事項をきちんと理解し、特例措置なども活用しながらスムーズな外国人雇用を進めていきましょう。

監修者プロフィール
玉上 信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士 健康経営エキスパートアドバイザー
三井住友信託銀行にて年金信託・法務・コンプライアンスなどを担当。
2015年10月65歳定年退職後、社会保険労務士開業。執筆・セミナーを中心に活動。
人事労務問題を中心に、企業法務全般や時事問題にも取り組んでいます。
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