技能実習生の妊娠。説明不足による犯罪も。企業が求められる対応とは

2020年11月中旬にも。続く新生児遺体遺棄事件

近年、技能実習生自身が出産した新生児の遺体遺棄容疑で逮捕される報道をよく耳にします。2020年11月中旬にも熊本にて同様の事件がおこりました。

 


写真出典元:Yahoo!ニュース

 

なぜ、このような事件が起きてしまうのか。
それは、監理団体等からの説明不足と、それに伴う技能実習生の知識不足によるものです。

 

こちらのニュースの中でも、技能実習生は「(妊娠したことにより)技能実習が終了する恐怖心から誰にも相談できなかった」と述べており、技能実習生の弁護士からは、「監理団体側から妊娠・出産をしても日本の労働法が適用され、身分は守られるという説明がなかった」と発言があります。

 

法律上で求められる対応

技能実習生も日本国内で就労している限り、原則として労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、最低賃金法などの、労働関係法令が適用されます。

 

そのため、妊娠・出産をした場合でも、法律上では解雇することは出来ませんし、技能実習生本人の意思に反して帰国させることも出来ません。(詳しくは男女雇用機会均等法第9条をご参考ください)

 

技能実習生本人に「日本で出産したい」という意思があるのならば、技能実習を強制終了させるのではなく、技能実習を一時中断させるという対応が求められます。

参考:厚生労働省 男女雇用機会均等法のあらまし

 

監理団体や受け入れ企業が行っておきたい対応

技能実習の目的は「技術移転」です。受入れ企業からすれば、技能実習中に出産をするのは目的に反する部分があるという考えはあるかと思います。

 

また、技能実習を一時中断した場合、費用の問題も出てきます。受け入れ企業が技能実習に必要な費用を継続して支払う必要があることに加え、技能実習生本人が自己負担している生活費に関しても、就労できない期間をどう過ごすのか、という問題になってきます。

 

しかし、人の命が係わる重要なことですので、今回のような事件が起きてからでは取り返しがつきません。

 

多くの監理団体が入国後のオリエンテーション時に、説明の時間を設けて対応をしていますが、それで十分とは言えないでしょう。男女ともに、定期的に注意を促すとともに、相談しやすい環境づくりをするなどの対応が必要と感じます。

 

次の章では、実際に実習生本人が日本での出産・妊娠を希望し、技能実習を一時中断する場合の企業側の対応をご説明させていただきます。

 

技能実習生が妊娠した時の企業側の対応

企業が求められる必要措置

技能実習生が妊娠した時、企業は必要措置として下記の2点を行なう必要があります。

(1)本人が保健指導または健康診査を受診するための時間を確保する
(2)本人が医師等から受けた指導事項を守れるようにするための措置をする

 

技能実習生本人の妊娠・出産に伴う健康診査等の時間の確保に加え、医師または助産師から指導を受けた場合は、その指導事項を守ることができるようにするために、勤務時間の調整や業務の軽減などの措置を行なわなければなりません。

 

企業への禁止事項

技能実習生が妊娠した時の禁止事項は下記の5点です。

(1)技能実習生本人が婚姻し、妊娠・出産したことを退職理由として予定する定めをすること
(2)技能実習生本人が婚姻したことを理由に、解雇すること
(3)技能実習生本人が妊娠したことや出産したこと、産前産後休業を請求したこと等を理由に、その技能実習生本人に対して解雇や、その他不利益な取扱いをすること
(4)育児休業の申し込みを断ること
(5)育児休業の申し込みや取得を理由に解雇などの不利益な扱いをすること

 

※妊娠中の技能実習生および、出産後1年を経過していない技能実習生に対して行われた解雇は、無効となります。ただし、企業側がその解雇について妊娠・出産などを理由とする解雇でないことを証明した際は、有効となります。

 

※子供が1歳(一定の場合は最長2歳)になるまでの期間、男女労働者が休業を取得することを育児休業と言います。

 

産前産後休業とは

妊娠中の技能実習生は、以下の期間で休業が可能になります。

(1)本人の請求により、出産前の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)
(2)就業させてはならない期間として出産後の8週間
※産後6週間経過後に、本人が請求し、医師の診断により支障がないと認めた場合は、業務に就くことが可能です。

 

技能実習生本人が母国での出産を希望した場合の対応

技能実習生本人が母国での出産を希望した場合の監理団体・受入れ企業対応は下記の2つのパターンがあります。

 

技能実習終了を本人が希望し、母国で出産するパターン

  1. 監理団体から技能実習困難時届出書をOTITへ
  2. 航空券の手配・送迎(企業負担)※技能実習修了時と同様の対応が求められます
  3. 帰国

 

技能実習中断を本人が希望し、母国で出産し、技能実習を再開するパターン

  1. 監理団体から技能実習困難時届出書をOTITへ
  2. 航空券の手配・送迎(企業負担)※技能実習修了時と同様の対応が求められます
  3. 帰国
  4. 中断した理由書と技能実習計画併せてOTITへ提出。※本人の希望時期に合わせて改めて技能実習計画の認定申請を行います
  5. 航空券の手配・送迎(企業負担)※技能実習開始時と同様の対応が求められます
  6. 入国・再開

 

技能実習生が妊娠した際に、本人が行うべき対応

妊娠の届出をし、母子健康手帳などの交付を受ける

妊娠をした際、基本的には技能実習生も日本人と同様の対応が必要になります。
まずは住んでいる市区町村に妊娠の届出を行い、下記の提供を受けます。

 

  • 母子健康手帳の交付
  • 妊婦健康診査を公費の補助で受けられる受診券または補助券の交付
  • 保健師などによる相談
  • 母親・父親(両親)学級の紹介

※母子健康手帳とは、母親の妊娠期から産後まで、子どもの新生児期から乳幼児期までの健康状態を記録したものです。加えて、育児に関する指導書でもあります。保護者が内容を記載・管理するものですが、場合によっては医療関係者が参照・記載することもあります。

 

妊婦健康診査を受診

定期的に医療機関で受診する必要があります。
産婦人科医や助産師などのアドバイスを受けながら、健康を管理します。
妊婦健康診査は、次の頻度で受けることが望ましいとされています。
(1)妊娠初期から妊娠23週までは4週間に1回
(2)妊娠24週から妊娠35 週までは2週間に1回
(3)妊娠36週から出産までは週1回

 

保健師・助産師などによる訪問指導

各市区町村の無料のサービスのひとつとして、妊婦訪問指導が用意されています。
妊娠中は体調の変化などにより、悩みや心配事が尽きません。
特に、技能実習生が日本で出産を希望される場合、言葉の壁がある海外での出産となりますから、不安も多いことでしょう。

 

妊婦訪問指導では、保健師や助産師が各家庭に訪問し、次のような指導を行ってくれます。

(1)家庭生活や食事などの指導
(2)妊娠、出産に関する不安や心配事に対する相談
(3)新生児の育児に関する相談
※予約方法など詳しくは、住んでいる市区町村にお問い合わせください。

 

母親・父親(両親)学級

各市区町村で、妊娠、出産、育児、栄養など、妊娠・出産に関する様々なジャンルの教室が開催されています。妊娠・出産に関する学びの機会としての利用はもちろん、保護者同士の交流の場ともなっています。

技能実習生が出産後に本人が行うべき届出

出生届の提出

父または母が出産日から14日以内に、出生届を提出する必要があります。
この届出は子どもが生まれた場所か、届出人の所在地にある市区町村に提出します。
出生の届出には「出生証明書」が必要です。
詳しい手順や持参物については、届出をする市区町村にお問い合わせください。

※子どもが生まれた日から60日を経過して在留資格を取得していない場合は、住民票が消され、国民健康保険や児童手当などの行政サービスを受けることができないことがあるので注意が必用です。

 

本国への届出

父も母も外国の国籍である場合、その子どもが日本で生まれたとしても、日本国籍を取得することはできません。このような場合、子どもの出生について本国へ届け出る手続が必要になります。

また、生まれた子どものパスポートも、併せて取得する必要があります。

詳しい手続については、父または母の駐日大使館・(総)領事館にお問い合わせください。

 

出産や育児についての手当てや給付金

妊娠や出産は病気ではないので、健康保険が適応されません。つまり、基本的に医療費が自己負担になります。(例外として帝王切開に伴う、手術費は保険適応です)

 

しかし、妊娠・出産をすると受け取れるお金やサービスがあるので、実質の負担額は、そこまで大きくはなりません。

 

ただし、自分自身で申請をしないとお金を受け取ることもサービスを受けることもできません。技能実習生自身が、日本での妊娠・出産に関わるお金やサービスについての知識をもつことが大切です。

 

出産育児一時金

健康保険や国民健康保険の加入者が出産したとき、出産費用として42万円が支給される制度です。ただし、妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度対象出産ではない場合は、40万4000円となります。

 

この支給に関しては、以下2つの制度があります。

 

(1)直接支払制度

出産育児一時金の請求と受取りを、妊婦に代わって医療機関などが行う制度です。出産育児一時金が医療機関などへ直接支給されるため、退院時に窓口で出産費用を全額支払う必要がなくなります。

 

(2)受取代理制度

妊婦などが加入する健康保険組合などに出産育児一時金の請求を行う際に、出産する医療機関などにその受取りを任せることにより、医療機関などへ直接出産育児一時金が支給される制度です。

 

出産手当金

健康保険の加入者本人が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けられなかったときは、出産(予定)の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日後56日までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。

 

出産手当金は、産前産後休業の期間中、健康保険から、1日につき原則として賃金の67%相当額が支給されます。

 

ただし、休業している間にも会社給与が支払われ、出産手当金よりも多い額が支給されている場合には、出産手当金は支給されません。出産日は出産の日以前の期間に含まれます。出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。

 

育児休業給付金

雇用保険の加入者が、1歳(一定の要件に該当した場合は1歳2か月。さらに一定の要件に該当した場合は1歳6か月又は2歳)に満たない子どもを養育するための育児休業を取得し、以下の条件を満たす人は原則、ハローワークへの支給申請により育児休業給付金が支給されます。(はじめの6か月は休業開始前賃金の67%相当額、その後は50%相当額です。)

 

給付金を受ける条件は下記です。

(1)育児休業を開始した日の前2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上ある人
(2)育児休業中の賃金が休業開始時の賃金と比べて80%未満に低下など一定の要件を満たした場合

 

まとめ

日本では技能実習生の妊娠後の新生児死体遺棄事件が多発しています。
その状況の裏側には受け入れ企業・監理団体の対応や技能実習制度と日本の法律が複雑に関係しています。

 

現時点では受け入れ企業側に、法律で定められた対応が求められます。
その具体的な対応と、技能実習生本人に求められる対応を本記事では紹介させていただきました。

 

前提として一番重要なことは、受入れ企業や監理団体から、技能実習中に妊娠した場合の説明を行い、技能実習生との認識のすり合わせを行なう事です。

 

このような悲しい事件を起こさないために、当社では多くの対策を行っております。
技能実習生の受け入れや外国人雇用に関するご相談などがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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採用ジャーナル 編集部

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