施工管理の人材不足が続く理由5つ!改善する方法もくわしく解説
施工管理の人手不足が続き建設業の就業者が減っていますが、なかでも若手の人手不足と建設労働者の高齢化が大きな問題となっています。
国土交通省は、建設業界の働き方の課題を改善するため「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。
当プログラムでは「長時間労働の是正」「給与・社会保険」「生産性向上」の3つの分野について新たな施策をまとめています。
この取り組みは2024年4月から適用されるため、企業側も今から対策を進めることにより人材不足の問題を解消することにもつながります。
こちらの記事では、施工管理が人手不足になっている理由5つと人手不足を改善する方法についてくわしく解説します。
また、採用難を改善する方法についても紹介しますので、人手不足で困っている方はぜひ参考にしてください。
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建設業界の現状
国土交通省「建設業就業者の現状」によると、建設業就業者は1997年に技術者41万人で、2001年以降は40万人以下になり、2022年には37万人となっています。
一方で建設の需要は通常の事業や公共事業だけでなく、震災復興事業その他災害復興事業、大阪万博の建設など数多くあり、今後も増加する見込みです。
施工管理が人手不足になる理由5つ
建設業界の現状でも話しましたが、就業者が減少しているため早急な対策が必要です。
ここでは施工管理が人手不足になる理由を5つ紹介していくので、会社で何が要因となっているかを考える参考にしてください。
建設業界で働く若手不足
※参照:一般社団法人日本建設業連合会 建設業デジタルハンドブック「建設業就業者の高齢化の進行」
一口に人手不足といっても、グラフを見ると55歳以上の就業者は年々増加しているのに対し、29歳以下の若者の就業者は減少している傾向であることがわかります。
29歳以下の建設業就業者は2002年に19.1%でしたが、そこから年々減り続けて2022年には11.7%にまで下がっているのです。
29歳以下の就業者が減少し続けてしまうと、技術を継承する人材も減ってしまうことから大きな問題だといえます。
若手の高離職率
雇用が不安定 | 9.6% |
---|---|
遠方の作業場が多い | 9.0% |
休みがとりづらい | 8.4% |
労働に対して賃金が低い | 7.9% |
※参照:厚生労働省「建設労働者を取り巻く状況について」
若者が離職する一番の理由として、とくに多かったのが上記4つです。
このうち、休みがとりづらいことと労働に対して賃金が低いことについては、企業が考える若年技能労働者が定着しない理由としても回答がありました。
また、業務量が多く残業もある中で資格をとる勉強ができない、キャリアを積むのに時間がかかると、手に職を希望していた場合は辞める方が多いです。
ほかにも建設業が社会に貢献できる仕事だと日々の業務からは実感できず、やりがいを感じないので転職をするパターンもあります。
建設業労働者の高齢化
※参照:国土交通省 最近の建設業を巡る状況について「年齢階層別の建設技能者数」
※参照:一般社団法人日本建設業連合会 建設業デジタルハンドブック「建設業就業者の高齢化の進行」
55歳以上の建設業就業者は2002年に24.8%でしたが、2022年には35.9%とかなりの割合を占めています。
そのため、55歳以上のベテラン社員でも若い頃と変わらない業務量で働いている方もいます。
この仕事は残業などで勤務時間が長く体力を使うので、世代交代をして中堅・若手社員が中心となって業務ができる環境づくりが必要です。
長時間労働の常態化
※参照:一般社団法人日本建設業連合会 建設業デジタルハンドブック「労働時間の推移」
施工管理は、安全管理・工程管理など現場での管理業務に加え、書類作業もあるため業務量が多く、長時間労働になりやすい傾向があります。
建設業は、労働時間が2000時間を超えていて2022年はそれを下回りましたが、1986時間となっています。
女性が働きにくい職場環境
※参照:一般社団法人日本建設業連合会 建設業デジタルハンドブック「就業者中に占める女性の比率」
最近では「ドボジョ」や「けんせつ小町」といった愛称で呼ばれ、建設現場にも女性が増えてきましたが、全体としてはまだまだです。
上記グラフのデータによると、2022年の全産業就業者数は45%、建設業就業者数は17.7%となっています。
そのため、女性専用の休憩室やトイレがないなど環境が整っていない現場もあります。
また、業務以外でも事務所に戻らないと女性の先輩や同僚がいないなどの悩みを抱えている方も少なくありません。
悩みがあっても誰にも相談できないと休みがちになったり、離職につながったりすることもあるので適切な配慮が必要です。
人手不足を改善する方法
次に、人手不足を改善する方法をくわしく解説します。
すぐに対応できるものではありませんが、業務を円滑におこなうために少しずつ現状を改善していきましょう。
労働時間の改善
残業や休日出勤が多くて労働時間が長いと、施工管理の就職を敬遠されたり離職につながります。
国土交通省で定めた「建設業働き方改革加速化プログラム」では残業時間の上限規制や週休2日制を推進しています。
すぐに改善するのは大変ですが、他の改善方法を併用しながら中期・長期的に計画をたてて取り組みましょう。
能力に見合った給与の実現
建設業の給与は全体の平均給与と比べると高いですが、業務内容と給与が見合っていないと感じられ、離職につながるケースも多いです。
施工管理技士など、有資格者は資格手当が出て高待遇になることを社内でしっかり周知しましょう。
経験の浅い人や無資格者も、成果や能力を見える化して収入アップできる評価制度をつくるとモチベーションアップにつながります。
工期を適切に設定する
人手不足の中で業務を行っていると、通常の工期設定のときも急ぎの対応や他の施工と並行しながらおこなうことになります。
そんな状態で、トラブルが起きたり天候による遅れが出たりすると完成日に間に合わせるために残業が増えてしまいます。
発注者に工期の期間について理解してもらい、社員が無理なく働けるように余裕ある工期を設定しましょう。
業務のデジタル化
施工管理の業務は幅広く、現場での管理業務や書類作成の管理業務も多いのでその工程をデジタル化できれば業務量が減ります。
国がDXを推奨していますが、これが進むとドローンやAIを使って遠隔管理をおこなったり、BIMやCIMなどの3Dデータを活用することができ、作業効率があがります。
ただ、IT人材がいないときは新たに社員を採用したりIT知識のある社員に研修が必要になったりと時間がかかってしまいます。
時間や人材に余裕がない場合は、ITスキルのある派遣社員を雇用することも検討してみましょう。
女性が働きやすい職場環境
まだまだ男性の多い建設現場では、現場・事務所での作業のサポートや、休憩室の設置といったハード面は課題が見えやすい傾向があります。
しかし、職場環境のストレスなどソフト面は気づかないこともあるので対策が必要です。
社内に女性で同じ施工管理の先輩や同僚がいればお互いにサポートできますが、難しい場合は施工管理の研修や交流会に参加してもらうのも良い方法です。
また、出産や育児のサポート体制を整えることにより安心して育児に励めるだけでなく、復帰のしやすさにもつながるため離職を減らせる可能性があります。
人材育成に力をいれる
現場で活躍しているベテラン社員が辞めてしまうと、貴重な技術・経験が継承されないままになってしまいます。
若手や中途採用者向けにわかりやすいマニュアルを作成したり、先輩に同行する機会を増やすなどできる範囲で対応が必要です。
事務作業が得意な人や経験者を雇用するなどで、現場目線のわかりやすい内容を考える役割と、マニュアル作成をする役割、それをもって実際に教育する役割などの分業体制が実現できると、長期的に安定した人材育成に非常に有効なのでおすすめです。
自社・業界イメージの改善
建設業は、電気ガス水道のようなインフラと同じ、私たちの生活にかかせないものです。
また、自然災害が発生したときは、すぐに駆け付けて道路のガレキ処理や道路の復旧工事をするなど社会に貢献しています。
一般の人にはまだあまり意識されていないので、人々の役に立つ仕事だとPRすると、イメージの改善につながり、採用に良い影響を与える可能性があります。
施工管理の採用難を改善する方法
人手不足の状況を変えるために人材を募集しても、応募者が少なく悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この項目では、採用難を改善する方法を紹介していくので、自社の求人の魅力を伝えられるようにできるものから試してみてください。
仕事の内容をくわしく伝える
施工管理の募集をするときは、経験者か未経験者で内容を変えてくわしく伝えるようにしてください。
経験者の場合、工程管理・安全管理などの分類や案件の詳細だけでなく、工期や月間の残業時間を書くとイメージしやすくなります。
未経験者の場合は、小規模のマンション施工や学校のリニューアル工事、現場監督のサポート業務など専門知識がなくても理解しやすい表現にします。
最初にOJTがあることや最初は先輩社員に同行するなどの情報を入れると、安心して応募できるのであわせて記載しましょう。
働きながらスキルアップできる制度をアピール
施工管理を選ぶ理由で、手に職をつけられるからと考えている方は資格取得のサポートがあるかをチェックしています。
資格の講習会や試験の費用を会社が負担しているのであればその内容を記載したり、社員が取得した資格を記載すると良いPRになります。
研修制度が充実しているのであれば、未経験者や経験者にあわせた研修内容を記載するのもスキルアップをPRできる方法です。
自社の強みや特徴を記載する
企業理念やビジョンを伝えたり、自社で力を入れている分野や特徴があればくわしく記載すると興味のある方が応募してくれるのでおすすめです。
・空調の設備工事が多いです
・小規模で工期が短いものが多いです
・お寺や神社の修復もやっています
・リフォームの特許技術を持っています
このように強みや特徴をくわしく記載し、その後に他の内容も記載すれば自社の特徴が伝わりミスマッチの可能性を減らせます。
仕事のやりがいを伝える
施工管理は長時間労働になることが多いので、やりがいを見つけられないと仕事を続けるのがつらくなってしまいます。
建設業は、自分のかかわった建物や道路・設備が形として残ること、インフラなので社会貢献できること、プロジェクトが完了したときの達成感など、やりがいのある仕事です。
真剣に向上心を持って取り組んでいると、この仕事の魅力が伝わりますので、みんなで協力しあう環境をつくりましょう。
職場の環境や雰囲気がわかるようにする
職場環境や福利厚生で改善したことがあれば、それをホームページに載せると自社の取り組みが伝わります。
休憩室が新しくなった、残業時間が減った、新しいデザインの制服になったなどは時系列で載せると継続的に改善しているのがわかるのでおすすめです。
また、事務所や休憩室の写真や、サークル・同好会などの活動に関する記載があれば入社後のイメージが伝わります。
上司や先輩のインタビューやコラム、飲み会などの交流がどれくらいの頻度であるかの情報も雰囲気がわかるので良い方法です。
よくある質問
ここからは、人手不足になる理由についてよくある質問を紹介します。
人手不足の理由がいくつも該当しますが改善できますか?
人手不足の理由が複数あると対応できるか不安になる方もいますが、こちらの「業務のデジタル化」のように経験や年齢を問わないものもあります。
改善する方法はいくつかあるので、自社の状況にあわせてできるものから試してみてください。
人手不足を改善する方法は何から始めれば良いでしょうか
紹介した方法の中では「自社・業界イメージの改善」「職場の環境や雰囲気がわかるようにする」が比較的取り組みやすいです。
時間や費用がかかるものが多いですが、他のものと並行して改善していく方法をおすすめします。
対策をするための余裕がない場合は、派遣社員やアルバイトを雇用して通常業務や改善策をすすめると負担が減らせます。
まとめ
建設業労働者の高齢化や若手不足など、施工管理の人手不足が続いている理由は複数あり、改善するのに時間がかかるものが多いです。
現状を変えるには、能力に見合った給与の実現や業務のデジタル化が効果的ですが、自社の理由にあった方法を参考にしながら、できるものから取り組んでみましょう。
また、繁忙期には派遣社員を使う方法もありますので転職エージェントに相談するのもおすすめです。
求人を出す際にさまざまな改善策を考えても、希望する人材が見つからないことは少なくありません。求めている人材の条件がある方は、人材派遣サービスの活用をおすすめします。
ウィルオブでは、人材派遣以外にも就業前の研修や就業中の定期面談などのフォロー体制が充実しています。現在、施工管理の人材が不足していると感じているのであれば、まずは相談だけでも良いのでお問い合わせください。
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